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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜法律事務所報

2020 初春号 vol.16 白浜法律事務所報

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土地境界紛争処理

弁護士 白浜徹朗

さて、当事務所が乙訓地域の弁護士事務所不在に対応するべく長岡京市に支所を開設して10年という節目を迎えることとなりました。今後も、地域の皆様のお役に立てるようがんばる所存ですので、よろしくお願い申し上げます。
所長である私は、この数年、不動産の値動きが激しかったせいか、不動産の賃料の増額の問題とか、土地境界に関わる相談を受けることが増えたように感じています。今回は、このうち、土地の境界に関する紛争処理のことについてお話させていただきます。
土地の境界に関する紛争処理としては、筆界特定手続と境界確定訴訟というものがあります。
筆界特定手続は、法務局による行政処理ですが、境界確定訴訟というものは裁判手続です。筆界特定手続は土地家屋調査士も代理ができます。土地境界に関する行政資料などが比較的簡単に集まる点が便利と言えます。ただ、行政判断ですから、主張を戦わせてどちらが正しいか判断してもらうというよりも、法務局に判断をお任せすることになります。
経験上、思いもかけないところでおかしな判断をされてしまうということが多いように感じています。なお、不服申立の制度がないので、法務局の判断に納得できない場合には、裁判所に境界確定訴訟を提起しなければならないことになります。
これに対し、境界確定訴訟は、訴訟という性格上、裁判所は自分で資料を集めるようなことはしてくれませんから、自分で資料を集めて証拠として提出しなければならず、資料が不足していると立証が不足しているとして不利な判断につながることがあります。ただ、どちらが正しいのか主張の競い合いができることと、判断に不服がある場合に高等裁判所に控訴できるなどの利点があります。
私の経験上は、あまり争いがないけれども隣地が境界確認書に同意してくれないというときには筆界特定制度が適していると思います。境界に関する意見の相違が激しいときには境界確定訴訟を使った方が納得がいく処理が可能と思います。
弁護士は、両制度について代理人として就くことができますが、いずれにしても測量図面がないと話にならないので、土地家屋調査士と協働して対応することになります。当事務所も、協働して対応しています。
土地境界について紛争になってしまったということでしたら、お気軽にご相談いただければと思います。

 

渋沢栄一と論語

弁護士 拝野厚志

1.1万円札の新たな顔が渋沢栄一に決まりました。30年以上前から注目しておりましたのでようやく脚光を浴びたかという感じであります。日本資本主義の父と言われておりますが、渋沢の真に偉大な所以は、論語を指針としてその思想を実践した経営を行ったことにあると思います。
渋沢は明治6年に官を辞して身を実業に委ねることになりました。実業をもって国を支えるにあたり事業上また一身上従うべき行動基準がなければならないと考え、幼い頃より親しんできた論語をその基準として決めて、経営にあたりました。渋沢が興した多くの会社が現在も日本経済を支える企業として残っております。渋沢の関わった会社の経営はまさに正道を行くものであり、自社もしくは自分の履歴のみを考える現代の経営とは全く異なるものでした。
2.論語には役立つ言葉が多く書かれておりますが、人間観察の方法として「子曰、視其所以、観其所由、察其所安、人焉捜哉、人焉捜哉」(為政第二之十)と書かれています。
この個所について渋沢は以下のとおり、解説しております。
「そもそも人物を観察するに、まず第一にその人の外面に顕はれたる行為の善悪正邪を視、第二にその人のこの行為は何を動機にしているものなるやをとくと観極め、第三に更に一歩を進めてその人の安心はいずれにあるや、その人は何辺に満足して暮らしているやを察知すれば、必ずやその人の真正の性質が明瞭になるもので、いかにその人が隠しても、隠し得られるものではない。」
「外面に顕はれたる行為が正しく見えても、その行為の動機たる心意が正しくなければ、その人は決して正しい人物とはいえぬ。とき会って悪事を敢てすることなしとせずである。また、外面に顕はれた行為も正しく、これが動機となる精神もまた正しいからとして、もしその安んずる所が飽食・暖衣・逸居するに
ありというようでは、その人はある誘惑によっては意外の悪をなすこともあるものである。」(「論語講義」より抜粋)。
3.「察其所安」の部分は行動のどこに満足しているかを察ると解釈するのが一般ですが、渋沢は上記のとおり解説しております。人物は日々の暮らし様にこそ現れるとのことなのでしょう。
皆さんも、生涯の伴侶を決めるとか、一緒に事業を行うとか、人を見極めなければならない必要が出てきたときはこの3点をご確認いだたくと、その人物を外れることなく見極められるものと思います。ご参考になさてっください。

 

労働法分野での弁護士の活用

弁護士 青野理俊

弁護士が関わる法分野は多岐に亘りますが、その中でも裁判例の積み重ねや法改正により変革が著しいのが労働法分野です。
最近の変革としては、やはり昨年に「働き方改革関連法」が成立し、本年4月1日から順次施行されていることが挙げられるでしょう。
改正点を簡単にまとめると、①残業時間の上限規制、②有給休暇の取得の義務化、③フレックスタイム制の見直し、④インターバル制の普及促進、⑤高度プロフェッショナル制度の新設、⑥中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ、⑦産業医の権限強化、⑧同一労働・同一賃金の実現となります。このうち中小企業にとって無視できない影響を受けるのは、やはり⑧同一労働・同一賃金の実現です。
同一労働・同一賃金に関する法規制には、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情、の相違を総合考慮して不合理な待遇差を禁止する【均衡待遇規定】と、前記①と②が同じであったら差別的取扱の一切を禁止する【均等待遇規定】があります。今回の改正により、有期雇用労働者についても、【均衡待遇規定】にとどまらず【均等待遇規定】が定められました。その結果、例えば、継続雇用制度において正社員時代の職務内容や職務内容・配置の変更範囲を変えずに賃金のみを下げて有期雇用とする企業は少なくないと思われますが、このような賃金差が全て違法になることになります。これを回避するには、厚生労働省が公表しているガイドラインを参照しながら前記①と②に関する正社員と有期雇用労働者の区別をしっかり行うことが必要です。
働き方改革のほか、平成25年4月1日から施行されている無期転換ルールなど、きちんと対処しておかなければ思わぬ事態となるのが労働法分野です。自社の労働環境を見直すにあたり、紛争解決と紛争予防のプロである弁護士の視点を取り入れることも重要ですので、お気軽にご相談いただけると幸いです。

 

専門性を高める

弁護士 大杉光城

昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、お陰様で昨年も様々な事件を経験させていただきました。
ありがとうございました。弁護士登録した当初は刑事事件、少年事件を比較的多く受任していましたが、近年は、交通事故、相続事件、不動産事件などを受任する割合が増えてきました。
私は、今年で弁護士登録7年目になります。上記のような事件に加え、離婚事件、貸金請求事件、債務整理・破産事件、労働事件、近隣トラブル、後見事件、障害者支援、犯罪被害者支援など、様々な事件を受任し、その解決のお手伝いをさせていただきました。このように、弁護士として関わる様々な事件を一通り経験させていただきましたが、今年の目標として、そのような様々な事件の中で注力分野を定め、専門性を更に磨くことでより質の高い解決を目指したいと考えています。
そこで、今年私が特に注力したい分野が「交通事故」です。
交通事故の事件処理は、損害賠償請求としての法的知識のほか、医学的知識、工学的知識、損害保険の知識、さらには、加害者側の場合、刑事手続や行政手続の知識など、非常に多くの分野の知識が必要となってきます。一つ一つの事件の特性を踏まえ、それらの周辺的な知識の習得等も含めて日々研鑽を重ね、専門性を高めていきたいと思います。
交通事故に関しましては、被害者の方からご依頼頂くことが多いのですが、私の場合、これまで刑事事件に注力していたことから、加害者の方からのご依頼も比較的多いように思います。事故や自身の過失を依頼者(加害者)と一緒に振り返り、このような事故が起こらないように助言するとともに、適切な賠償を提案していくことは、当事者双方に意義のあることだと考えています。
交通事故は、誰にでも起こり得ることです。もしもの時に、どのような立場であっても、お気軽にご相談下さい。一緒により良い解決を検討していきましょう。

 

民事執行法の改正にあたって

弁護士 津田一史

裁判所で勝訴判決を得た場合、裁判所がみなさまのために相手方から現金を取り立ててくれるのでしょうか。
答えは、「いいえ」です。相手方が裁判所の判決にしたがい任意に支払ってくれる場合は良いのですが、判決にしたがわない場合、みなさまが勝訴判決をもとにして、裁判所への強制執行手続の申立てや取立てをおこなわなければ、お金は手に入りません。
このように「得た勝訴判決を現実にお金に変える手続」が、強制執行手続であり、民事執行法という法律が規律しています。新聞でも報道されましたとおり、改正民事執行法が本年、施行されます。
この改正作業については、裁判所における最後の奉公が不動産競売係の主任書記官であった私も、大阪弁護士会の民事執行法改正バックアップチームの一員として関わりました。
改正作業では、相手方(債務者)の財産の開示制度、不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、子の引渡しの強制執行、差押えにより債務者の生活が困窮することを防止するための見直し、などなど多岐にわたるもので、ベテラン弁護士から若手弁護士、著名な大学教授も集まり、我が国の憲法論から、ドイツ、台湾など諸外国の法律制度との比較に至るまで、夜遅くまで何回も議論をしていました。私自身は裁判所での経験を踏まえて関わり、社会一般の流れを確認して、どのように手続きに反映させるかを議論させていただく良い機会でした。特に、全国の暴力団事務所が約1700か所あるうち、約200の物件が不動産競売の経歴を有していることが判明している事実には驚きました。
ところで、実際の弁護士業務においても、暴力団員といった反社会的勢力を相手方として、事件のご依頼をいただくことが多々ありますし、幸いにも複数の事件を解決することができました。特に、交渉において、相手方(暴力団員)から暴力団事務所に出向くよう促された際、交渉する際の留意点などを踏まえて、できるかぎり安全かつ確実に紛争解決に導くか、弁護士業務としても工夫が必要です。みなさまだけでは解決に導くことが難しいと思われる案件につき、早期にご相談いただければと存じます。
「この問題って、弁護士に相談するものなの?」と、弁護士に依頼する案件なのか否かを判断することも、弁護士の役割です。お気軽にご相談いただき、みなさまとご一緒に、二人三脚で解決できればと考えております。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

 

弁護士業務を1年経験してみて感じたこと

弁護士 加藤真章

昨年は弁護士登録1年目の年であり、多様な事件に関わらせて頂き、日々勉強の毎日でありました。特に不動産の明渡しや賃料増額請求等不動産分野でのご依頼や残業代請求事件や就業規則の作成等労働分野でのご依頼が多かったように思いますが、それら以外にも交通事故事件や遺産分割・離婚等の家事事件のご依頼など、幅広い分野で経験をさせていただきました。その中で感じたことは、弁護士業務は単に法律を知っているだけでは不十分で、社会全般の知識も備えていなければ、最善の解決策を提案することが出来ないということです。たとえば、不動産分野でのご相談では、不動産鑑定士による鑑定書が重要な資料となることが多いのです
が、この結果がこちら側に不利な結果なのであれば、鑑定方法について精査し、説得力のある反論をする必要がありますので、不動産鑑定に関する知識が要求されます。また、交通事故分野でのご相談では、医師のカルテ等診療記録を精査する必要がありますので、医療に関する知識が必要となります。もちろん、その他の分野でのご相談では、その分野における知識が必要となります。そして、これら他の専門家の意見に対して反論するのですから、付け焼き刃な
知識では到底説得力のある反論は出来ないのは自明ですので、踏み込んだ理解が要求されることも痛感しました。そのため、私もご相談頂いたことについては徹底的に勉強し、最善の弁護活動が出来るよう勉強を積んでいく所存です。そして、弊事務所は、多様な案件を取り扱っており、経験豊富な弁護士も多数在籍しておりますので、そのような環境で、先輩弁護士とともにこれからも多様な経験を積んで成長していきたいと考えております。
私もこれまで以上に日々研鑽し、最善の解決策を提案できるよう精進してまいります。少しでもお困りのことがございましたら、一緒に最善の解決策を見つけ出せるよう、全力で取り組む所存ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

手段のために目的を忘れる

事務長 田村彰吾

選挙された国会議員は、様々な立法、政策を通じて国民生活を誘導します。求められるライフスタイルに合致する行動には助成金を拠出するなどインセンティブを与えたり、そうでない行動に税や罰則などを課して抑制し、国民の行動を望ましいスタイル(目的)へと導こうとします。政策はこの目的のための手段にすぎません。
ところが近時、手段を重視するあまり目的が見失われているように感じることがあります。例えば、政府は男性にも育休を取らせるため助成金を用意していますが、その助成金を受けるには、実は通常の育休よりも、厳格な休暇を取らなければなりません。通常、育児休暇はその休暇中、何度か出勤して業務に従事することが可能です。
例えば月に一回程度、短時間出勤して業務の引継ぎなどをしたとしても、その休暇性を否定されることはありません。しかし男性の育児休暇助成金は、連続して休暇を取得しなければ支給されません。
1回でも出勤すると連続性がなくなり、助成金が減額されたり不支給になったりすることがあります。男性の育休取得率、取得日数をともに高めるという目的の助成金だと推測されますが、これでは反って取得の難しさを意識させることになりかねません。
また、女性労働者についても、体調が不安定な産休の直前期、本人の申出で始業時間を遅くしたり勤務時間を短縮するなど配慮したところ、労基署から労働条件の不利益変更を疑われたこともありました。労働者のために体調を慮った対応についてペナルティを課すというのです。この件は産休中の従業員に何度も上申書を出してもらって、疑いを晴らすことができましたが、これでは自由な働き方など推進されようはずがありません。国が求める「望ましいスタイル」に合わせたことでペナルティを受けるとは、まさに目的を見失った例ではないでしょうか。
事業活動を続ける中、良かれと思ってしたことが、取引先、お客様、時には行政から謂れのない疑惑をかけられることがあります。その手段が、たとえ目的を果たすためだとしても、高を括っていると思わぬ不利益を受けることがあります。こんな時、ご相談頂ければ、お力になれることがあるかも知れません。

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