2010/08/22
裁判官や検察官の中途退官者が減っているようです
裁判官や検察官の採用数があまり増えていないのではないかということについては、このブログでも何度か取り上げていましたが、採用数が増えていない割には、裁判官や検察官の数は増えているというのが統計上明らかになっています。その理由として、中途退官者が減っているということが言われていました。中途退官者が減っているので、新規採用にも予算上の限りがあるということも言われていました。ただ、実際、そのことを統計的に調べた人はいないようなので、やってみました。
裁判官や検察官の定数は、統計が示されています。修習生からの採用者については、一部は私の自己調査に依りましたが、これも統計上明らかになっています。前年度の定数に、当該年度の弁護士任官者や修習生からの採用者数を足して、当該年度の定数を引けば、退官者の数がでてきます。ただ、この退官者は、定年退官なのか中途退官なのかはわかりませんので、注意を要します。この結果をまとめたのが、下記の表です。
2000年が修習生からの採用が2度あったので、かなり不正確なようにも思いますが、裁判官の退官者は、2000年に100人を超えていたものが、漸減し、2009年は37人になっています。これだけの差が生じていることは、中途退官者が減っていると考えないと合理的な説明ができないように思います。これに対して、検察官は、なぜか2007年に退官者が増えていますが、裁判官同様、退官者の総数が減ってきているように思います。
裁判官や検察官が中途退官して何になるかと言うと、そのほとんどは弁護士だったわけです。裁判官や検察官も、修習生と接する機会が多いわけですが、そこで、修習生の就職難を直に見聞きするわけですから、弁護士の就職難を実感していることになります。もちろん、同期の弁護士からも直接に情報を入手できるルートがありますから、経営者側の弁護士からの情報入手も可能です。こう考えると、弁護士の就職難が中途退官者の減少に影響している可能性は大きいように思います。
私は、裁判官や検察官が中途退官がしにくい状況になると、官僚的な統制が容易になってしまうように思います。いつでもやめることができるという状況が確保されていれば、良心に従った判決や捜査が期待できるように思いますが、そうでない状況が続くことは、司法の独立にとってもあまり好ましくない事態を招かないのか、心配です。
裁判官数の推移表.pdf