白浜の思いつき

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  2008年9月

2008年09月11日

現行61期の就職状況

司法試験に合格しても、弁護士として就職できるかどうかわからないという現象が生じていることを最初に公表したのは、私の事務所のHPでした。その後は、二回試験という司法修習生の卒業試験の発表と裁判官や検察官への採用数の発表がある度に、弁護士の中で情報を流すようにしてきました。ただ、最近になって、これは、弁護士にだけ公表しても意味がなく、受験生やそもそも弁護士を目指そうかどうか迷っている人にも正確な情報を入手しておいてもらった方がいいのではないかと思うようになりました。ブログの更新の話題も、守秘義務の問題もあって、なかなかみつけにくいということもありますから、就職状況に関するデータチェックも、この際、このブログで公表することとしました。
 現行61期の就職に関するデータは以下のとおりです。
 まず、現行61期の合格者数は、下記の新聞発表によれば、609人です。正確には、この609人の中には、新60期や現行60期で不合格となった人も含まれているのですが、これらの人たちも、この二回試験を受験するに先立ち、現行61期として採用されて司法修習生の資格を得てから試験に臨んでいますから、法的には全て現行61期として取り扱われることになります。従いまして、現行61期の合格者数は609人で間違いないということになります。
 このうち、弁護士として登録できる日の初日に登録した人は、532人です。これは、日弁連のHPの会員専用ページを利用して検索した結果によるものです。
 次に、現行61期から採用された検察官は、下記の新聞報道によれば、20人です。
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080905-00000082-mai-soci
 最後に、現行61期から採用された裁判官の数は、下記の新聞報道によれば、24人です。
  http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=soc_30&k=2008091000609
 この結果、609-532-20-24=33名の人が法曹にはならなかったということとなります。前年度の数字については、下記の私のコラムでデータを示しておきましたが、69人が法曹にならなかったわけです。このときの合格者数は1397人ですから、法曹にならなかった人の割合は、4.94%だったわけですが、今回は、5.42%となり、割合が増えています。ちなみに、平成17年の合格者1158人のときの法曹とならなかった人が27人ですから、このときよりも実数が多いわけです。法曹にならない人は明らかに増えていると言えます。
  http://www.shirahama-lo.jp/column/asahi04.html
 この後に控えている新61期、つまりロースクールからの合格者は、現行61期よりも更に厳しい状況となっていると思います。これは、下記のとおり、日弁連でも認めざるを得なくなっています。なお、ここで60期のほとんどが就職できたと分析していることについては、私は、疑問を持っています。日弁連が就職しなかった人たちの個別調査を行ったということを聞いたことがないからです。私は、元修習生ということで修習終了直後に就職活動をしている人からの就職の相談を受けたことがありますが、この人の就職活動はものすごく大変だったと聞いています。また、愛知県では就職できたけれども1年以内に事務所を変わったという人がかなりの数になったとか、弁護士登録そのものをやめた人もでたということを確認していますが、これは別に愛知県だけに限ったことではなく、他の地域でもあるはずのことですから、就職といっても潜在的失業状態と評価できるような劣悪な労働条件で弁護士をしている人もでてきていることは間違いないのです。
  http://www.nichibenren.or.jp/ja/committee/list/data/
kyujin_enquete_taisaku.pdf
 私は、下記コラムで、以下のことを述べました。この思いは、今でも変わっていません。実際、私が会った修習生の中で就職が難しかった人のほとんどは、転職された方とか、長期間受験されていた方が多かったので、他の職業に就くことは難しいだろうと思います。最近では、若い修習生でも就職がないという人も増えています。せっかく修習も終えたのに転職を考えねばならないということでは、何のための修習だろうと思います。
  http://www.shirahama-lo.jp/column/syukatsu.html
 机の上だけで法曹人口論を唱える人たちは、この問題が若者の人生に深く関わる問題であるということを考えてみてほしいと思う。とにかく沢山合格させればいいというわけではないはずである。何年もかかって合格して喜んで研修を積んだものの、実際には就職ができない若者が大量に出現するようなことが果たしていいことなのだろうか。そのときには、他の就職の道は閉ざされているかも知れないのである。

2008年09月12日

裁判所だけが新規採用情報公表を遅らせていいものでしょうか

現行61期修習生からの裁判官採用については、下級裁判所裁判官諮問委員会第33回議事録によれば、9月5日に諮問委員会が開かれていて、採用者が決まっていたはずですが、10日まで報道されませんでした。
  http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/kakyusaibansyo/
  pdf/iinkai_33th.pdf
 これは、検察庁が、新規採用者に関する情報を5日に発表していることと対照的な対応です。
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080905-00000082-mai-soci
 私は、これだけ法曹養成問題に対する国民の関心が集まっている中、裁判所だけが、国民への情報提供を遅滞するということは社会的にみて許されないことだと思います。
 私が修習生の頃から、検察官の採用発表は、修習生が修習生の身分を有している時期に行われていましたが、裁判官については、修習生が修習生ではなくなった時期に行われるのが慣例となっていました。これは、任官拒否者が出現したときに同期の修習生を中心とした非難の声が巻き上がるのを避けようとしたからではないかと言われていた時期があります。しかし、今や毎年のように判事補として採用されない修習生が複数出現する時代となっていますから、発表を遅らせることには採用拒否への社会的非難を避ける意味はもはやありません。別の意図を持って遅らせているのか、早期の報道が大事だという意識が欠如しているのかのいずれかと言わざるを得ません。この点、現行司法試験合格者数から比較すると、裁判官への任官者の比率は、下記のとおり、10%近い数字から4%以下に減っているなど、裁判所は、合格者の増員の割に採用数を増やそうとしない傾向が顕著ですから、この点への非難を避けようとして、発表を遅らせているのではないかと疑う気持ちがどうしてもでてきてしまいます。また、たとえ数日であっても、身分が不安定な時期を意図的に出現させるということは、裁判官の身分保障について、就職の初っぱなに不安感を植えつけることになり、最高裁による裁判官の心理的統制の第一歩となっているようにも思えてなりません。新任判事補の採用発表は、修習生の身分を保持した段階で行われてしかるべきではないかと思います。少なくとも5日の諮問委員会の内容報告が10日に報道発表されるということには、何らの合理的理由もないように思います。

       二回試験合格者数  裁判官採用者数   割合

平成17年    1158           124  10.7%

平成18年    1386           115   8.3%

平成19年    1397            52   3.7%

平成20年     609            24   3.9%

2008年09月15日

道路予算の削減の方向性って?(ひび割れ道路の出現をどう考えるのか)

道路予算については、もっと削減するべきだということがよく言われています。私も、無駄な道路を造るということには反対です。しかし、日常的に使用されている道路の整備・改修の予算まで削られるのでは、私たちの安全が脅かされてしまいます。このことに反対される方はほとんどいないと思いますが、現実には、道路の維持・改修のための工事は、昔と比べるとかなり減少しています。昔は、3月となるとあちこちで道路工事があったような記憶がありますが、最近では、道路のアスファルトの張替の工事に出くわすことはほとんどありません。それほど道路の維持・改修のための工事は減少しています。直接に関係するデータを探すことはできなかったのですが、路上工事が減少したということについては、国土交通省からも積極的な宣伝が行われています。
  http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/rojokoji/index.html
 この結果、下記の写真のようなひび割れ道路があちこちで出現しています。これは、アスファルトの張替をあまり行わなくなったことが原因です。下記の写真は、河原町丸太町というVIPもよく通る京都のメインストリートを写したものですから、通行量の少ない道路だともっと深刻な状況になっていてもおかしくありません。デコボコ道でバランスを崩して交通事故というような事態が生じないとも限りません。こういう予算を削るということは、国民は望んでいないのではないかと思います。


P1000672_R.jpgP1000673_R.jpg

2008年09月17日

何でも不正競争防止法でいいのでしょうか

今世間を震撼させている擬装米問題の刑事処理は、詐欺と不正競争防止法によることになりそうです。ブランド品の偽物事件なども不正競争防止法、従業員による企業情報流失なども不正競争防止法で刑事処理が行われます。このため、今話題となっている事件は、何でも不正競争防止法違反というような感じです。
 ブランド品の偽物販売などは、犯罪類型が明確になっているわけですから、本来、そのことに即応した刑事処理を法律が用意するべきだと思います。利益の剥奪などについても、犯罪類型に応じたメニューを用意することが可能だし、その方が、刑事政策的にも犯罪抑止がより効果的になると思います。
 ましてや、健康被害が問題となるような商品の流通については、その被害が人命に関わるだけでなく、知らないうちに加工商品を作ってしまったような企業までが製品回収に追われるなど経済的な被害も甚大なものとなるわけですから、それを不正競争防止法で処理せざるを得ないという状況は、明らかに立法の怠慢であると思います。これは、薬害被害にもつながる問題です。
 私は、健康被害を生じさせる商品(健康食品だけでなく薬も含めるべきでしょう。)を流通させた者に対しては、法人も含めて、厳しい刑事処分を科することとするべきだと思います。少なくとも最高刑としては無期懲役に処することができるようにすべきだと思いますし、故意犯については少なくとも懲役10年以上の処分しかできないぐらいに重い処罰が科されるようにするべきだと思います。当然ながら、高額な罰金や利益追徴、法人については法人資格剥奪なども併科できるようにすべきだと思います。また、過失による商品流通についても、禁固刑などの重い処罰が可能とした上で、上記のような高額な罰金、利益追徴等が可能なように、新しい法律を作るようにするべきではないかと思います。故意ではなかったというような言い逃れを防ぐためには、過失犯についても重い処罰が可能とすることが必要だと思うからです。

2008年09月27日

非弁問題の本質は消費者問題

先日、非弁事件の刑事公判を傍聴してきて、感じるところがありました。

この事件は、過払金回収の非弁事件です。過払金回収は、既にマニュアル化しているところがありますから、非弁がやりやすい案件でしょう。ところが、そんな事件で、非弁は、4割の報酬を取ったりしています。本来、弁護士に依頼すれば、弁護士が法廷で対応することができるはずなのに、それができないばかりか、直接に裁判官や相手方からの問い合わせに応じなければなりません。正当な主張も可能なものができなかったりするわけですから、実質的な被害を被るのは非弁の依頼者です。知識のない人が被害に遭うという意味では非弁問題は本質的には消費者問題だと思います。弁護士という法的なトレーニングを受けた職業人によって、法的主張が戦わされる中で、新たな判例が生まれたり、その判例から新たな法律が生まれたりするわけですから、法廷代理について、弁護士に独占させている社会的意義には重いものがあります。

この点、裁判所からの問い合わせや相手方からの攻撃に裁判所や法廷で直接に対応を強いられるという点では、司法書士が書面を作成した場合でも同じですから、地裁事件を司法書士が処理するのは、まさに非弁であると私はとらえています。

上記の刑事事件では、被害弁償すら行われないまま、次回は判決ということになってしまいました。非弁がなぜいけないのか、被告人の口からも、具体的な反省の弁は聞かれませんでした。弁護人ですら、どこまで考えて弁護されていたのか、疑問なところがありました。

非弁の横行で被害を被るのは、裁判の利用者たる国民であるということは、決して軽視されるべきではないと思います。裁判所は、地裁事件で、司法書士事務所を訴訟書類の送達場所とするような申出についても、不利益を被ることを自ら認めているわけであるからと、これを黙認する姿勢を採っているところが多いようですが、本当にそれでいいのだろうかと思います。

2008年09月29日

共立工機が注目されています

和議債権を完全履行したおそらく最後の企業となるであろうということで、私の事務所のホームページで紹介している共立工機が、日本一明るい経済新聞で取り上げられたそうです。

http://www.seiwabs.co.jp/akaruibn/keizai/sb_865.html

同社のすごいところは、然したるスポンサーもなく、誠意と熱意で再建に成功しているところです。なぜ、このことがすごいかがわかりにくいかも知れませんので、少し説明させてもらいます。通常の企業は、自己資金だけで資金繰が完全にできるところは少なくて、資金繰のためには金融機関から融資を得たりしながら経営しているわけですが、和議、今で言う民事再生をした場合には、金融機関からの融資が得られないため、資金繰を自社の売上管理だけで行わなければならなくなります。企業というものは、予想もしない資金需要が生じたりすることがありますし、ましてや再建中の企業の場合、色々な問題が生じやすいので、再建途中で資金ショートすることはよくあります。このため、スポンサーなしの再建は本当に難しいのです。私としては、そのようなスポンサーなしで再建に成功した共立工機はすごい企業だと思うわけです。

弁護士は、民事再生など、企業再建のための法的手続を支援しますが、いかに弁護士が法的な手続を提供したとしても、その企業自身が再建しようと努力しない限り、企業再生は困難です。共立工機についても、私は、和議という手続をしただけのことで、再建は、共立工機という企業体、つまり、社長を中心とした従業員の皆様の努力や取引先、債権者の皆様方のご協力があったからこそ、実現することができたわけです。このことも私が共立工機をすごい企業だと思う理由の一つです。

なお、経理等が不透明な企業が多い中、共立工機は、裁判所が関与して経理面が債権者等にオープンにされて、再建途中でも金融機関に全てを開示しながらやってきた企業ですから、金融機関からの信頼感は以前にも増して高まっています。和議の後、落ちた信用を回復するべく、地道に再建に努力した結果がようやく実を結んできたわけで、その結果を上記のように取り上げていただいていることは、本当に喜ばしいことだと思います。

私としても、共立工機の再建のような奇跡に携わることができたことは、本当にうれしいことだと思います。今後も、そんなお手伝いができたらと思って、民事再生などの企業再建の手続について、知識と経験を深めるべく、がんばっています。