2008/10/09
ロースクールを淘汰すればそれでいいのでしょうか
ロースクールを淘汰する必要性について、新聞各社で社説がでています。
読売新聞の社説では、ローの乱立解消は避けて通れないとの標題で、最後は、3000人は堅持する必要があるとして、「合格者が増えないままでは、有能な人材が法曹界に進むのを敬遠するようになる。そうなれば、学生の質の維持は一層、困難になる。」としています。しかし、今の新司法試験の最大の問題は、合格したからといって就職ができるとは限らない状態にあることをあえて無視しているように思います。司法試験を受けるということは、仕事として法曹の道を歩むという進路選択をするわけですから、合格しても職がないような資格を得るだけでは、学生は進路選択として司法試験は受験しないと思います。合格さえさせればいいのだということであれば、一部のロースクールの経営者の味方をしているだけで、極めて無責任だと思います。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081005-OYT1T00668.htm
これに対し、日経新聞は、そこまで意図的な無視はしていないようですが、「法曹増員のペースダウンを主張する日本弁護士連合会は、その理由のひとつに新司法試験合格者の「質」を挙げている。しかし法科大学院が本来の姿を取り戻せば優秀な人材が集まりやすくなり「質」と「量」の両立も可能になるだろう。」として、これも、ロースクールの乱立さえなくなれば未来があるかのごとき主張になっています。しかし、最大の問題は、需給のアンバランスです。合格者数に見合うだけの社会的需要がついてきていない現状を前提としない限り、合格したけれども職があるとは限らないという状態が続くことになります。そうなると、有能な人材が、法曹界に参入しようとしなくなってしまいます。医学界では、医師国家試験に合格したけれども医師の職にはありつけないという事態は生じていないと思いますが、弁護士は単なる資格試験でいいから就職がなくても構わないということでいいのでしょうか。私は、経験上、弁護士はオンザジョブトレーニングが大事で、先輩の指導を受けながら仕事をしないと、利用者に迷惑をかけることが多くなると思っています。それが不要かのごとき机上の政策論で法曹人口論を語ることはやめていただきたいと思います。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081004AS1
K0300603102008.html