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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2008/10/03

色覚バリアフリーのこと

白浜徹朗でググると、阪急電鉄のことがでてくるようです。赤と緑の時刻表表示が色覚障害者にはみえにくいということで人権調整の申立を行ったということが話題になったためです。この申立は、色覚バリアフリーという考えに立脚したものです。10月3日には、京都地方法務局の記者会見が行われたということで、新聞記事にもなりそうですから、おそらく、この問題に関心を持って当事務所のHPを訪問される方も多いと思いますから、色覚バリアフリーについて、お話しさせていただきます。
 色覚バリアフリーという考えは、最近では話題となることが多くなりました。これは、要するに、色覚障害者にもわかりやすい色別表示を広げようとする運動ということができます。色覚障害にもいくつかの種類があるのですが、最も多い色覚障害は、赤と緑の色の区別がつきにくいという色覚障害です。この赤緑の色覚障害者は、黄色人種の場合は男性では20人に1人いるという割合になります。つまり、日本の40人学級だとクラスに1人いるということが多いということになります。この問題がなぜ注目を集めるようになったのかということですが、端的に言って、色を使った表現が飛躍的に増える社会になってきたためだということができると思います。昔は、文字も、墨やインクによる白黒での表現が主流でした。しかし、今や、一般家庭ですら、カラープリンタによる印刷が可能な社会となっています。テレビが白黒であった時代ははるかの昔のことで、今やハイビジョンの時代です。このため、色を使ったプレゼンが広く使われるようになっています。これは、視覚に訴えてわかりやすい表現を実現しています。ところが、このように色を使ったプレゼンが色覚障害者に配慮なしに行われますと、色覚障害者にはかえってわかりにくいものとなってしまいます。教科書でよく使われるグラフとか、地図の色分けなどがわかりにくいのは切実な問題となりますし、地下鉄の路線図などに配慮がないと色覚障害者としては本当に困るのです。そこで、色覚障害者にもわかりやすい表現はどうあるべきかということで、色覚バリアフリーという考えがでてきたわけです。
 実は、日本は、極めて強固な色覚障害者差別が形成されてしまった異常な国です。色覚障害を発見するための検査表は、日本で考案されたものです。徴兵検査などにも使われたようです。この検査表を使って、色覚障害者を早期に発見するようにされただけでなく、大学などの進学でも差別をして入学させなかったり、就職で差別したりすることが当然のように行われてきました。色覚障害は、遺伝によるものなので、結婚差別にもつながることがありました。実際、私も、理系への進学をあきらめて法学部に入学した人間の1人です。相手が色覚障害者だったから婚約を破棄したという話に触れたこともあります。
 しかし、そもそも色覚障害があったとしても、あえて赤と緑を使った区別に接しない限り、日常生活で不便を感じることはほとんどありません。赤と緑の区別も全くできないというわけではありませんし、ましてや白黒の世界がみえているわけではないのです。このため、今では、進学差別はほとんどなくなり、就職差別も、特殊な業種を除いてなくなっています。小学校で広く行われていた色覚検査も行われなくなっています。学校での色覚障害者への配慮については、旧文部省が策定した「色覚問題に関する指導の手引き」があります。就職差別の禁止については、厚労省が策定した下記通達があります。
 http://www.nig.ac.jp/color/monbushou_tebiki_1.html  (指導の手引)
 http://www.jil.go.jp/kisya/kijun/20010622_01_ki/
   20010622_01_ki.html (就職差別禁止の通達)
 ただ、周囲の人にはなかなか理解を得られないこともあるので、色覚障害者の多くは、自分が色覚障害者であることを知られたくないということで、不便を感じても黙っていることが多いように思います。ところが、赤と緑は、光の三原色の一つですから、赤と緑を使った区別は、広く使われているため、ちょっとした配慮不足で困る場面もでてくることが多くなります。例えば、テレビの色ボタンでも赤と緑が使われています。最初は、色覚バリアフリーには全く配慮が欠けていたのですが、私は、この問題について電波産業会がどう考えているのか照会をしたことがあります。この照会の後、規格が改善ざれ、色調に配慮したものが使用されるようになるとともに、リモコンには漢字による表記が付加されるようになっています。東京メトロの路線図も大幅に改善されていて、円のマークの中にMなどのアルファベットが付加されるようになったり、駅番号がつけられるようになっているのも、色覚障害者への配慮です。
 公共交通機関については、平成18年6月には、高齢者・障害者等の移動円滑化の促進に関する法律、すなわちいわゆるバリアフリー新法が公布されて、同年12月には施行され、これを受けて、平成19年7月には、国土交通省によってバリアフリー整備ガイドラインが策定されています。この中で、公共交通機関の旅客施設における表示は、「色覚障害者に配慮し、見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の明度差・彩度差を確保した表示とする」ことが求められているわけです。私の申入は、このガイドラインを徹底して欲しいというものということになるわけです。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/01/010726_2/01.pdf
 今回の阪急電鉄への申入で、関西私鉄の中でも研究が行われるようになったということで、阪急電鉄としても改善を行うということですから、色覚バリアフリーの動きがさらに広がることになりました。ちょっとした改善で全く不便を感じなくなることがありますので、この色覚バリアフリーの考えが社会に広く浸透してゆけばいいなと思っています。