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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2019/06/10

2018年度法曹養成アンケート結果について

1.京都弁護士会では、従前、会員に法曹養成に関するアンケートを実施している。昨年度も実施したところ、集計に手間取り、ようやく公表できることとなった。法曹養成問題については、大学関係者による教育する側からの意見だけが取り上げられる傾向があるように思う。しかし、大学関係者こそが利権に関わっているので、この問題ではあまり重視されるべきではないように思う。最も大事なところは、実際にその教育を受けてきている上に、実際に養成された法曹を雇い入れる側でもある弁護士側の意見だと思うので、このアンケートの価値は大きいのではなかろうか。データとしては、別添のとおりとなるが、さすがに個別の意見表明まで、このブログで公表することはどうかと思うので、個別の意見はこのブログでは紹介しないこととする。以下が、その特徴につき分析したものである。なお、標記のデータからはわからないところもあると思うので、詳しいデータが必要な方は、京都弁護士会に問い合わせてもらいたい。
2.司法修習生の質的向上が認められるとする回答は、85名中2名(2.4%)に過ぎない。思わないが44名と52%を占める。修習指導担当経験者では、思わないが34名中27名と79.4%を占めていて、指導担当経験者は、質的向上により疑問を有しているようである。
3.法科大学院制度に問題があるとする回答は、83名中の66名と80%を占める。ちなみに法科大学院卒業生の35名の21名(60%)も問題があるとしているので、卒業生としても問題であると考えているものの、卒業していない人の方が問題をより強く感じていることが示された。修習指導担当経験者では34名中32名(94.1%)が問題があるとしていて、ここでも修習指導担当者としては法科大学院での教育に不満を示す傾向がでている。なお、予備試験受験者9名のうち6名(66.7%)も問題があるとしている。問題がある点としては、学費が54名と65%を占める(卒業生は19名と54.3%が問題としているが、予備試験受験者9名中5名も問題としている。)。次に、授業の質と実務との連携機能が各29名と35%が問題があるとしている。実務家として活動していくことにつながる教育がされていないとする回答結果が多いことを考慮すると、法科大学院の実務家としての法曹養成に関する基本的能力に疑問を感じている弁護士が多いということを示しているように思われる。なお、在学期間については、長いことを問題とする回答が14名(内卒業生は6名)と短いことが問題とする回答が3名(卒業生は0名)であることから、法科大学院での教育期間を長くすることには反対が強いことが示されている。修習指導担当経験者では、34名中16名(47.1%)が実務との連携機能に問題があるとしている点が特徴的である。
4.実務家として活動していくことにつながる教育がされていないとする回答が、84名中47名(56%)を占めている。修習指導担当経験者では、34名中22名(64.7%)が実務家教育に問題があるとしている。法科大学院の卒業生でも、35名中17名の48.6%がそう思わないとしているが、他方で、思うとする回答が14名と40%を占めていて、法科大学院の卒業生の方が若干好印象を持っている傾向は認められるようである。
5.社会人が法曹になりやすくなったかという点では、そう思わないとする回答が86名中56名(65.1%)を占めており、社会人からの法曹参入にとって、法科大学院は障壁となっているととらえている弁護士が多いことが示された。
6.司法試験の受験資格との関係では、法科大学院の卒業を受験資格として残すことについては86名中59名(68.6%)が反対であるとしている。法科大学院卒業生も35名中18名(51.4%)が反対であるとしている。在学中の受験を認めるべきとする意見も87名中50名(57.4%)が賛成しており、法科大学院卒業生は35名中22名(62.9%)が賛成としているので、法科大学院卒業生は在学中受験に賛成が多いことが示された。
7.修習との関係では、給費制の廃止は不当だったとする意見が81名中73名(90.1%)と圧倒的多数を占めている。修習期間については、不足しているとする意見が79名中53名(67%)となっており、修習期間の延長を求める意見が多かったことも含めると修習期間延長を求める声が多いことが示されている。なお、予備試験受験者は、9名中7名(77.8%)が修習期間延長を求めている。この点では、修習指導担当経験者では、34名中29名(85.3%)が修習期間延長に賛成である。修習生の数については、削減を求める声が80名中50名(62.5%)を占めていて、司法試験合格者の削減を求める意見が多いことを示している。
8.法曹養成制度の改善については、最も多い意見は給費制の完全復活であり80名中66名(82.5%)を占めている。次が司法試験合格者の削減で47名(58.8%)、修習期間の延長が43名(53.8%)、法科大学院卒業を司法試験受験の要件とすることの廃止が42名(52.5%)、法科大学院制度の廃止が31名(38.8%)となっている。これに対し、法科大学院制度の充実を望む意見は6名(7.5%)、予備試験制度の廃止ないし制限を求める意見は7名(8.8%)に過ぎない。なお、法科大学院卒業生でも、司法試験合格者の削減は16名と多く(45.7%)、修習期間の延長も14名(40%)、法科大学院卒業を受験資格とすることへの反対も14名(40%)となっている。さすがに法科大学院制度の廃止は4名(11.8%)と少ない。他方で、予備試験制度の廃止賛成は4名(11.8%)とさほど多くはない。
9.司法修習生の数は何人が妥当かというと、最も多いのが1000名が望ましいとするものが21名で、この問題に関する回答者総数の58名中36.2%を占めている。次に多いのが500名が望ましいとするのが8名で13.8%を占めていて、1000名以下程度が妥当とする回答者は合計で41名で70.7%を占めている。1000名以下を望む意見が大多数ということが示されたことになる。

2018年京都弁護士会法曹養成アンケート公開版

2019/04/18

京都開催の弁護士業務改革シンポジウムにご参加ください

本年9月7日に、同志社大学において、弁護士業務改革シンポジウムが開催されます。私は京都弁護士会の担当委員会の事務局長として、事務的な仕事に関わっています。
https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2019/190907.html
このシンポは、弁護士の業務改革がメインテーマですが、弁護士の業務改革は、依頼者である国民の利益にもかなうものでなければなりませんし、実際、ほとんどがそのようなテーマにもなっています。弁護士に対する需要を全く考慮することないままの弁護士人口の急増によって、弁護士の業界は多少おかしくなっているところがある中、弁護士が関わる業務の開拓に深く関わるこのシンポの重要性は高まっています。ましてや、裁判等の司法を使いやすくしようとすることにもつながっている点で、国民の利益にもなるというものでもあります。
このため、テーマが12もあるシンポとなっています。これは、日弁連の主催するシンポとしては異例です。
12の会場を確保するようなことは、実務上は、ほぼ不可能なことでしたが、今回、同志社大学のご好意にて、良心館をお借りすることができたため、開催可能となった次第です。
偶然にも日弁連人権大会徳島開催のパンフレットと同時期の配布となりましたが、このパンフレットとの最大の違いは、ネット申込を原則としたことにあります。そもそもがFAX申込が原則となっていることが時代遅れですし、弁護士の業務改革を目指すシンポである以上、申込をネットでやることができないような弁護士であっていいのかということもあって、ネット申込に大きく踏み込んだ次第です。
ネット申込は他のシンポでも採用されていたことではありますが、全面に押し出すのは初めてのことなので、参加者からの不満がかなりあるかも知れませんが、これも弁護士の業務改革の一歩だとご理解いただければと思います。なお、ネット申込だけでなく、様々な経費カットの試みもしています。パンフレットの中身が2色刷りとなっていることなどもそうです。旅行の提案もしていません(ただ、なんと言っても、同志社大学で実施できたことが奇跡的なことです。)。
9月初旬というとまだまだ暑い時期ではありますが、弁護士の将来を考える意味でもいいシンポだと思いますので、ぜひご参加いただければと思います。参加資格は弁護士に限りません。事務局の方も参加していただきたいテーマもあります。ロースクールの学生も将来を考えるヒントになるものと思います。地方公務員の方にも参加いただきたいテーマがあります。ただし、弁護士以外の方は、資料を必要とする場合には、その資料代が必要となります。
なお、シンポ後の弁護士が参加する全体懇親会の会費も節減せよとの意見が強かったので、そもそもの参加費を低く抑えています。ただ、節約しながらもそこそこ京都らしい懇親会を企画しようと思っていますので、懇親会にもぜひご参加いただければと思います。よろしくお願いします。

2019/04/17

大川小学校の現場で思ったこと

4月13日、2015年度の京都弁護士会理事者チーム(要するに私が会長だったときの副会長4人を含めた5人)で、大川小学校事件の原告団の方のお話をお聞きする機会を持ちました。大川小学校の現地も訪問しました。やはり実際に現地で見分するのは、マスコミやインターネットを通じて知ることとでは大きな差があると実感しました。
大川小学校は、北上川に近い上に、河口から4キロしか離れていませんでした。海に沿って車を走らせたところほどなくして着いたという感じだったので、海に近いなという印象を持ちました。海抜も1m程しかなく、学校に掲示もされていたということです(海抜を記載した門柱のようなものが残されていました。)。ところが、なぜかハザードマップでは津波は到達しない地域とされていて、避難場所にもなっていたということがまず驚きでした。
実際には、津波は、海岸の防風林を根こそぎなぎ倒し、この防風林の樹木が津波に押し流されることで家屋も壊され、樹木や建物の瓦礫を伴った津波が北上川に沿って遡上して大川小学校よりも少し川上にある北上大橋に押し寄せました。北上大橋は、この樹木や瓦礫が突き当たってダムのようになって津波をせき止めてしまい、このダムによって行き場を失った津波が大川小学校に方向をほぼ直角に変えて押しかけたということです。
津波は、大川小学校の1階天井を突き上げたらしく、2階の床が上に浮き上がっているところがありました。大川小学校で津波が渦を巻いていたという情報もあり、体育館をつなぐ渡り廊下は、そのことを裏付けるように川の方向にねじ曲げられるように倒れていました。なお、この渦を巻いているような津波の様子を誰が目撃していたのかということも大きな謎となっているようです。
地震が発生してから、児童達は、先生方と一緒に校庭に集合したまま待機していたそうです。津波到達1分前まで待機していたということが証拠上も明らかとなっています。その後教職員が児童達を連れて移動したのは、まさに津波が北上大橋から方向を曲げてきた北上大橋方面の方向でした。津波が来ていることを知らせる広報車のアナウンスを聞いた時点で裏山に逃げておられたら、74名の児童と10人の教職員は命を落とすことはなかったのではないかと思えてなりません。
インターネットなどでみた写真や地図からすると、近くにある裏山は急で登りにくかったのかも知れないなという先入観を持っていたのですが、実際には、裏山は体育館からもすぐ近くにあり、学校の体験授業として椎茸の栽培をしていたところもあって、この場所まではさほどの坂もなく、容易にたどり着けました。そこから、少し上がれば平坦でコンクリートが敷かれている場所がありますから、せめて3分前に避難を開始していれば、低学年の小学生でも安全な場所までたどり着けただろうと確信できました。なぜ、犠牲になった先生方が生徒たちを連れて裏山に移動しようとしなかったのか、私にはわかりませんでした。ちなみに、1審の裁判官は、この裏山を実際に登って見分をしたということでした。
原告団の方には、懇切丁寧に説明していただき、大変感謝しています。ただ、よくよく考えると、子ども達が通っていた学校の現場での説明にはフラッシュバックのようなつらい気持ちがでてきたりしたのではないかなと思うところがあり、少し申し訳ない気持ちにもなりました。
現在、裁判は上告されていて最高裁の判断待ちの状況のようです。現地の保存のあり方についても、行政と遺族の方との間に意見の隔たりがあるようでした。
写真も撮ったのですが、色々考えることもあって、写真のアップはやめておきます。この事件については、色々な記事が公開されていますので、そちらを参考にしていただければと思います。

2019/04/03

平成最後の4月の弁護士登録の動きに若干の異変あり

毎年4月は、弁護士の登録人数に動きがある時期である。

昨年は、3月末と比較して、63期の登録人数が11名減少し、65期が6名、67期が8名、、70期(当時最も若い期)が15名増えた。

今年は、3月末と比較して、64期の登録人数が12名、66期が5名それぞれ減少し、68期が9名、71期(現在最も若い期)が16名増えた。

この大きな動きはひょっとすると裁判官の弁護士経験研修による異動なのかも知れないが、64期についてはこれまであまり登録人数の減少が目立たなかったものが、最大数からは51名減少したこととなる。ちなみに、私の観測による最大登録人数から最も弁護士人口が減少した期は63期の97名減少である。

71期の弁護士登録人数は1328名となり、最大登録可能人数(二回試験合格者から裁判官検察官の任官者数を控除した人数)である1366名の97.2%となり、66期(現状で96.3%)と67期(現状で96.6%)よりも、弁護士として登録した人の割合が大きくなったことになった。

近畿地区では、大阪が4659名から4652名と7名減少し、兵庫県は963名が970名と7名増加、奈良は2名減少し176名、滋賀も1名減少し149名、和歌山も1名減少し144名となっている。京都は787名のまま変化なしである。近畿地区全体で4名の弁護士人口減少となった。近畿地区は、全体的に弁護士がさほど増えない地域になりつつあるように思えてきている。