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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2014/11/13

民主党の緊急提言について思うこと1

1.民主党でも提言がまとめられました。自民党や公明党による提言を検討した上で、さらに踏み込んだものになっていると評価できるように思います。
2.特に評価できる点は、①現状の把握として受験者のレベル低下が著しいということを指摘していること、②予備試験合格者と比較して法科大学院修了生の司法試験合格率の低さを率直に認めていること、③「法科大学院を中心とした法曹養成制度」を墨守し、現行制度を継続すれば、法科大学院の入学者減少がさらに続き、司法の人材不足につながりかねないとまでの危機感を表明していること、④予備試験の合格率を高めたり、⑤司法修習の終了時期を3月末にすることを提言していることです。これまでありがちだった、「司法改革」という抽象的な議論にこだわることなく、現行制度の抱える問題点を率直にとらえておられることが何よりも画期的なことだと思います。
3.少し残念なことは、司法修習生の就職難が甚だしいものとなっているという現在の法曹養成制度が抱える最大の問題について、もう少し踏み込んでいただきたかったことです。この実態調査をやっていただければ司法試験合格者を1500人とすべきだという数値の設定はご再考いただけたのではないかと思います。修習生の数が2000人程度で、一括登録できない人が600人ほどになっていて200人程度は裁判官や検察官となっているという現状の司法修習生の労働市場の需要からしますと、1500人という数字が大きすぎることは明らかですから、もう少し踏み込んだ人数設定をしていただけなかったかなと思うわけです。なお、この合格者数は、予算問題にも絡み、給費制の復活の障害になっているということにも関連していますこともありますので、数字目標の設定は慎重にしていただきたかったなと思いました。
4.現在の日本の新卒採用実態を考慮して、司法修習の終了時期を3月末とすべきだという提言をされたところは、画期的なものだと思いました。ただ、この問題を指摘していただけるのであれば、法科大学院の卒業を司法試験の受験資格としているために卒業生という無職者を必然的に生産しているという法科大学院制度の最大の欠陥について触れてほしかったと思います。これを改善して、法科大学院在学中に司法試験を受験できるようにしていただけば、大学から司法修習までをスムースに接続できるわけですから、この点は、コロンブスの卵の議論のように、簡単な発想の転換を図っていただければよかったなと思います。ご批判を受けるかも知れませんが、法科大学院制度を残すのであれば、その入学と在学生対象の統一試験を司法試験の受験資格にしていただけばそれで解決することだろうと私は思っています。もちろん、予備試験合格者とは同一条件での競争が行われるべきことは当然のことです。
5.また、司法修習生の生活実態の調査もやっていただければ、貸与制の問題点もご理解いただけたものと思います。企業ですら研修には給与を支払うのが当然とされている中、司法修習というOJTにおいて給与が支払われていないことは憲法違反の疑いが強いものと私は思いますし、本も買えないとか、食費を切り詰めているという悲惨な実態もあり、貸与という名前での借金を増やされて将来に不安を抱えて体調を崩すような修習生がいるということがご理解いただければ、給費制の復活については必ずご再考いただけるものと思います。
6.文科省との絡みや予算上の制約など、政治的に極めて複雑な事情がある中、緊急提言というとりまとめをしていただいたことは、大変ありがたいことだとは思いますが、さらに実態調査を進めていただき、司法の崩壊を防ぐための抜本的対策を発案していただければと思います。