【ブログ:白浜の思いつき】京都で弁護士・法律相談ならお任せください。

弁護士法人 白浜法律事務所

0752233444
0752233444
白浜の思いつき
白浜の思いつき

2012/11/12

研究報告を終えて

 先日予告しましたとおり、11月10日の研究集会で発表してきました。学者の方が多く講演される中、あまり体系的な整理もできていない私のような者が発表していいのかと思いつつ、がんばって報告書を起案して臨んだのですが、15分しか持ち時間がなかったので、極めてわかりにくい話になってしまったようで、反省しています。修習の現場を知らない人にもわかるような説明をした上で、問題点を指摘してほしいということでしたが、この内容を15分で話すというのは元々無理だったのかも知れません。報告書を書いていますので、これを紹介したいのですが、ブログにそのまま掲載するのは、長すぎると思いましたので、別途コラムで公開することにしました。ご笑覧ください。
 今回の研究集会は、主に法学者の視点から、法科大学院と法曹養成の問題を再検討するというものでしたが、そこで発表された内容は、驚くようなものばかりでした。
 法科大学院を設置するに先立って、事前の市場調査などは全く行われていないことや、現状の問題点を分析した上でそれに対する対応策を検討するという方式ではなく、最初に理念が設定されてその理念に従って構築されたのではないかなど、司法制度を大きく変える変更としては稚拙すぎるものだったということのようです。
 特に、未習者に対する選抜試験では法的な知識などを問うことが許されていないということも根本的なおかしなところだと感じました。こんな制度になっているため、実際に入学してから法的な実務に向いていないと感じて、中途でやめてしまうような人もいるということですし、全く法律の知識がない人も2年目からは既習者と同じ勉強をすることになる、つまりは、法的な知識は十分にできたとみなしてしまうということになっているため、法学部以外から入学した人がかなり苦労しているということになってしまっているようです。法的処理の実務家を育てる学校で法的な知識などを全く無視して選抜するということが、私には理解できません。この制度を考えた人は、いったい何を考えていたのでしょうか。なお、未習者コースは、法学部出身者だが既習者コースに合格できなかった人がかなりの割合を占めているということですから、他の分野から法律家を受け入れるという制度目標からは外れた実態となってしまっているようです。
 そもそも模範としたアメリカのロースクール自体が、お金がない人がゆくようなところでもないなどの構造的な問題をはらんでいたことが何ら分析されていなかったようです。アメリカと同じ判例法の国であるイギリスでは、ロースクールのようなお金がかかる制度は作らなくてもよいという考えが支配的で、実際にもロースクール制度は法曹養成制度としては採用されていないということのようです。
 これでは、まるで欠陥のある制度を輸入して、より欠陥を強めるように構築したと非難されてもおかしくないように思います。その上、現状の制度との接続もうまくできておらず、市場調査さえ行われていなかったというのですから、うまくゆくはずがないことは明らかでしょう。
 なお、河野さんのお話の中で、「今の増員論は、坑夫を増やして穴を掘ればきっと鉱脈にあたるんだと言っているに等しい」というフレーズがありました。まさにそんな考え方なのだろうと思います。しかし、私たちは坑夫ではないし、そんなことのために修習指導をしているわけではありません。若い人たちの人生を狂わせるようなことになってしまっている法曹養成の現状は早急に改めなければならないと思います。問題は、簡単です。まずは、この分野の今の労働市場に合わせて、合格者数を500人程度に限定することです。これは、そうしないと実際の市場の需給関係が改善しない以上、やむを得ないことだと思います。現状のように、水増し合格させたところで、就職できない人が過半数を占めることになる時代は、すぐそこまで迫っていますから、そのことによる弊害がより顕在化するより、合格者削減をする方がまだましだと思います。無責任との非難があるかも知れませんが、法科大学院制度の制度設計よりは、現実に即した改善策ですし、人生選択を誤る若者がこれ以上増えないように強いメッセージを送るためにも、必要なことだと思います。