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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2009/10/05

一見さんお断り

京都では、よく一見さんお断りというところがありまして、弁護士事務所の中にもそう公言されているところもありますが、当事務所は一見さんお断りという対応はしていません。電話での相談申込や飛び込みの相談にも応じてはいます。
ただ、事務所としては、あまり宣伝もしていません。これは、事実上、宣伝などに頼らずに、口コミで仕事が広がっていて、今現在のお客様のお仕事をするだけで精一杯というところがあったためだろうと思います。宣伝広告に金をかけるよりは、困っている人のために費用を少なくして仕事をした方が世の中のためでもあるというような思い上がった気持ちがあったのかも知れません。結果的には、あまり宣伝をせずに常連客を中心としたお仕事をしているという点で、事実上一見さんお断りになっていたのかも知れません。
しかしながら、弁護士人口が急増している現状をみると、宣伝に力を入れる事務所が勝ち残る可能性が高まってきたように思います。宣伝をすることは、広く事務所を知ってもらうということなので、当事務所を知っていただける方が増える点でよいことなのだろうとは思います。ただ、宣伝をしようにも、今の当事務所の陣容では、仕事を処理しきれないということもありますから、広報・宣伝も今の陣容に見合ったものにするしかできません。
となりますと、当事務所としても、人材の確保に重点を置かざるを得ないということとなります。そこで、当事務所としても、サマークラークを実施したり、本年度も先んじて事務所訪問を募集したりしているのですが、残念ながら、当事務所が修習生にあまり知られていないためか、大事務所との競争では不利な立場に置かれていて、現在のところは、応募もほとんどないのが実情です。まさに一見さんお断りのような口コミに近い宣伝活動しかできない中、日弁連では、採用活動の自粛を求めていますので、日弁連などのHPを通じた公募も今の段階ではできないことも影響しているのかも知れません。マクロ的には、修習生の就職難ということがよく言われていて、私も、そのことはできるだけ情報発信しているわけですが、ミクロ的には小規模事務所の採用活動が困難な状況に置かれているというのは皮肉なものです。
そのような中でも積極的に声をかけてくれる採用希望者がおられることはうれしく思いますし、採否はともかく、将来は同業者になられる方ですから、一期一会として事務所訪問希望者の人格を尊重して丁寧に接していかなければならないと思っています。小規模事務所では、このような細かな採用活動をせざるを得ないというのが実情なんだろうと思います。しかし、そのような採用活動をしている事務所もあることを知る機会がない人の方が大多数を占めている中、大きな事務所に採用希望が集中して、書面審査の中で成績でふるい落とされて自信をなくしてゆく修習生が多くなっているということがあるようにも思えてきました。日本社会の中でも、もっとも厳しい競争格差社会が修習生や受験生の中に出現しているということを実感しています。
ただ、情報が限定されている中、人づてや口コミなどの数少ない情報を積極的に収集して自分の進路選択に生かす修習生もおられるのも事実ですし、そのような人は、その積極性や情報処理能力の高さからして、就職戦線を勝ち抜いてゆかれるのだろうなとも思います。そういう人が他の事務所と比較しても当事務所を選ぶようになってゆかないといけないと自戒しつつ、地道な採用活動を続けています。

2009/09/12

現行62期の就職に関する最新情報

新聞報道によると、9月1日に発表された現行62期の合格者数は、354人でした(ちなみに昨年は609人なので、今年の合格者は昨年の58.1%に減少していますが、これは、旧司法試験の合格者数が減らされたためです。)。前にもご説明させていただきましたように、正確には、この354人の中には、現行61期や新61期で不合格となって再受験された人も含まれていますが、これらの人たちも、形式上は全て現行62期の修習生として採用され直して二回試験を受験されていますので、全て現行62期と評価されることとなります。
 このうち、弁護士として登録できる日の初日に登録した人は、285人です。これは、日弁連のHPの会員専用ページを利用して検索した結果によるものです。昨年の532人から247人減少で、合格者に占める割合は87.3%から80.5%に減少しています。
 次に、現行62期から採用された検察官は、11人と聞いています。昨年の20人から9人減少で、合格者に占める割合は3.3%から3.1%に減少です。
 最後に、現行62期から採用された裁判官の数は、7人です。昨年の24人から17人減少で、合格者に占める割合は3.9%から2.0%に半減したことになります。希望者は全員採用されたようですが、裁判官の減少が顕著なように思います。
 この結果、354-285-11-7=51人が、初期登録できるときには法曹にはならなかったということとなり、二回試験合格者に占める比率は14.4%となりました。
 ちなみに、昨年の同時期では、合格者数は609人で法曹とならなかった人は33名で、合格者に占める比率は5.42%でした。試験制度が変わったとは言え、60期は4.94%でしたから、初期登録で法曹とならなかった人が次第に増えていることとなりますし、特に今年の増加傾向は顕著ということになりました。
 なお、裁判所は、昨年に引き続き、裁判官の採用人数の公表を大きく遅らせ、新司法試験の合格発表の9月10日をも過ぎた同月11日にしてしまいました。これには意図的なものを感じます。裁判所として採用するに足りる人材がどれだけ確保できたのかどうかということは、国民にとっても重大な関心事なはずです。昭和40年代に、政治的な任官拒否が続いて裁判所が世論の非難を浴びた頃、修習生の司法試験や二回試験の成績を開示しない時期があったり、任官者の発表を遅らせて修習生が寮からでるという日に行うということにしたりなどということがあったらしいのですが、それに似たような姑息な対応のように思えてなりません。修習生の就職状況の把握のためには、法曹三者が早期に就職できた人数を明らかにするべきですから、裁判所も、従来とおり、採用と同時に、マスコミを通じて採用者数を国民に公表するべきだと思います。
 それにしても、マスコミも、裁判所に抗議ぐらいしてくれてもと思ったりします。国民の知る権利の確保のために、もうちょっとがんばって欲しい。
              60期   現行61期   現行62期
合格者数        1397人    609人    354人
法曹にならなかった人  69人     33人     51人
比率            4.9%    5.4%   14.4%

2009/08/12

民事時効について思うこと

刑事事件の時効の問題については、これが捜査機関や裁判所が事件処理を終わらせるための口実にもなっているということは、以前のブログで書いたところです。
民事事件についても同じことが言えます。民事でも消滅時効制度というものがあり、10年で債権が時効消滅することとなっています。これを民法の教科書では、「権利の上に眠れる者は保護に値しない」などと説明しています。要するに、権利も行使しないでいると、時効だよということで、権利を持っていても裁判所が保護をしてくれないということです。つまり、時効制度は、裁判所の仕事を効率的にするための制度という側面があるわけです。
民法では10年となっていますが、商法では5年です。その他にも不法行為が3年など、短期の消滅時効制度が沢山あります。この短期時効制度は、国民にとって非常にわかりにくい制度です。権利の上に眠っていたらいけないと言われても、権利を行使しない理由は、人によって様々です。毎月請求書を送っていたとしても、法律の定める手続をしていないと時効消滅することにもなっています。その上、時効消滅したからと言って、税務署が損金として処理してくれるかというと必ずしもそうはなっていません。時効消滅した側は、債務免除の利益を得ても、黙っていたら、税務署にはわかりません。
短期の時効制度が定められているのは、早期に自分で解決することを促進するという側面もありますが、そんなことは、かなり法律に詳しくないとわかりませんから、自分ではどうすることもできなくなって裁判をしようとしたら、裁判所は手助けしてくれなかったということにもなりかねません。
そもそも支払うべきものをずっと支払わないでいた人が裁判で勝つなんてことは、不条理でもあります。道徳的にもよろしくないところがあるように思います。ましてや、不法行為をした人が3年で時効だとして、賠償責任を免れるなんておかしいのではないかと思います。こんな制度は、コピー機もないような時代に作られた時代遅れの法律と言ってもおかしくないかも知れません。医療事故裁判などは、不法行為であると構成して訴訟をすることが多いのですが、事故から3年で訴訟まで提起しろと言われるのは厳しすぎます。商取引上の債権などは、債務者側も債務として会計帳簿に記載されているのが普通ですが、それが5年で時効消滅するなどという利益を支払を怠っている側に与えていいのか、私としては疑問です。
だいたい、債権の存否なんて、それ程難しい裁判でもありませんし、時効を理由にして裁判所が権利者を敗訴させるということは、国民へのサービスとしていかがなものかとも思います。ましてや、法曹の数は急増させようとしているわけですから、裁判官を増やして、国民サービスも強化するのが筋であって、民事でも時効期間を短縮して裁判所が保護に動かない範囲を増やすなんて許されるはずがないと思います。
ですから、国民にとってわかりやすいように、少なくとも短期時効の制度は廃止した方がいいように思います。全部10年とするか、むしろ時効期間を延ばす、しかも、時効の停止のために簡単な制度を用意し、時効で消滅したら、税務上も損金として処理でき、債務者側も利益として計上せねばならないというように、税法とも整合性を持つようにするということでいいのではないかと思います。

2009/07/30

印鑑登録証明制度は廃止したら

中日新聞の記事によると、韓国では、印鑑登録証明制度を廃止することになるらしい。李明博大統領が国民生活の向上政策を重点的に進めているところ、生活の不便解消とグローバルスタンダードに合わせた先進化を理由としているとのことである。不動産登記も来年以降、本人の身分証明書で代替できるようになるとのことで、同制度の廃止で、関連公務員約4000人や関連コスト推定4500億ウォン(約340億円)を削減できるとのことらしい。
 元々印鑑登録証明制度は、日本特有の制度であり、日本以外では、韓国と台湾で使用されているようだが、いずれも日本からの制度輸入のようである。
 私も廃止に賛成であり、日本も早期にそうするべきだと思う。
 私が最も問題と思うところは、日本では、契約書に印鑑さえ押されていれば、署名が偽造されていても、裁判官が署名が真正なものであると推定することができることになっていることから、署名偽造に対する救済が極めて困難になっているということである。この条文があるからこそ、印鑑登録証明制度が存続していると言っても過言ではないように思われる。その結果、同居の親族などから、勝手に契約をされてしまったような事例が後を絶たない。そもそも住基登録カードなど、写真付の簡単な身分証明書が入手できるようになっている現在、顔も知らない人との間でも印鑑と印鑑証明さえあれば取引OKということになっていること自体、時代錯誤であろう。
 印鑑証明は自治体の貴重な収入の一つではあるが、その維持管理のコストを考えると、廃止しても大きな支障にはならないだろうし、韓国で言われているように、社会全体の取引慣行の先進化が進行することによるコストダウンの方が国民生活に与える好影響としては大であろう。
 私は、印鑑による署名の真正の推定の条文も廃止するべきだと思っている。この条文があるがために、裁判官が署名の真正に関する真摯な事実認定を放棄する傾向も醸成されているように思えるし、実際、署名を偽造された人の権利救済に重大な障害となっているからである。