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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2008/08/18

弁護士の専門性表示

久しぶりのブログ更新です。法律改正に絞るつもりでいたのですが、あまりに限定しすぎで、更新がやりにくいので、方針を転換することにしました。
本日は、弁護士の専門性広告について、お話しします。
最近では、交通事故専門とか、債務整理専門などと宣伝している法律事務所がでてきています。この専門性表示については、日弁連の規制上問題があるということを、皆さん、ご存じでしょうか。
実は、専門性の広告については、明確に禁止している規則はありません。すなわち、弁護士の広告に関しては、下記のとおり、弁護士の業務広告に関する規程がありますが、ここでは、第3条で、誤導とか、誇大広告などが禁止されています。ちなみに、法令に反する広告も禁止されているので、屋外広告物条例例に違反することは許されません。なお、このため、京都の弁護士事務所の中には違法看板がでたままになっているところがありますが、横道から少しずれる話ですので、これぐらいにしておきます。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/jfba_info/rules/data/kaiki_no.44.pdf
この規則の解釈に関しては、第13条で会長が指針を定めることができるとなっていますから、これを受けた「弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針」なるものが定められており、これは、下記のとおり、平成18年3月に一部改正されています。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/jfba_info/rules/data/kaiki_gyoumukoukoku_unnyoushishin.pdf
この中に専門分野に関して既述されており、専門分野の表示は好ましくないとされています。第三の二の11です。
専門分野と得意分野の表示
① 専門分野は,弁護士情報として国民が強くその情報提供を望んでいる事項である。 しかし,現状では,何を基準として専門分野と認めるのかその判定は困難である。 弁護士として一般に専門分野といえるためには,特定の分野を中心的に取り扱い,経験が豊富でかつ処理能力が優れていることが必要と解される。ところが,専門性判断の客観性が何ら担保されないまま,その判断を個々の弁護士に委ねるとすれば,経験・能力を有しないまま専門家を自称するというような弊害もおこりうる。
従って,客観性が担保されないまま「専門家」,「専門分野」の表示を許すことは,誤導のおそれがあり,国民の利益を害しひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあることから,現状ではその表示を控えるのが望ましい。専門家であることを意味するスペシャリスト,プロ,エキスパート等といった用語の使用も同様である。
なお,現実に「医療過誤」,「知的財産関係」等の特定の分野において,「専門家」というに値する弁護士及び外国法事務弁護士が存在することは事実である。しかし,弁護士間においても「専門家」の共通認識が存在しないため,日本弁護士連合会の「専門」の認定基準または認定制度を待って表示することが望まれる。
② 「得意分野」という表示は,その表現から判断して弁護士の主観的評価にすぎないことが明らかであり,国民もそのように受け取るものと考えられるので許される。しかし,主観的であれ得意でないものを得意と表示することは事実に反する表現と認められるおそれがある。従って,豊富な経験を有しない分野については,「積極的に取り込んでいる分野」や「関心のある分野」という表示の方が,正確かつ誠実である。
③ 取り扱い分野」,「取り扱い業務」という表示は,専門等の評価を伴わないので許される。
従って、弁護士事務所が特定の分野について専門であるかのように宣伝することには、問題があるわけです。取扱分野などとして表示するのが差し障りのない広告となります。専門性を表示している事務所は、おそらく上記の運用指針を検討していないわけですから、ルールに従うべき弁護士としては問題があるということになります。
但し、市民の側からすれば専門性の表示はいつも指摘されるニーズですから、何年も前から議論はされてはいるのですが、誰がどのような基準で専門性を認定するのかなど、この専門性の認定制度を作ることやルール設定が難しいので、上記のとおり、歯切れの悪い運用指針となっているわけです。
私は、専門性の広告は、一定の禁止事項だけを取り決めて、原則自由とし、禁止事項に違反した場合には懲戒等の問題となるというようなことにして、各事務所の宣伝努力を認める方向が望まれるのではないかと思います。日弁連が専門性認定をするということだとそれだけで多大な労力が必要となって日弁連の肥大化を促進するだけですし、弁護士が上から統制されるような組織になる危険性もあると思うからです。その上で、問題がある事務所に対しては、市民の側から問題を指摘できるようなシステムを構築することが必要なのではないかと思っています。