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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2010/04/04

法曹養成問題の現状を整理してみました

法曹養成問題の現状を私なりに整理してみました。
 まず、第1に、合格者が多すぎるのではないかという問題があります。これは、就職状況が厳しくなっていて、弁護士事務所への就職ができない人がでてきていることから、既に実証されているように思います。にも関わらず合格者を増やせという話は、ロースクール関係者として、現在抱えている学生をどうするかということから来ているように思えます。ただ、就職のあてもないのに合格させようとするのは、合格後の人生のことを考えると、無責任なように思えてなりません。修習生養成に多額の国費が使われていることにも配慮が必要のように思います。
 第2に、二回試験合格者の質の問題があります。これは、司法試験合格者数を増やしたことから来る問題もありますが、何よりも、修習期間を昔の半分に短縮した上で、昔の4倍近くの修習生を実務家に預けていて、昔と比べると極めて希薄な修習しか提供できない上に、実務家教員の担い手も不足していて採用ハードルも下げていることからすれば、養成課程の構造的問題であって、修習生側を非難することはできません。ロースクールの学生も修習生も被害者的な存在ということになります。
 第3に、実務に就いた後のOJTをどうするかという問題があります。OJTの観点からは、即独が増加していることが問題です。即独に対しては、弁護士会がどれだけのことをしようとも、OJTが不十分なものとなるということは避けられないからです。即独を推奨する考え方は、OJTはあまり重視する必要はないと考えているわけではなく、現状では仕方がないと考えているのかも知れませんが、上記のとおり、養成課程に構造的問題があることを考えると、国民に対する関係では無責任なように思います。そうなると、OJTができる就職先がどの程度あるのかということを考えて合格者数を考えるべきではないかということになります。結果的には、合格者数の抑制が最も実現可能な政策のように思います。
 第4に、ロースクールに入ったけれども合格できなかった人とか、合格したけれども就職先がみつからなかったような人をどうするのかというアフターフォローの問題があるように思います。これは、入学前に、正確な情報を開示するべきであったという問題と、転職がしやすいようなシステムが採用されていないのではないかというロースクール制度と司法試験の構造的な問題があります。前者については、私のブログのようなところでしかできていなかったわけですが、今後は日弁連単位で正確な情報を提供する必要があります。合格者を集めないと経営が成り立たないロースクールに期待することはかわいそうなように思うからです。後者については、先日のブログで思いつきを提案したように、在学中に司法試験を受験することができるようにすれば、大きく改善されるように思いますし、公務員や企業などへの就職先確保について、ロースクール側がもっと努力する必要があるように思います。
 第5に、現状の二回試験合格者数と需要とのミスマッチがないか、合格者数に見合う市場がないかという問題もあります。この観点でいつも話題となるのは、地方の弁護士過疎の問題ですが、この問題は、ゼロワン地域の解消に象徴されているように、既に急速に改善されています。最大の問題は、裁判官と検察官の数が増やされないことです。特に、人口過疎地域の司法過疎問題に関しては、裁判所・検察庁の状態は全く改善されていないということで大いに問題があるように思います。また、企業の法務部や公務員への採用枠なども拡張されるよう、ロースクール側が努力する必要があるように思います。弁護士資格は、会費負担の問題がありますから、弁護士資格を持たずに就職する人もあると思いますが、そのような人への配慮は日弁連が関与する問題ではないと思うからです。また、むしろ、逆に、警戒した方がいい問題もあります。例えば、昔だったら誰もが就職させないようにしたような弁護士事務所への就職者が出現することによる問題のある弁護士の再生産とか、消費者被害を生むような企業や事件屋に雇用される弁護士が出現しないかということについては、今後注視する必要があります。
 以上、私なりに整理してみましたが、いずれにしても、この問題は机上だけで考えるべき問題ではありません。若者の人生に関わる問題であるということは自覚して論じた方がいいように思います。現状の問題を冷静にとらえていただければ、この時期に合格者増を主張しても問題が更に深刻なものになるだけではないかと思えてなりません。特に司法試験の受験資格や修習開始時期の問題については、養成を受ける側に立った現実的な提言が必要なように思います。