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2021 初春号 vol.17 白浜法律事務所報

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日弁連で役員をしています

弁護士 白浜徹朗

4月より日本弁護士連合会副会長に就任し、日弁連の役員としての仕事をしていて、皆様にはご迷惑をおかけしております。
日弁連は、委員会というものを中心に動いている組織ですから、役員と言っても、上から指図するようなものではなく、委員会の中に入って委員と議論しながら、物事を進めるということになっています。これは、会長も同じで、会長が上命下服で指図しているようなことはなく、我々副会長を含めた正副会長会というもので議論をしながら、方針を決めています。副会長は15名もいるのですが、15名では手が回らず、皆が忙しくしているのが実情です。
特に今年はコロナの問題があり、様々な人権問題や法律問題が発生したということもあって、私自身もコロナの対策会議が新たな担当部署となり、予想以上の忙しさとなりました。
色々な相談の体制を構築したり、政策的な提言も行うなどして、皆様のお役に立つよう努力致しました。
時の権力と対立しても人権と正義を守ることが日弁連に求められていることですが、今年は、就任早々に検察庁法改正問題がでてきたことで、皆で議論をしながら会長声明や意見書を練り上げ、国会議員の皆様にも要望するなどのことをしました。幸い、世論の支持も得て、三権分立や立憲主義という憲法の基本的仕組を守ることができたのではないかと思います。このような憲法などを守る活動に対して、弁護士会は世間に楯突いてけしからんなどとの非難を受けることがあります。そのことについて、一言説明しておきたいと思います。例えば、国会議員が犯罪を犯したとして、その議員を警察や検察官が逮捕しても、なぜ逮捕するんだという人はいないと思います。我々弁護士の活動は、人権や憲法の侵害があればおかしいということを指摘するのが仕事なので、犯罪者がいたら捜査機関が対応するのと同様、人権侵害等の問題があればこれを正すよう活動するのが責務となっているだけのことです。要するに、弁護士が世間に向けて発言しないようになったら弁護士ではないわけです。弁護士のこのような活動が制限されたのが、戦前の日本ですし、ナチスドイツの時代です。このような時代に戻らないためにも、我々弁護士の活動は重要な役割を持っているということなので、ご理解いただければと思います。
この事務所報が皆様のところに届く頃には、もう任期が3か月ということになっているものと思います。残りの任期も気を抜かないようがんばりますので、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

弁護士業界のIT化

弁護士 拝野厚志

1.いつまでも取り残されていた法曹の世界でも、去年あたりから、IT化の波が徐々に押し寄せてきております。コロナ禍の影響というのは後付けの理由で、遅々として進まない日本の裁判制度にアメリカからの圧力があったとも言われております。
2.実は法曹界にはオタクも多く、早くからIT方面に目覚めていた弁護士もちらほらとおりました。パソコン通信の時代から目覚めていた弁護士は、事務所のIT化の話をしているのに松茸や桐がいかに素晴らしいソフトなのだとの話を熱弁しがちです。何を隠そう当事務所の白浜所長もパソコン通信の頃からパソコンに精通し、現在も高スペックパソコンを自分で組み立てるほどのレベルです。事務所のIT化も白浜所長が先頭になって進めてきました。おかげで当事務所では最先端のIT設備により、業務の効率化が図られております。
3.裁判所にもパソコンオタクはいたと思うのですが、役所としての裁判所のIT対応は遅々として進まず、データ流出を防止するため、裁判所のパソコンからインターネットにつなぐことは禁止、データのやり取りはメールではなくUSBでと、いつの時代なのかと思うような有り様でした。せいぜいトリオフォンを使って三者で通話しながら期日を行う程度でした。それでも先輩の弁護士に言わせると遠方の裁判所まで1日(場合によっては泊まりで)赴く必要がなくなり、とても楽になったとのことです。弁護士の主たるやり取り先である裁判所がこのような状態では、当然そこがボトルネックとなってしまい、業界全体のIT化も遅々として進みませんでした。
4.ところが、裁判所より突如、teamsを使った裁判手続きを段階的にすすめるとのお達しがなされました。
teamsとはzoomのマイクロソフト版で、ウェブカメラを使ってテレビ電話のように話をすることができます。また、これまで紙ベースで提出していた書面もデータでアップし、提出することができるとのことです。事務所にいながらにして裁判所に出頭
したのと同じように手続きが進むことは効率という面でも望ましいことです。操作もそれほど難しくはなく、使われだすとその便利さから以前の状態には戻れなくなると思います。
将来的には、元データに原告側と被告側双方が書き込みをして主張と反論を積み上げていく形がとることができたら、能率的に争点の整理もできるのではないかと思っております。
5.もっとも、事実を見誤らないため、現物が重要であることは仕事上、たたき込まれてきました。裁判所に生の話を聞かせ、現場を見させ、現物を見させてたことが、事件解決の糸口になったことが多々あります。今後、どのような運用になっていく
のか未知数ではありますが、現物の確認とIT化をうまく調和させていくことが重要と思われます。

 

民事信託の今後について

弁護士 青野理俊

平成27年初頭の事務所報において、私は、家族信託について書かせていただきました。当時は「家族信託」という表現が流行しておりましたが、今ではあまりそう表現することはなくなり、信託銀行が取り扱う商事信託との比較から「民事信託」ということが多いと思われます。
私は、比較的早い時期から民事信託について興味を持ち、様々な文献を読んで自己研鑽を積みつつ、解決のために民事信託を活用することが最適と考えられる案件では積極的に組成してきました。
受託者や受益者を誰に、信託財産を何に、受益権の内容をどのように、受託者の監督をどのように、信託の終了時期や終了事由をいつに、帰属権利者や残余財産受益者をどうするか等を、信託契約書や自己信託設定公正証書などの文案作成を通じて設計
することを「組成」と表現したりします。信託法の正確な理解をもとに、税理士の先生とも協働しながら、このような信託の「組成」を行えるということは、財産の承継に関する様々な家族間の問題について有力な一つの解決方法になると感じております。
一方で、他の士業の方が組成した悪用というほかない民事信託の事案を目にすることもあります。本来ならば、成年後見制度や任意後見制度などを利用し、家庭裁判所において財産処分の必要性や選任される後見人の適格性が判断されるべきであるのに、民事信託によって無理やり財産処分が行われているようなケースです。
勿論、成年後見や任意後見などの財産管理制度にも利点はありますので、私としては、これらの既存の制度の利用が適当なのであれば敢えて民事信託の組成による必要はないと考えています。
まだまだ浸透しているとは言いがたい民事信託ですが、これが良い制度として普及するか、悪用されるものとして敬遠されるかは、私達のような専門家の倫理によると思います。そのことをきちんと念頭に置いてこれからも力を入れていきたいと思いますので、ご興味がある方はお気軽にご相談いただけると幸いです。

 

修習指導担当を経験して

弁護士 大杉光城

昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ところで、昨年の6月以降に打ち合わせ等させていただいたお客様の中には、私のほか、若い研修生を同席させていただいたことを覚えておられるかも知れません。その際にもご説明したかと思いますが、彼は「司法修習生」という身分の「法律家の卵」になります。
私にとって昨年もっとも印象に残っていることは、この司法修習生の指導担当弁護士を経験したということです。
司法試験の合格後、すぐに弁護士や裁判官、検察官になれるわけではありません。試験の合格者達は、一定期間(現在は約1年間)、全国各地に散らばり、「司法修習」という実務に就くための研修を受けることになります。司法修習生は、その配属地の裁判所、検察庁及び法律事務所にそれぞれ数ヶ月通うことになり、そこで
各法律家(裁判官、検察官及び弁護士)の指導を受けます。そのような指導を受けつつ、司法修習生達は、修習終了後の進路を定めるとともに、実務に就くための知識とノウハウを習得していくのです。
私自身、約8年前、司法修習生の立場でした。私が司法修習生であった頃、その指導担当の法律家は、「後輩の模範となる第一線で活躍する法律家」のように思えていました。もっとも、今の私がそのような存在になれているかは、正直、自信がありません。皆様とともに成長させていただき、法律家として必要な知識、ノウハウなどは
一通り身に付いているという自負はありますが、今でもわからないことも多く、日々勉強し、あれこれと悩みながらこの仕事を続けています。
司法修習生時代、先輩法律家から「この仕事は一生勉強だ」という指導を何度も受けました。今回、修習指導担当になって初心に戻る機会があり、その意味を実感できたように思います。そして、謙虚かつ貪欲に知識・経験を吸収しようとする後輩達の姿を見て、このような姿勢を続けることこそが重要なのだろうと感じました。きっと、8年前に私が見ていた先輩方も、必死に勉強し、悩みながら仕事をしていたのだろうと思います。
経験を重ねても謙虚に学ぶ姿勢を忘れず、日々の研鑽に努めることで、これまで以上に皆様のお役に立てるようになりたいと思います。

 

弁護士ときどき裁判官

弁護士 津田一史

令和2年10月1日付けで、最高裁判所から、京都簡易裁判所民事調停官(非常勤裁判官)を拝命しました。
民事調停官とは、弁護士を続けながら、週1回、裁判官と同等の権限をもって裁判所にて勤務する非常勤裁判官でして、簡易裁判所で民事調停事件の解決を取り扱っています。
私は、司法試験合格までの18年間、裁判所に勤務し続けておりました。今般、8年ぶりに裁判所に戻り、かつ、裁判所勤務時代に長年、憧れていた京都の裁判所で、非常勤裁判官として勤務に再び戻れたことに喜びを感じております。裁判所において多種多様な調停事件を担当しているのですが、弁護士としての知識・経験を生かして、調停のより一層の充実、活性化を図ることを心がけております。
もっとも、裁判所勤務以外の週6日は、当然、弁護士としての仕事をしております。また、非常勤裁判官として職務を行うことで、間違いなく弁護士としてのスキルアップにもつながりますし、解決が難しいと思われた事件でも、みなさまの言い分をじっくりと拝聴し、みなさまにとって「Win-Win」の解決をすることも視野に入れて、紛争解決に努めています。
みなさまは、弁護士というと、厳粛な法廷において、権利主張をして、相手方を徹底的に懲らしめるといったイメージをお持ちになられているかもしれません。同業者からも、弁護士はいわゆる「裁判屋」だと言われることさえあります。しかしながら、私は、みなさまの周囲にあるトラブルを解決することが第一の目的であって、決して権利主張や相手方を懲らしめるといった目的が先行するものでは
ない仕事だと捉えています。
私以外にも全国の簡易裁判所に40名強の「弁護士ときどき裁判官」がいます。全国の数万人の弁護士の中でも、とても珍しい弁護士となります。昨今のコロナ禍の中で、簡易裁判所の調停手続がクローズアップされていますが、非常勤裁判官として手続に携わる経験を踏まえて、さらに的確なリーガルサービスを提供できるよう
努力する所存です。
みなさまにおかれましても、お話し合いで解決することがのぞましい事案に関しまして、裁判だけではなく、調停を申し立てることも視野に入れてご検討いただき、また、適切な解決手段を選ぶにあたって、手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。

 

賃料増減額請求権について

弁護士 加藤真章

昨年の業務を振り返ると、不動産関係の法律相談、とりわけ貸主側の代理人として借主に対する賃料増額請求に関するものが多かったように思います。
賃料増減額請求権は、借地借家法に定められた請求権で、①土地または建物に対する租税その他の負担の増減、②土地または建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、③近傍同種の建物の家賃水準、の事情を総合考慮して、現行賃料が不相当と
なっている場合に認められるものです。
建物の賃貸借は、長期間に及ぶことが多いため、周辺相場と比較して賃料が不相当と感じたとしても、遠慮して賃料の増額を言い出せず、そのまま据え置かれることが多くあります。そのため、賃貸人が亡くなり、賃貸人の相続人が賃貸物件を相続した時や、売買などにより賃貸人が交代する時に、賃料増額請求が問題と
なります。
他方、昨年は新型コロナウイルスが流行し、賃料の減額が問題となりましたが、賃料増減額請求権の観点からみると、賃料増減額請求権は、将来に向かって恒久的に賃料を変動させる制度であるため、新型コロナウイルスによる影響が一時的なものに留まる限り、それによって直ちに相当賃料が下落することは考えにくいといえます。
もっとも、新型コロナウイルスの影響の長期化により、継続的な景気の悪化がみられ、固定資産税評価額や不動産市場価格が下落したり(経済事情の変動)、近隣の賃料相場が下落した(近傍同種の建物の家賃水準)、等の事情が現れはじめれば、賃料減額請求が認められる余地はあると考えられます。
このように、賃借人の存在する不動産を買った時や相続した時、もしくは今後、新型コロナウイルスの影響によって固定資産税評価額や不動産市場価格に下落がみられた場合には、賃料増減額請求が問題となりますので、このような場合には、是非一度ご相談いただければと思います。

 

コロナ禍におけるセーフティネット

事務長 田村彰吾

昨年から猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会の乱れにより、就業状況、会社の経営状況に何らかの影響を受けていらっしゃる方も多いと思います。
事業者においては、持続化給付金や家賃支援給付金、雇用調整助成金など、比較的メディアでも大きく取り上げられた資金補給に加え、日本政策金融公庫や各種金融機関などで実質無利息の融資や保証料の減免などで、当座の資金繰りを確保された企業も多くあり、返済計画はともかく、緊急避難的には奏功したと思います。
これに対し、一般消費者へのセーフティネットはどうなっていたのでしょう。あまりメディアで取り上げられることはありませんでしたが、何らかの補償が用意されていたのでしょうか。
例えば、今すぐに生活資金が不足する方のために、全国の社会福祉協議会において緊急小口資金の少額貸付として最大20万円、総合支援資金として月額20万円(2人以上世帯)を原則3か月(緊急小口資金と併せて80万円)を借り受けることが出来ます。これは借入ですので償還が必要ですが、償還期限においてなお困窮していた場合は返済の免除も可能です。
また、住居を確保するために、居住確保給付金が用意されており、就業先の休業や解雇などで離職した方、廃業された事業者などの方(又は離職しないまでも同程度の状況にある方)に対し、原則として3か月分(最大9か月分)の家賃援助(生活保護の家賃扶助額相当)があります。支給要件は、世帯収入が市町村税均等割非課税収入
の月額相当に家賃扶助額を加算した額ですので、実質失業状態にある方であれば対象となると思います。こちらは給付金で返済の義務はありません。
どちらも以前からある制度の要件緩和であり、緊急時の一時的な対策でしかありません。また、実質失業状態でなければ恩恵はありません。しかし、度々、感染拡大期を繰り返している状況下においては、いずれ体力のない中小零細企業から耐えきれなくなるであろうことは容易に想像できます。国内企業の99.7%、就労者の約69%は中小企業が担っています。誰がいつ当事者になるかは全く予想が付きません。万一の際には、これらのセーフティネットがあることを覚えておいて頂ければ、「厳冬期」を乗り越える一助となると思います。そして、より手厚い政府補償と1日でも早いコロナ禍の収束を願ってやみません。

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