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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2017/08/18

谷間世代の救済

 貸与制の下で司法修習を行い弁護士になった方々を谷間世代と呼ぶようになったということである。
 貸与制という制度は、研修には給与を払わなくてもよいというような極めて乱暴な考えの下に創出されたものであり、人権侵害の疑いがあると私は考えている。
 そもそも司法修習は学校の授業とは全く異なるものである。検察や裁判の修習は権力行使に関わる仕事であるし、弁護修習も、刑事の接見など権力行使に対して民間から唯一対抗できる仕事に関わるものである。司法修習ではプライバシーにも触れる機会も多く、司法修習生には守秘義務などの重大な義務が課せられているし、何よりも、他では基本的に仕事をしてはならないという修習に専念する義務も課されている。このような義務が課されていて、実際に仕事に就いていながら、報酬が与えられないということが許されるはずもない。また、司法修習は1年に短縮されてしまったものの、この間に、和光での集合修習が2度あるから、修習地の赴任も含めると3度の転居も強いられることになるが、貸与制の初期にはこの補助すら全く不十分であった。司法修習生は希望とおりのところに赴任できる人の方が圧倒的に少なく、ほとんどの人が希望していないところに配属されるのであるから、その移動の補償も十分なものにされるべきであった。
 このような貸与制の下で修習を終えた人が、就職が最も厳しい時代に修習をしたわけである。修習という制度に対して不満を抱いたり、先輩法曹に感情的な反発が生じたとしても、おかしくはない。このことによって、法曹の中に世代間の断絶が生じるようなことになるやも知れない。そうならないためにも、我々弁護士が、谷間世代の人達のために、立ち上がって、救済のための運動を続けねばならない。
 木内会長は、さらに進んで弁護士会内での救済活動に踏み込むことを提案されている。大変よいことだと思うが、一体誰がどう援助するのかということが更なる問題を生むかも知れない。本来責任を問われるべきは弁護士大増員の旗を振ってきた方々であろうが、弁護士大増員の結果については、弁護士大増員の方向への舵取りに異議を述べずに放置した弁護士にも責任がないとは言えないだろう。大増員の波の中で弁護士になってきた若い世代について考えたとしても、56期以降の方々も、弁護士大増員時代に弁護士になり、弁護士の経済事情が大きく劣化していく過程を経験された方が多いから、貸与制世代だけをの支援することには反発が生じるかも知れない。それぞれの考えに大きなずれがあることは明らかだから、大変難しい舵取りとなろう。弁護士全員がいいアイデアを持ち寄って、谷間世代の救済に努力せねばならない。65期の返済開始時期が迫っている今日、私達には時間も残されてはいない。