2009/10/12
法曹を志す人が減ってしまうという現状
平成21年現在は、法曹となるためには、ロースクールに入って新司法試験を受けるか、従来とおりの旧司法試験を受けるかという2つの道があります。このうち、旧司法試験については、廃止されることが決まっていて、司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年法律第138号)附則第7条第1項によると、旧司法試験は、平成22年で終わることになります(但し、正確に言うと、平成23年に、平成22年の口述試験不合格者への再試験が残ります。)。もっとも、旧試験の合格者数は、減らすことが予定されていて、平成21年は100人程度(実際の論文式の合格者数が101人)を、同22年はその前年よりも更に減少させることを一応の目安とされていますので、現状では、法曹となる道は、ロースクールを経て新司法試験に合格するというルートに事実上限定されたことになっています。
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/answer.html#20
ところが、ロースクールを受験しようとする人は確実に減っています。法科大学院適性試験を実施している大学入試センターの統計によると、同センター経由での平成21年のロースクールへの受験者数は、ついに1万人を割り込んだようです。
http://www.dnc.ac.jp/houka/21/pdf/kekka.pdf
平成20年は、1万2千人近くいたわけですから、2千人以上減少しています。
http://www.dnc.ac.jp/houka/20/pdf/kekka.pdf
ちなみにこれまでの志願者数を整理すると、以下のとおりです。まさに毎年減少しています。最初にピークが来てしまった感じです。平成21年は、平成15年と比較すると3分の1に減少してしまっています。
志願者数 受験者数
平成21年 10,282 9,360
平成20年 13,138 11,842
平成19年 15,937 14,273
平成18年 18,450 16,630
平成17年 19,859 17,798
平成16年 24,036 21,344
平成15年 31,301 28,340
ちなみに、ロースクールに入学するもう一つの道である日弁連法務研究財団による法科大学院統一適性試験についても、平成15年に志願者総数が20,043人(実受験者数18,355人)あったものが、平成21年には志願者総数は8,547人(実受験者数7,737人)に減少しています。
http://www.jlf.or.jp/tekisei/3kekka_ten.shtml
http://www.jlf.or.jp/tekisei/pdf/2009heikin.pdf
旧試験の出願者は、平成15年がピークで5万人を超えていたことを考えると、法律家になろうと思っている人が確実に減ってきているように思います。
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/dainiji_result21/091009-1/02.pdf
合格しても、就職できるかどうかもわからない資格試験では魅力に欠けることは当然でしょうし、ロースクールの学費などを考えると、受験にかかる費用などの負担が大きすぎるということが敬遠される原因になっていることは明らかでしょう。
しかしながら、法律家の仕事は、周りにいる困っている人を助けたりする身近な仕事ですし、やりがいもある仕事です。決して金儲けのためにやるような仕事ではありませんが、若い人からそっぽを向かれてしまうような魅力に欠けた仕事ではありません。ただ、間違ったアドバイスは更に被害を拡大してしまうことにつながりますから、そこそこ能力のある人がなってもらわないと国民が迷惑することも確かです。そんな中、受験生が減っているということは、担い手が減って、質の低下に更に拍車がかかるのではないかと思えてきます。
私は、社会的需要や合格後のトレーニングのあり方なども無視して、拙速に合格者を増やしたつけが回ってきているのではないかと思います。現状を今一度冷静に見直してみることが必要になってきているように思えてなりません。