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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
白浜の思いつき

2015/01/01

2015 初春号 vol.11 白浜法律事務所報

平成27年の年頭にあたり

弁護士 白浜徹朗

旧年中は、大変お世話になりました。また、今年も、弁護士及び事務職員一同日々精進して参りますので、事務所所長として、ご挨拶申し上げます。

さて、昨年度は、大杉光城弁護士を迎えたことで、多少停滞感のあった事務処理がかなりスムースに進むようになり、当事務所が掲げている充実したリーガルサービスの提供という目標には少し近づくことができたように思います。
前回の事務所報でも、お知らせしましたように、当事務所としては、同種事件の集中配転による専門分野の醸成に務めています。遠山弁護士は、刑事事件では全国的に著名な弁護士です。拝野弁護士は後見事件では京都弁護士会でも中心的役割を果たしています。里内弁護士は家事事件と交通事故事件を数多く扱っています。青野弁護士は、交通事故関連の案件と労働事件を数多く取り扱っています。大杉弁護士も、私と一緒に建築関係訴訟を数多く扱っています。私は、債権回収と倒産処理や建築関係の事件を数多く扱っておりましたが、最近は、遺言処理と通行権問題に関わることが増えてきました。
まず、当事務所での遺言書に絡んだ事件処理状況について、ご紹介致します。最近、当事務所では、遺言書を取り扱うことが増えてきております。日本が高齢化社会となってきているため、全国的にも遺言書を作成される事例は増えているようです。そのような中、当事務所としては、遺言や養子縁組など遺産処理をめぐる訴訟案件などに関わった経験を生かして、将来の紛争を防止できるような複雑な内容の遺言書を作成することもありますし、何よりも後日遺言書の有効性が争われるようなことにならないようにするためのノウハウなども考案して実践も積み重ねております。税理士さんとの協働も進めておりますので、相続税にも配慮した処理もご提案し、遺言に反映するなどしております。遺言に関するブログも始めています。このため、お陰様で、遺言に関わることに関しましては、他府県からも問い合わせが来るようになってきております。ありがたいことだと思っております。
また、最近、私は、通行権をめぐる案件に関わることが多くなっています。京都は古い街ですが古いが故に長年使われている私道も多く、建築基準法第42条2項道路をめぐる紛争が数多くあるようですし、分譲土地をめぐっての通行地役権の設定に関わる紛争も多いようです。この通行権の問題は、建物が建築できない土地が発生することもあって、重大な利害対立を生じる難しい問題です。特に上記の2項道路については、一般の道路と同じような考えを持っておられる方も多いようですが、最高裁の考えは、通行をしている人には反射的利益があるに過ぎないというもので、通行の制限が多少できる場合があるとされていますので、注意が必要です。
ところで、私白浜は、今年、弁護士としては28年目に入り、弁護士会の仕事に関わることが多くなりました。昨年同様、今年も、法曹養成の問題など、弁護士会の抱える様々な問題の解決に尽力することになるものと思いますが、皆様にご迷惑をかけることのないよう、私自身も本業にがんばりますし、後進も育ててゆく所存ですので、今年もよろしくお願い申し上げます。

 

囲碁を学び、囲碁に学ぶ

弁護士 遠山大輔

2年前から囲碁を始めました。サッカーを引退するにあたり、新たに長く続けられる趣味をと考えてのことです。幼いころは将棋が好きで、囲碁には興味が持てませんでした。しかし、いまでは将棋より囲碁です。たとえは悪いですが、将棋盤が世界戦争なら、碁盤は宇宙戦争です。碁盤には無限の広がりを感じます。
囲碁は、19本×19本の線の交点(361個)に黒石と白石を交互に置き、最終的な陣地の広さを争います。黒石を持つ人(黒番)が先攻です。先攻が有利なので、ハンデとして6.5個分の陣地が白石を持つ人(白番)にプラスされます(なので、黒番は7個多く陣地を確保しないと負けです)。基本的なルールは5つほどしかないのですが、単純であるが故に奥が深いのです。
意外に思われるかもしれませんが、囲碁で大事なのはバランス感覚です。「私はここを陣地にするから、そっちはあなたにあげます」「私はここを陣地にするから、あなたは厚み(攻撃に使える強力な石の一団)を作ってね」という姿勢が大事なのです。「全部自分の陣地にしよう」「陣地も厚みも欲しい」などと強欲なことを思っていると、決して勝てません。あるプロは、このバランス感覚の必要性を伝えるため、「囲碁は心をきれいにするゲームだ」と言いました。名言だと思います。

もちろん、戦略も重要です。戦いを始めるには周到な準備が必要ですし、相手の考えていることを読んで、裏をかかなければいけません。無茶をしたら必ずとられますし、かといって慎重すぎると陣地が狭くなります。根拠となる陣地を確保しながら、自分の石が分断されないように石を進めなければ行けません。ときには必殺技が決まることもあります。置く場所が1つズレただけで形勢が逆転します。常に全体を見ながら部分を気にしなければいけません。大変です。
戦略の中でも難しく、バランス感覚よりも身につけにくいのは、「石を捨てる」という発想です。盤面の石の価値は同じではありません。ときには自分の石を捨てて(オトリにして)別の場所でのプラスをめざす必要があります。自分の石が相手にとられるとき、涼しい顔で「とらせたのだ」と思うのは…なかなかに難しい…。
この高度な戦略性は、訴訟にもきっと役立つ、はずです。少しずつ上達をめざします。

 

医療過誤訴訟について

弁護士 拝野厚志

1.当事務所の白浜所長と私が京都医療過誤弁護団という患者側の医療過誤訴訟に取り組む研究会に所属していることから、当事務所では医療過誤訴訟にも力を入れてきました。
医療過誤訴訟では患者側には「証拠の壁」と「専門的知識の壁」という二つの大きな壁があると言われております。これらの壁のために弁護士が訴訟に要する労力も相当なものになり、医療過誤訴訟を敬遠する弁護士が多いのも現実です。しかし、私は思うところあって医療過誤訴訟にも積極的に取り組んでおります。
2.まず壁の一つである「証拠の壁」とは、カルテ等の必要な資料の収集の際の障害を意味します。医療過誤訴訟では訴える患者側においてどのような過失(過ち)があったのかを明らかにして訴えなければなりません。カルテ等を入手し分析して、どうしてそのような結果が生じたのか、そこでなすべき処置は何だったのかを明らかにすることが必要となります。かつては医療機関側がカルテの開示を拒んだり改ざんすることがあったようですが、先人の努力と情報開示の流れから、現在では患者側が申請すればカルテの写しが取得できるのが通常です。
とは言っても、故意でなくても一部しか写しが交付されていなかったり、時には改ざんがなされるおそれもあります。このため、証拠保全によりカルテの保全を図ることが必要になる場合もあります。
3.「専門的知識の壁」とは専門的な情報へのアクセスの格差を意味します。
医療機関の過ちを特定するには事実経過の医学的な解明が必要となり、医学的知識が不可欠となります。このような知識については我々法律家には専門外のこととなりますので、事案に即して勉強し、また、医師らに意見を聞いたり、医療文献を調査したりして、事実経過を分析していくことになります。
医療機関側は医療機関の医師から丁寧なレクチャーを受けることが期待できます。これに対し、患者側の戦いは必要な医事論文や協力いただける専門医を探すことから始まります。
私自身もできる限り研究会に出席するなどして、最先端の知識を吸収するように努めています。また、学生時代の友人など、協力をお願いできる複数の医師に意見を仰いで事案の解明を進めていくことになります。
時には期待される調査結果とならない場合もありますが、そのような場合でも依頼者に調査結果をきちんと伝えるようにしております。患者側にとっては何よりも真実を知りたいという思いがあると考えるからです。
4.この度、医療法で定められた医療事故調査制度にも期待したいところです。しかし、上記制度は調査の対象を医療機関が「医療事故」と報告した事案に限っており、片手落ちの制度と言わざるを得ません。また、運用次第では形式だけの調査を行い、実のないものになる可能性があります。
患者側にとっては、真実を知ることを含めて訴訟という手段に頼らざるを得ない状況は続くように思われます。私も患者側弁護士として医療過誤訴訟に取り組んでいくとともに、今後も2つの壁を乗り越えるために日々刻々、進歩する医療について知識を深め、研鑽を積んでいきたいと考えております。

面会交流について

弁護士 里内 友貴子

弁護士登録から7年目となりました。昨年は、特に多数の面会交流事件に取り組みました。面会交流とは、離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うことです。
面会交流に関しては、平成24年4月より面会交流が明記された改正民法766条が施行されて子の利益を最優先すべきことが明文化され、平成25年3月28日には重要な3つの最高裁決定がなされる等実務が急速に動いています。
それなりの事情があって別居・離婚に至った父母において、お互い話し合って面会交流を進めることは、現実問題として決して簡単なことではありません。当事者同士で協議ができないときには家庭裁判所へ面会交流調停を申し立てることとなりますが、面会交流調停申立は平成15年の4203件から平成24年には9954件と約2.4倍に急増しています。また、調停で合意が成立しなければ、審判に移行することが大多数ですが、審判事件も同様急増しています。いかに当事者間での協議・調整が難しい問題であることを表しているといえるでしょう。
解決には、第三者による面会交流支援が要請されます。実際に行われる面会交流における直接的支援、それから父母に対し、将来、如何にして適切な面会交流が実現するかについて必要な情報を提供しアドバイスする支援が肝要です。現在、家庭裁判所では主として当事者助言用のDVDや絵本を活用する取組が行われています。ただ、紛争性の高い事件等ではその教育的効果には一定の限界があるようです。また、行政では、前述の民法改正を受けて厚生労働省が、面会交流支援事業を母子家庭等就業・自立支援センターの事業の一部として位置づけました。一部の地域のセンターでは支援が開始していますが、ようやくその需要を認知し始めたという段階であり、その実施地域も支援内容も不十分です。さらに、民間による面会交流支援としては、その中心的なものとして公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)があります。当職も実際にFPIC大阪ファミリー相談室を訪問してその支援状況を視察しましたが、物的人的資源の不足が課題となっていました。このように裁判所、行政、民間それぞれにおいて面会交流支援の気運の高まりはみられるものの、現在行われている支援は未だ不十分と言わざるを得ませんし、実際現場においてもそのように実感します。
そもそも面会交流の主役は子ども自身であり、その面会が子どもの福祉と成長に資するものであるかについて、子どもを中心に据えて個別に検討していくべきことが原則です。離別した父母間の感情的対立や高葛藤によってその原則が歪まされるべきではありません。そのために、当職としては、依頼者の方には必要十分な情報・法的アドバイスを提供し、適宜法的手続きを執っていくことはもちろんのこと、これまでの経験を活かしながら、必要があれば個別に実際の面会交流にも立ち会い、また相手方当事者と積極的に面談の機会を設けて事情聴取をする等して各事件個々の背景事情を丁寧に検証し、柔軟な対応・多角的な調整を行うよう心がけ、また面会交流事件特有の障害の除去に努めるようにしています。
今年も一つ一つの事件に真摯に取り組む所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

「家族信託」にも力を入れていきます!

弁護士 青野 理俊

1.家族信託とは
海外ドラマなどでは、相続にからむ場面で、信託という言葉が日常会話に出てくることがあります。この信託は「ファミリートラスト」と呼ばれ、日本語では「家族信託」と訳されます。
「信託」という言葉を聞くと、信託銀行などを連想し、家族関係には関わりない事柄だと思われるかもしれません。しかし、先ほどの家族信託は、誰にも関わりうる身近な制度であり、工夫しだいで極めて有用な制度です。
日本で家族信託が活用できるようになったのは、90年前に制定された信託法が、平成19年9月に改正されてからのことです。
その後、様々な試行錯誤を経て、本人やその家族の生活に必要な支援を行い、さらには大事な財産を確実に大切な人に引き継ぐという目的のため、実務において家族信託の活用が始まっています。
2.「家族信託」の1つ ~遺言代用信託~
活用例として、まず、相続や遺言に代わる信託(遺言代用信託)が挙げられます。
自分の財産を大切な家族に遺したい、あるいは、自分の事業を信頼おける人に確実に承継させたい、といった場面は、誰にもあり得ることです。実務的には遺言の作成が一つの対応策ですが、家族信託を活用することで、より柔軟な仕組みにすることができます。
例えば、遺言では次の世代への承継までしか定められませんが、信託を活用することで次のさらに次の世代への承継方法まで定めることが可能です。また、遺言では課税時点がその人が亡くなられる時点となり、その時の税制がどうなっているか分からないという不安がありますが、信託を活用すれば、減税対策を施しつつ課税時点を現時点として税額をはっきりさせることができます。
3.「家族信託」の1つ ~後見代用信託~
活用例として、他にも、後見制度を補いあるいは一部代替する信託(後見代用信託)が挙げられます。
もしかしたら、ご家族あるいは身近な方で、自身の財産を管理していくには不安があるといった方や、常に自分の財産から財産的支援が続けられる仕組みが必要な方がいらっしゃるかもしれません。実務的には成年後見制度あるいは任意後見制度を利用することが一つの対応策ですが、これらの制度では元手となる財産については硬直的に管理することができません。しかし、家族信託を利用することで、元手となる財産を安全に運用して増やしつつそこから支援を続けるといった柔軟な仕組みに設定することができます。
4.結びに代えて
まだまだ浸透しているとは言いがたい家族信託ですが、当職は既に活用例があります。これからも力を入れていきたいと思いますので、お気軽にご相談ください。

 

この1年で見えてきたこと

弁護士 大杉 光城

1.はじめに
弁護士2年目になりました。1年目は、初めての法律実務ということもあり、頭では分かっていても戸惑うことが多かったのですが、皆様に支えていただきまして、大過もなく一つひとつ遣り甲斐をもって執務にあたることができました。この場を借りまして、改めてお礼申し上げます。

2.問題の根本的原因を見抜く
1年間全力で執務にあたりまして強く感じたことは、「解決すべき事柄は目の前の1つだけではない」ということです。たとえば、ある刑事事件で、その根本的な原因は知的障害にあり、その障害に対して福祉のケアが行き届いていなかったというケースがありました。このような方の場合、目の前の事件を解決するのみならず、障害年金や療育手帳の取得、場合によっては生活保護の受給など、福祉につなげることこそが、その方の抱える問題を解決することになるのだと思います。このように、目の前の事件だけにとらわれず、依頼者の皆様がお困りになっている「根本的原因」を的確に見抜き、その点を含めて解決することで、ご満足いただけるように努めて参りたいと思います。
もっとも、相談内容からは直接分からない「根本的原因」を的確に見抜くためには、幅広い専門的知識が必要になります。上記ケースでいいますと、何らかの障害があると気付けたとしても、障害年金等の知識がなければ、適切なアドバイスができないことになります。
そのため、私も幅広い専門的知識を取得するように常に心掛けておりまして、新しい事案にあたる度に、法律以外の書籍も含めましてその分野の専門書等を購入し、勉強するようにしています。

3.福祉の重要性
また、私がこの1年で特に興味を持った分野は、上記の例と同じく「福祉(社会保障)」でした。現在、日本では様々な福祉制度が整備されており、病気やけが、老齢、障害、失業などといった私達の日常生活上の困難に対し、必要な援助が受けられることになっています。
しかし、上述したケースのように、如何に素晴らしい制度も適切に利用されなければ意味がありません。この1年、上記のような障害の絡む刑事事件をはじめ、高齢者介護の絡む相続事件、失業の絡む労働事件など、福祉が関係する事件を多く担当し、福祉分野に精通することの重要性を痛感しました。福祉制度は紛争を未然に防ぐ役割もありますし、事件を事後的に検証する際にもその専門的知識が必要となりますので、依頼者の皆様によりご満足いただくため、この分野の研鑽には力を入れていこうと考えています。

4.おわりに
ご依頼内容の解決はもちろん、福祉制度の紹介など付加的な部分も含めまして、皆様のご期待にお応えできますよう全力で頑張ります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

顔の責任

事務長 田村 彰吾

前回の事務所報で「高校時代の同窓会をやります」と書いてから1年が経ちました。果たして、卒業生500名と当時の先生100名の合計600名に通知を出し、昨年8月には先生9名を含む100名の出席者で同窓会を開催することができました。開催にあたっては、当所の取引先、関係者を含めたくさんの方からご協力を賜りました。この場を借りてお礼申し上げます。
同窓会に出席して周りを見てみると、まだまだ40歳を超えたばかりですが、実にいろいろな人生があったのだろうと思います。ヤケに目つきが鋭くなっている者や、高校時代は少々尖っていたのに穏やかな風貌になっている者、若く見える人、老けて見える人、若作りの人などなど、とても2時間程では語り尽くせない過去が見え隠れしていて、また次の同窓会が楽しみになりました。かく言う私もずいぶん額が広くなっていますので、他の人にどのように評されているか分からないところですが…。
「40を過ぎたら自分の顔に責任を持て」などと言います。これは40歳にもなったら親から受け継いだ顔かたちよりも自身の内面(人となりや考え方)が顔に顕れる、ということらしいです。実際、見た目の変化は遺伝的要素などもあり、どうしようもない部分もありますが、中身(表情や風貌)については自己研鑽である程度コントロールできると思います。私自身、これまでも時間や予算を工面して、できる限り研修に励んできましたが、結婚し、子供が生まれると、どうしても自分自身に掛けられる時間や予算が限定的になりがちです。
そこで、子供を寝かしつけた後の1時間、お昼休みの30分など細切れの時間を見つけては、スマートフォンやタブレットで本を読むようにしてみました。電子書籍は、本を持ち歩かなくても、いつでも読めることに加えて、頻繁に半額セールや日替わりセールを実施しており、書店で購入するより安価に入手できることがあります。また、部屋に本が山積しないという大きなメリットもあります。これで、時間、予算は元より部屋を散らかして妻に小言を言われる心配もなく、本を読めるようになりました。
年の暮れに数えてみましたところ、昨年は1年間で約50冊を読んでいました。世相を反映してか、そのほとんどがビジネス・経済書であったため少々顔つきが険しくなっているかも知れません。今年はもう少し穏やかになれる書籍も読んでみたいと思います。

2014/01/01

2014 初春号 vol.10 白浜法律事務所報

平成26年の年頭にあたり

弁護士 白浜徹朗

旧年中は、大変お世話になりました。また、今年も、弁護士及び事務職員一同日々精進して参りますので、よろしくお願い申し上げます。

さて、この度、事務所に大杉光城弁護士を新たに迎えることとなりました。事務所全体としては、取り扱う事件数や事件規模などが増大している中、弁護士の数の補充ができておりませんでした。そのため、大杉弁護士の加入によって、より充実したリーガルサービスを提供できると思っております。人員の増強だけでなく、それ以上に、本年は、当事務所の飛躍の年にしたいと思っております。
大杉弁護士は、新潟出身です。そのせいか、非常に粘り強い性格の人物です。また、法学部ではなく経済学卒ですので、その経歴を生かして、新たな視点で事件に取り組んでくれることを期待しております。趣味も豊富な人物です。コンピューターにも詳しいと聞いています。今後、フレッシュな感覚で京都の事件を取り扱ってくれるものと期待しております。

私白浜は、既に弁護士としては27年目に入ることになりました。ベテランという域に入ってきたということもあり、この数年、司法修習という法律家の養成の分野のお仕事をさせていただいておりましたが、平成25年3月末を持ちまして京都弁護士会の委員長職を退くことになりました。委員長職をする中で法曹養成について色々と思うところがあり、昨年は、「司法崩壊の危機」という本を共同執筆させていただきました。この本で指摘させていただきましたとおり、日本の法曹養成のシステムは危機的な状況となっており、いわゆる中坊イズムに基づいた改変が失策だったことが明らかになりました。今後は司法手続を利用される方々への影響も危惧される事態となってきております。このことに白浜としては強い危機感を持っておりますので、引き続き、この法曹養成システムの是正運動に取り組んでゆこうと考えております。この是正には最終的には世論の支持が必要ですから、皆様にも、関心を持っていただければと思います。

ところで、当事務所では、弁護士の数が増えてきたということもあって、同種事件の集中による得意分野の形成ということを意識した事件配転をしております。言うまでもなく、遠山弁護士は、刑事事件のスペシャリストとして全国的にも有名な弁護士の1人になっています。拝野弁護士は成年後見の分野の事件、里内弁護士は離婚や子どもの面会交流、親権等家事事件、青野弁護士は交通事故や労働事件を集中して受けてもらっています。私は、債権回収の仕事を長年扱って参りましたが、この数年は、建築や境界、通行権関係の仕事が増えておりますし、お年寄りの認知症をめぐる事件も数多く扱わせていただきました。このような事件の集中は、事件の集中に伴ってノウハウが蓄積できるなど、弁護士としての得意分野を形成することにつながり、お客様のニーズにもよりお応えできることが経験的にわかってきたように感じております。今後は、それぞれの弁護士の得意分野ということにも着目していただければ幸いです。
大杉弁護士も、今後精進して、何かの得意分野を作り上げてゆくものと思いますので、他のスタッフ共々、今後ともご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

 

 

周防監督のすごさ

弁護士 遠山大輔

皆さんも、周防監督のことはご存じだと思います。「Shall we ダンス? 」が一番の代表作でしょうか。12月に開催された京都弁護士会主催のイベント「憲法と人権~それでもえん罪は起こっている」で講演していただくにあたり、そのお人柄に触れる機会がありました。私はファンから大ファンになりましたので、今回は、そんな周防監督の「極める」すごさが分かる3つのポイントについて書きます。

1.映画「それでもボクはやってない」がすごい!
痴漢えん罪事件に巻き込まれた青年が主人公。周防監督は、たまたま目にした「痴漢事件で逆転無罪判決。被告人の友人らが犯行再現実験に協力し、無罪を証明」という新聞記事に興味を持ち、取材することになったそうです。その後、法律書を読むことはもちろん、ある事件の法廷、弁護団会議に出席し続けるなどの数年にわたる取材活動を続けられました。その結果、「刑事司法は、あまりにもひどすぎる」と感じ、この映画を撮られたそうです。
私は映画館に見に行きましたが、私が普段活動している様々な場面が極めてリアルに再現されていました。「極めて」リアルすぎて、「自分はいつもこんなに理不尽な世界で戦っているんだな」とあらためて気づかされ、上映が終わってもしばらく立ち上がれませんでした。

2. 映画「終の信託」がすごい!!
尊厳死をテーマにした映画。圧巻なのは、ラスト25分の検察官による取調ベ。検察官が延命治療を中止した医師を「殺人罪」で取り調ベる様子が息つく間もなく展開します。ちなみに医師役は周防監督の奥様である草刈民代さん。周防監督にお聞きすると、「それボク」の取材を重ねる中で、「取調ベは捜査官のストーリーを押しつける手続でしかない」ことの問題性が大きいと感じられ、この映画を撮影されたそうです。
私自身は検察官の取調ベを受けたことがありませんが、これまでにたくさんの依頼者から聞いた検察官の取調ベにおける「あるある」がちりばめられています。間違いなくリアルなはずです。もし、知人の方が検察官に呼ばれていると聞いたら、是非この「極めた」映画を見るように勧めてください。揺るぎない覚悟が持てます。

3.法制審特別部会での活躍がすごい!!!
元厚労相局長の村木さんのえん罪事件をきっかけとして、取調べの可視化を制度化する動きが本格的なものとなりました。現在は法制審の特別部会で議論が戦わされています。
しかし、えん罪を生み出す危険性の高い現在の刑事司法をよりよいものにするために始まったはずの特別部会では、取調ベの可視化は例外的なものにして、盗聴などの捜査手法を拡大しようと検察・警察出身委員がまさに「焼け太り」というべき議論を展開しています。
周防監督は、そこに委員として参加され、村木さんのえん罪事件を忘れたかのような検察・警察出身委員、あるいは学者委員と激しく議論しておられます。まさに刑事手続の取材と分析を「極めた」人物として、活躍しておられるのです。
最後まで頑張っていただき、私たちも支援を続け、取調ベの可視化が例外なく実現されることを願います。
周防監督の「極める」すごさ、おわかりいただけたでしょうか。最新作は、平成26年公開の「舞妓はレディ」。久々のエンターテインメント作品です。これまた「極めた」作品になっていると思います。是非劇場でご覧ください。

 

 

初心を思い出して

弁護士 拝野厚志

1.昨年12月より当事務所にも大杉光城弁護士が入所しました。主として主たる事務所の事件を担当することになりますが、長岡京事務所の事件を手伝ってもらうこともありますので、その節は皆様、同弁護士をよろしくお願いいたします。昨年は採用の関係で修習生の方々と接し、自分自身の修習時代を思い出したりしました。今回は司法修習の思い出などをつづってみたいと思います。

2.司法修習は現在、残念ながら貸与制(貸付を受け修習終了後に返還する)となっておりますが、私の頃はまだ給費制(公務員として給料を支給される)でした。世の中に支えてもらって修習させてもらっているとの思いがあり、少しでもたくさんのことを吸収して修習を終え、世の中に恩返しをしたいと強く思っておりました。
私は小規模庁で修習しましたので配属された修習生の数も少なく、それこそ文章の「てにをは」から添削されるなど、各修習先でたっぷりと指導していただきました。同じ配属先となった同期の修習生も意欲に溢れた者ばかりであり、互いに刺激し合いながら、修習に取り組むことができました。期間は従前の期間に比べれば短くなっておりましたが、それでも1年間、実際の事件に接し学んだことは重要なことばかりであり、弁護士として仕事に取り組むうえでの礎となっています。
今、思えば恥ずかしくなるようなことも言っていましたが、事件の方針や法的問題について自分の意見を述べたり疑問をぶつけていました。指導担当はそれに対し対等な立場で(と一方的に思っています。)、意見を返してくれました。修習先では誰もが現場を見ることの重要性を強調されており、現場を見ることができなくなったら引退の時とまで言われた弁護士の先生もおられました。現場とは場所に限らず人や物も含みますので、「現場」というより「現場主義」という方が正確かもしれません。この「現場主義」は私自身が事件に取り組むうえで絶対に外してはならないポイントとしていつも肝に命じております。

3.人と会えば心に残ることがあり、それこそが何よりの宝物と思いますので、本年は人や事件との出会いを積極的に求めていきたいと思っております。
また、これまで多くの方からいろんなことを学ばせてもらったように、私自身も何かを伝えられるように努力していきたいと思っております。
本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 

家庭に関する問題

弁護士 里内 友貴子

弁護士登録から6年目となりました。昨年は、特に家庭に関する事件をたくさん担当し、毎週のように(時には連日!一日中!)、家庭裁判所に通った一年でした。家庭裁判所は、家庭に関する事件について、法律的に白黒をつけるというのではなく、紛争の背後にある原因を探り、どのようにすれば、家庭や親族の間で起きた色々な問題が円満に解決されるのかということを第一に考えて、それぞれの事案に応じた適切妥当な措置を講じ、将来を展望した解決を図るという理念に基づいた裁判所です。
思えば、家庭生活と一言で言っても、それは色々な変化を伴う中で各人多様な家庭生活を営んでいるわけですから、常に平穏無事であるとは限らないものです。むしろ、どの家庭にも、大小の差はあれども一つや二つ、お悩み事を抱えている方が普通なのかもしれません。そんな時、以下の場面等では家庭裁判所を利用することで、よりよい解決ができる場合も多いように思いますので、ご参考にしていただければと思います。

~出生に伴って~

◦自分の子どもであるということを相手(父)に認めてほしい!

~未成年時代~

◦子どもの財産を管理する人がいない!
◦子どもに対する虐待がある!
◦子どもが非行に関わってしまった!

~夫婦に関して~

◦夫(妻)が生活費を渡してくれない!
◦親族同士の仲違いをどうにかしたい!
◦夫婦(内縁関係)のもめ事を解決したい!
◦夫(妻)の浮気相手に対して何とか言っていきたい!

~親子に関して~

◦親権者になりたい!親権者を変更したい!
◦離れて暮らす子どもと面会したい!
◦養育費を請求したい!養育費を増(減)額してほしい!
◦養子縁組を解消したい!

~高齢化に伴って~

◦判断能力が弱ってきた時の生活をどうにかしてほしい!

~相続に伴って~

◦故人の借金を引き継ぎたくない!
◦遺産相続について遺族間で取り決めしたい!
◦出てきた遺言書をきちんと取り扱ってもらいたい!

以上、代表的な場面を列挙しましたが、その他の場面についても家庭裁判所では様々な手続が用意されていますので、どうぞお気軽に弊所までお問い合わせ、ご相談いただければと思います。
私は、これまでたくさんの案件を経験する中で、特に家庭に関する事件は、法律的な観点からの判断はもちろん、それに加えて相互の感情的な対立を解消することをも求められていることを強く実感しています。このことを肝に銘じ、今年も引き続き、依頼者の皆様の気持ちに寄り添うことを大切にして、リーガルサービスを提供させていただく所存です。

 

 

権利保護保険の拡充と自戒

弁護士 青野 理俊

今、弁護士会あげて取り組まれている業務改革運動の一つに、「弁護士保険制度の更なる充実と安定した制度運用」、すなわち権利保護保険の拡大及び環境整備と紛争防止があります。
権利保護保険とは、保険の仕組みを利用して、訴訟費用、特に弁護士費用等に関する費用が保険金として支払われる保険を言います。
交通事故の分野では既に浸透してきておりまして、皆様の任意保険にも「弁護士費用特約」というオプションが付いているかと思いますが、これも権利保護保険の一つです。交通事故の任意保険の他、ご自宅の火災保険などに付けられていることがあります。
今、弁護士会あげて取り組んでいるのは、交通事故分野のみならず、もっと幅広い分野での法的トラブルに関して、弁護士費用等が保険金として支払ってもらえる保険の拡充です。
昨今では、各保険会社が「個人賠償責任保険」という保険商品が売り出されるようになっています。これは、例えばお子さん同士が遊んでいた時に友達をケガさせてしまった時など、ご自身又は家族が賠償責任を負ってしまったときの賠償金と一緒に弁護士費用等も保険金として出してもらえるというものであり、徐々に弁護士費用が保険として出してもらえる領域が広がってきています。しかし、この「個人賠償責任保険」も、ご自身又は家族が賠償責任を負ってしまった場合(要は訴えられた場合)にしか保険対象となりませんので、まだまだ権利保護保険の拡充の必要があると言えます。
このような権利保護保険が発達すれば、皆様が、相続や離婚などの家事問題や、残業代未払いや不当懲戒などの労働問題など、様々な法的トラブルを抱えてしまった場合にも、健康保険を使って医療サービスを受けるのと同じように、権利保護保険を使って法的サービスをもっと利用できるようになります。現に、日本の法体系のもととなったドイツやフランスでは権利保護保険が非常に発達しているとの報告があります。
しかし、このような権利保護保険が発達していくためには、弁護士自身の質を確保する必要があります。権利保護保険は、単に保険金が出たら良いというものではなく、その保険金で良質な法的サービスが受けられなければ意味が無いからです。
私は、京都弁護士会の業務推進委員会に所属し、その活動の中で権利保護保険の問題点の把握や拡充のための課題を検討しております。まずは、私自身の幅広い法的分野における努力と研鑽から始めたいと思っております。

 

ご挨拶と本年の抱負

弁護士 大杉 光城

はじめまして。この度、白浜法律事務所に入所することになりました大杉光城(みつしろ)と申します。
私は、新潟県新潟市で生まれ、司法修習で一昨年の暮れから京都に来るまで、ずっと新潟で過ごしてきました。そのような私ですが、司法試験合格後、ご縁があって京都で司法修習を行うことになると、すぐに京都の魅力にとりつかれ、そのまま京都に残ることになりました。美しい街並みやお茶・能などの奥深い文化、そして、京都の人々の「おもてなし」の心に触れ、とても感銘を受けたことで、この地にとどまりたいと思い至った次第です。世界に誇れる由緒と伝統のある京都で弁護士としての第一歩をスタート出来たこと、大変光栄に感じております。今後は京都を第二の故郷とし、京都の皆様のお役に立てるよう頑張ります。
私が京都に来てから始めたことの一つに、茶道(裏千家)があります。私はまだまだ初心者ではありますが、茶道は本当に奥が深く、学ぶものも大変多いと感じています。茶道では、様々な所作を身に付け、お客様をもてなす技術と精神を学びます。他方、私自身、京都の方々から様々なおもてなしを受け、大変感銘を受けました。これからは茶道を通じて学んだことを弁護士業務にも活かし、専門知識・技術の研鑽を重ねるとともに、一期一会を大切にして京都の皆様に精一杯のおもてなしをしたいと思います。
さて、私の弁護士としての業務は、今年から本格的に始まります。司法試験や司法修習を経てはおりますが、法律家としても、社会人としてもまだまだ未熟者です。しかし、未熟な私であっても皆様のお話を「聞く」ことは出来ます。また、新人ということもあり、他の弁護士には聞きにくいことも気軽に聞いていただけるところもあると思います。そこで、本年は、皆様に気持ち良く話していただけるよう「聞く技術」を身に付けることから始めようと思います。また、私は他の人との協調性を重んじる性格ですので、自分の考えを押しつけるのではなく、皆様とじっくり話し合った上で、ご一緒に最善の解決策を考えていきたいとも思っています。些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談いただければ幸いです。
お話をじっくりと聞かせていただき、どのような事件もひとつひとつ丁寧に取り組むことで、少しでも早く皆様からの信頼を得られるようになりたいと思います。誠実に、丁寧に、皆様のご期待に応えることが出来ますよう日々努力を重ねて参ります。皆様、どうぞ御指導、御鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

 

自分自身に戻る機会

事務長 田村 彰吾

昨今の法曹人口の急変については、時折報道もされておりますので、皆様もご存じかとは思いますが、司法試験制度の改変で、私たち法律事務所を取り巻く環境は年々変化しています。法曹人口の変動の可否については、所長の白浜や他の委員の先生にお任せするとして、変動の時代にも関わらず、おかげさまで弊所は大変忙しくさせていただいております。
皆様のお困りごとが私たちの仕事に繋がる部分も多いため、一概に喜ばしいことではないかも知れませんが、処理が追いつかなくなるのでは、と危惧する程にご依頼を頂くような状況となっているため、新しく大杉弁護士が加入することになりました。新しい仲間が増えることは純粋に嬉しく思っています。
ところで、弁護士ではない私も、特に去年の夏頃から、非常に忙しくさせていただいております。もちろん、私が法律相談をお受けしたり、訴訟活動を行ったりすることは出来ませんが、担当している事案の現場を見に行ったり、お打ち合わせに同席したり、毛色の違うところでは、弊所の新しいデータベースへの移行作業なども担当しており、目の回るような慌ただしさです。
そんな折、高校時代の同級生から連絡がありました。学年全体の同窓会を開催しないか、との誘いでした。懐かしい思いに駆り立てられ、二つ返事で了承したものの、どのメンバーも忙しくしており、打合せの目処が立ちません。12月初旬ようやく、呼びかけ人となる4人が集まり、どうやって開催準備をするかの打合せをしました。何しろ学年全体で500人超の大所帯でしたので卒業当時の住所に通知を送るだけでも大仕事になりそうです。結局、今年の初めに住所確認も兼ねた意向調査をすることだけを決めて、そのまま飲み会に移行したのですが、高校を卒業して20年以上も経つにも関わらず、当時、生徒会で学園祭や体育祭の準備をしていたときそのままの気分で意見を交わし、このときばかりはみんな高校生に戻って(今回はお酒も入りましたが)笑い合いました。
忙しくしていると、時折、自分を見失い、与えられた役割に押しつぶされそうになりながら働いてしまうことがあります。そんなときに、役割やしがらみに関係なく「自分自身」に戻れる機会があるというのは幸せなことかも知れません。自分自身に戻って笑い合える仲間がいることの幸せを感じつつ、今年もまた、忙しい日々を過ごしていこうと思います。

2013/01/01

2013 初春号 vol.9 白浜法律事務所報

平成25年の年頭にあたり

弁護士 白浜徹朗

昨年度より、京都弁護士会では、司法修習委員会の委員長を拝命して、若手法曹の育成のお手伝いをさせていただいております。私自身が司法修習生相手に法律実務の講義をしたり、起案と呼ばれる宿題のようなものをみたりするなどもしておりまして、自分自身の法的知識の見直しをするいい機会もいただいております。ただ、正直言いますと、弁護士会が司法修習生をお預かりする期間は2か月に過ぎませんから、この2か月で一人前の弁護士に育てるということは難しいというのが実情です。他方で、就職難は年々ひどくなる一方で、せっかく司法試験に合格したのに、正常な就職ができるのは奇跡に近いという事態に陥っていますので、実務に就いた後の現場での訓練(OJTと言います。)が不十分なままに、仕事を請け負うような弁護士も増えてきているように感じております。弁護士を利用される方にとってみれば、全くもって迷惑千万な話です。実際、私の事務所でも、おかしな訴訟を受けたということで、ご相談に来られる方が増えているように思います。
このようなことが「司法改革」が目指したものなのかということには甚だ疑問がありますが、結果的に、利用者の皆様が厳しい目で弁護士事務所を選ばざるを得ない時代が到来してきているように思います。幸いなことに、当事務所では、お客様からの苦情などもなく、ご満足いただけた方が多いようで、お客様から紹介を受けたとして来所される方も増えております。ただ、所長としては、この現状に満足することなく、更なる研鑽や事務処理の迅速化を図る必要があると考えております。
なお、長岡支部もおかげさまで3年となりますが、長岡京市や向日市の各市長様を初めとして、地域の皆様との接点も増えて参りました。京都府南西部の弁護士空白を埋めるという当事務所の果たす役割も一層重要なものとなると自覚しております。
今後ともより一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 

 

舞鶴高1女子殺害事件無罪判決
~裁判所は警察・検察のアンフェアを許さなかった!

弁護士 遠山大輔

2012年12月12日(水)、大阪高等裁判所で無罪判決をいただきました。「一審判決を破棄する。被告人は無罪。」という主文を聞いたときは、思わず両拳を握りしめてしまいました。検察官が死刑求刑をする中での無罪判決でしたから、これまでの2件の無罪判決とは違い、高揚感はあまり続かず、安心感が心を占めました。そしてすぐに、釈放される被告人の住居をどうやって確保しようかという悩みに支配されました。
この事件の捜査、公判前整理手続、公判、報道には多数の問題点があるのですが、客観証拠に関連して2点、供述証拠に関連して1点コメントしたいと思います。
まず、客観証拠に関していうと、大西秀憲弁護士(舞鶴)と、当事務所で勤務していた藤居弘之弁護士(網野)に感謝せざるを得ません。別件逮捕段階で行われた被告人宅の家宅捜索にお2人が立ち会ってビデオ撮影をしてくれました。これによって、捜査機関は、物証を被告人宅にわざと残すことができなくなりました。過去のえん罪事件、あるいはえん罪とされる事件では、捜査機関があとから物証をねつ造しています(最近でも、報告書をねつ造した事件がありました。)。これを阻止した点は、非常に大きな意味がありました。
次に、防犯ビデオの画像鑑定という客観証拠についてです。防犯ビデオの画像に映った自転車を押す人物(報道で見られた方も多いと思います。)と、被告人とが同一人物だと鑑定した専門家がいました。しかし、防犯ビデオの画像は非常に粗いもので、人物の特徴が判別できるものではありませんでした。結局この鑑定は、「印象を述べるものにすぎない」として一審判決の段階で証拠から排除されています。この専門家の鑑定がなかったら、被告人は起訴はおろか、逮捕すらされなかったかも知れません(この鑑定は、起訴当時は検察官によって「立証の柱」と位置付けられていました。)。過去のえん罪事件でも、数々の専門家がデータを改ざんし、写真を拡大し、独自の理論を振りかざして、捜査機関に都合のいい鑑定を提出してきました。専門家による客観証拠のねつ造は、大きなえん罪の原因となります。もはや、「良心なき専門家は、刑事手続に関わらないでいただきたい」と強く思います。
最後に、供述証拠についてです。違法・不当な取調べによって得られた虚偽自白も、えん罪の大きな原因となります。また、目撃者の供述が、勘違いや思い込み、捜査機関の誘導、あるいは意図によってねじ曲げられる場合も、えん罪が起こりえます。本件では、被告人は自白はしていませんが、被害者の遺留品について自ら供述したとされていました。この供述から、被告人は被害者の持ち物を知っていた、それは犯人だからだ、と一審判決は推認しました。有罪判決の大きな根拠としたのです。しかしながら、この供述証拠は、取調官の示唆と誘導によって、被害者の遺留品に合致するように作成されたものだったのです。実際、遺留品に合致しないものは調書に書かれず、合致するものだけが調書に書かれていきました。目撃者の供述も、事情聴取を繰り返すうちに、被告人に合致しない特徴は消えていき、被告人に合致する特徴が強調される、というように移り変わっていきました。両方とも、作成される経過が非常に不透明で、アンフェアと評価できるものだったのです。高裁判決は、この両方について信用できないと判断しました。捜査機関によって密室で作り上げたられた供述にNo!を突き付けたのです。
市民が裁判員として刑事裁判に関わる今、裁判所によって模範となる判断が示されたと感じています。この無罪判決が確定するまで、さらに頑張っていきたいと思います。

 

 

なぜか落語にはまっています

弁護士 拝野厚志

1.古典落語にハマっています。
つい先日まで「落語」など見向きもしておりませんでした。
大学時代、ゼミの自己紹介で、司法試験にさっさと合格したT君が「落語が好きで、講義が落語そのもののM先生のゼミに入りました」と言っているを聞いて、「落語が好きって若いのに変な奴やなあ」と思っていたくらいでした。その後もテレビで落語をやっていても別のチャンネルに変え、落語をネタにした「タイガー&ドラゴン」は面白く見ておりましたが、落語そのものにハマることはありませんでした。ところが、つい半年ほど前にひょんなことから古今亭志ん朝師匠の落語(「厩火事」)を聞く機会があり(もちろん映像でですが)、古典落語の世界に引き込まれてしまいました。
やはり物事には時期やタイミングというものがあるようです。それなりの年齢を重ねて私も落語に描かれた人情や機微に共感できるようになったということでしょうか。以来、古典落語にすっかりハマってしまいました。
2.松喬師匠にハマっています。
現在、夢中になっているのは、笑福亭松喬師匠です。笑福亭松鶴師匠の弟子にあたる方で、上方落語の第一人者です。テレビや新聞でご存じの方も多いかもしれませんが、松喬師匠は現在、抗ガン剤による治療を受けながら、高座にあがっておられます。
しかし、高座では病気をネタにこそすれ、苦労は微塵も感じさせず、客席はご病気のことですら、爆笑に次ぐ爆笑に包まれます。
寄席に行ったこともありませんでしたが、師匠の高座が聴きたくて、寄席にも行ってきました。生で見る寄席の面白さは格別です。至近距離で演者の息づかいまで聞こえ、テレビのような編集もなく、何事も現場に勝るものはないと変に納得してしまいました。
私には芸について語れるような蘊蓄はありませんが、古典落語を十分楽しむことができます。一度、聞いてみてください。寄席にも足を運んでみてください。元気になること請け合いです。そして、松喬師匠、これからも素晴らしい高座をきかせてください。

 

 

交通事故の損害賠償額

弁護士 里内 友貴子

弁護士になって5年目となりました。昨年より、日弁連交通事故相談センター京都支部の示談あっせん担当弁護士として活動しています。また、これまでも交通事故案件の代理人を多数担当してきました。車社会の発展に伴い、交通事故は、ごく普通に日常生活を過ごしている中でも巻き込まれる可能性のある事件です。そこで、万が一の時に備えて、以下のことを知っておいていただければと思います。
交通事故の損害賠償には算定基準が大きく3つ、それぞれ賠償額の低い順から自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準があります。同じ事故でも適用される基準によって、被害者が受け取る損害賠償額が異なるということです。
交通事故発生後、損害賠償に関する示談交渉が始まります。その中で、加害者は任意保険に加入していて示談交渉をその任意保険会社に一任するケースが多いわけですが、一任された任意保険会社は被害者に対して、任意保険基準で算出した損害賠償額を提示しますから、その提示額は裁判所基準に比べると通常低くなります。この点、示談交渉中、任意保険会社としては支払う損害賠償額を抑えるために裁判所基準に言及しないこともあり、被害者が裁判所基準自体を知らないまま、任意保険基準の損害賠償額で示談成立に至るというケースが散見されています。
しかし、裁判所基準は、過去の判例等を集積した結果ですから、訴訟に至れば被害者は裁判所基準が適用された損害賠償額を受け取ることになりますし、訴訟に至る前の示談交渉の段階でも訴訟を見据えた交渉を行うことで裁判所基準に近い損害賠償額で示談が成立することもあります。
同じ事故について複数の基準があること自体、奇異なように思いますが、このような実情を知っておいていただき、不幸にも交通事故に遭われた際には、一度ご相談いただければと思います。なお、ご自身やご家族が加入されている保険で弁護士費用特約が利用できる場合は、保険で弁護士費用がカバーできますので、是非お確かめ下さい。
最後になりましたが、昨年、フジテレビのドラマ「リーガル・ハイ」の取材を受け、同ホームページ内「リアル!黛真知子を探せ!?現役女性弁護士が想うこと・・」のコーナーNO.19に小職が紹介されました。ご笑覧いただければ幸いです。

 

 

委員会活動として法教育に力を入れています

弁護士 青野 理俊

1.委員会活動について
弁護士法の第1条には、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と規定されています。
そこで、各弁護士は、依頼を受けている事件を誠実に職務を遂行する傍ら、弁護士会に設置されている様々な委員会に所属し、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力すべく、活動しています。
2.法教育委員会の活動平成20年3月、文部科学省の新学習指導要領の中に、「法教育」が正式に加えられました。法教育とは、子ども達に、現実社会の中で考える力、生きる力をはぐくむ重要な教育です。そこで、京都弁護士会にも法教育委員会が設置され、できるだけ多くの子ども達に、法の理念、法の意義、基本的人権の価値などを授業で伝えるべく、日々研鑽を積んでいるところです。
私も、法教育に携わるべく、法教育委員会に所属し、数多くの中学、高校で講義を行い、教員の先生方と法教育について研究会を開催したりしています。
3.高校生模擬裁判選手権の開催
平成24年での法教育活動の中で特に印象が強かったのが、高校生模擬裁判選手権です。
この大会は、一つの事件を素材に、法律実務家の支援を受けながら、参加各校が検察チームと弁護チームを組織し、高校生自身の発想で争点を発見・整理し、模擬法廷で冒頭陳述、尋問、論告弁論を行うというものです。
京都府で参加したのは京都教育大学附属高等学校と立命館宇治高等学校で、2校とも第1回から参加し続け、ここ数年1位2位を争っている強豪校です。私は、そのうち立命館宇治の支援をすることになりました。
今年の題材は特に面白いものでした。起訴罪名は傷害。被告人はとある看護大学に通う女の子で、被害者は被告人に恋心を抱く青年。被告人が彼氏と上手くいっていないと相談を受けていた被害者は、連絡が取れなくなった被告人を心配して被告人のもとを訪れる。ちょうど彼氏の部屋にいた被告人は、唐突にやってきた被害者を外へ連れ出すが、口論の末、被害者を突き飛ばして重傷を負わせてしまう。ここまでは争いがないものの、被告人は、被害者から首を絞められたとして正当防衛を主張する・・・
この題材を見て、高校生には難しい事件ではと思われるかも知れません。しかし、高校生を侮ってはいけません。「他人に相談するとき、女性は共感を、男性は解決を求めるもの。今回の事件は、その二つの考え方の違いが生んだ悲しい事件なのではないか。」と高校生が見事に分析をし、この視点で弁論を行った立命館宇治高校が優勝しました。
4.結び
法教育は、子ども達に、現実社会の中で考える力、生きる力をはぐくむ重要な教育です。これからも、事件を誠実に職務を遂行する傍ら、法教育活動に邁進していきたいと思います。

 

 

第2のセーフティーネット

事務長 田村 彰吾

不景気と言われるようになってもうずいぶん経ちますが、景気が持ち直す気配はありません。当所でも、そういった不景気に飲み込まれた会社の倒産処理を担当することもしばしばあり、特に最近は、従業員に給料も払えずに倒産してしまうケースも散見されます。
ところで、倒産による急な解雇などで生活が急変した際、十分な蓄えがなく、給与が貰えないとき、あなたはどうしますか。安易に消費者金融など高利の融資を受けてしまうと、ただでさえ収入の目処が立たないのに重い金利負担に苦しむことになります。
倒産手続では労働者健康福祉機構が未払の給与や退職金の一部を立替て支払ってくれますが、支給までに3か月から半年程度は掛かります。また失業保険も、本来なら待機期間もほとんどなく支給されますが、そもそも雇用保険に加入していない場合や、加入していても離職票の発行が円滑に行われない場合もあり、なかなか思うように行きません。生活保護は、判断が非常に厳しく、相談してもなかなか親身に相談に乗って貰えないこともあるようです。では、どうすれば当面の生活費を確保できるのでしょうか。
実は、住所地を管理する社会福祉協議会や市町村などが生活支援事業を行っています。社会福祉協議会では原則無利子での貸付事業を、市町村は住宅資金の援助(給付)を行っています。いずれも厚生労働省が設けた制度で、就職意欲があるなど生活の再建を前提とした支援制度ですが、早ければ1か月程度でまとまった生活資金を融通してくれますので、急に職を失うなどしたときには非常に有効な制度だと思います。
なお、これらの申込窓口は社会福祉協議会や市町村の各窓口ですが、意外にもハローワークにも資料が常備され、相談に乗ってくれます。いずれも就職意欲のある離職者を対象としているため、必要とする人の目に触れ易い施設ではあると思いますが余り知られていないようです。
もしもの際には補助的なセーフティネットとしてこういった制度があることも覚えておいてください。

2012/01/01

2012 初春号 vol.8 白浜法律事務所報

仲冬のご挨拶
厳しい冬が駆け足でやって来る季節、事務所報第8号をお届けします。
弊所では、皆様により身近に法律事務所を利用していただくための業務改革を進めています。中でも遺言作成(遺言執行)業務や競売相談業務に注力し、専門のホームページなどを立ち上げ情報発信もしておりますので、どうぞご期待ください。なお、専門ホームページは、事務所ホームページからご覧いただくことができますので、どうぞ、ご覧ください。

 

これからも身近な弁護士であり続けたいということ

弁護士 白浜徹朗

実は、全国には、弁護士がいない地域が沢山あります。長岡京を初めとする乙訓地域は、そのような地域の一つだったわけです。この点、裁判所があるところには、弁護士事務所があることが多かったわけですが、よく知られているゼロワン地域というところは、裁判所があるけれども、弁護士がいないか、いてもお一人というところでした。このような地域が、つい15年ほど前には、全国に沢山あったのですが、日弁連を中心とした弁護士会の取組によって、激減し、今では、ほとんどなくなっています。このため、今後は、裁判所が身近にない地域に弁護士がいかに進出するかということが課題となるだろうと思っています。裁判所がそばにあるからトラブルが発生するというわけではなく、人が住んでいる限りどこでもトラブルや紛争は発生するわけですから、身近なところに弁護士がいて相談できるということが理想だと思うからです。
このことを理想に掲げて、当事務所が長岡京に支所を設けてから2年が経ちました。市民の皆様にも、長岡京にも弁護士事務所があるということがわかってもらいつつあるのかなと感じています。近くに弁護士事務所があってよかったということを言っていただけると本当にうれしく思います。
この地域に事務所を構えたことで、乙訓地域のことにも詳しくなりました。読めない地名はほぼなくなりましたし、位置もだいたいわかるようになってきました。長岡京市だけでなく、京都市の南区や伏見区の西部、水瀬にも詳しくなりました。また、弁護士会を通じてではありますが、公益代表として行政委員も拝命するなどしていますから、行政の皆様との接点も増えてきたように思います。ブログにも、地域のことを書いたりしていますが、そのことで少しでも地域のお役に立てればと思っています。

乙訓地域

以上の次第で、私は、今後も、長岡京、乙訓地区のためにがんばろうとは思っていますが、本所に所長不在という事態にしたままということもどうかということもありますので、2年という区切りをもって、所長を交替することに致しました。長岡京事務所としては、人材も育ち、かなり落ち着いてきたように思うからです。つまり私、白浜は、籍を上京区の本所に戻して、後任の拝野弁護士に長岡京事務所の所長職は譲ることにさせていただきました。  しかし、今後も、時間の許す限り、長岡京事務所にでかけて、相談などを受ける予定をしておりますので、拝野所長共々、長岡京事務所をよろしくお願い申し上げます。

 

命の重み

弁護士 遠山大輔

昨年は、命の重みや意味を深く考えさせられました。東日本大震災では、家族を失いながらも懸命に生きる人びとに、命のはかなさと尊さを知りました。主任弁護人を務めた舞鶴女子高生殺害事件は、弁護人人生で初めての死刑求刑事件となりました。求刑をする検察官のペーパーを持つ手が震えていたのが印象的でした(判決は無期懲役となり、現在控訴審が行われています)。11月には、死刑をテーマにしたシンポジウムに責任者としてかかわりました。死刑制度についての情報を多角的に提供しようと、立命館宇治高校の生徒たちといろんな調査をしました。元刑務官や宗教教誨師(死刑囚の生活や死刑執行の流れなどを聞きました)、元死刑囚(再審によって無実が明らかとなった方の言葉は重かったです)、日本の大学教授(犯罪統計や刑事政策についての深い考察にしびれました)、ノルウェーの犯罪学者(囚人に優しい刑事政策の成功例を知りました)、オーストリアの法医学者(大阪のパチンコ店放火事件裁判で証人となり、絞首刑の残虐性を説明された方)、被害者遺族(弟さんを保険金目的で殺害した犯人の死刑執行に反対された方と、息子さんを無免許飲酒無謀運転の車による事故によって亡くされた後、刑罰が軽すぎるとして危険運転致死傷罪の創設のための運動をされた方)に話を聞きました。弁護士と名乗っていたのが恥ずかしいくらい知らないことだらけでした。1つ実感したのは、皆さんが刑罰や死刑や裁判の問題を通して「よりよい社会」を実現しようとしておられることでした。死刑の問題は刑罰の問題であり、刑罰の問題は社会のあり方の問題だということがよく分かりました。

釣り 振り返ってみると、自分の弁護士としての活動も、小さいながらも社会のあり方にかかわるのだと思います。本年は、自分の活動の社会における意味についても考えながら、これまで以上に依頼者の皆さまのために奮闘したいと思いますので、よろしくお願い致します。

 

 

成年後見関連の最近の動き

弁護士 拝野厚志

1.選挙権制限違憲無効訴訟
現在、全国の裁判所で成年後見を受けているために選挙権が奪われたことに関して、違憲訴訟が提起されており、私も京都訴訟の弁護団に参加しております。
皆さんは成年後見というと、意識不明の状態の方の問題と思われるかもしれませんが、成年後見が付されるのは、財産を管理する能力がないと裁判所が判断した場合です。
他のことは十分判断できても、計算が全くでないなどの事情により、お金の管理が不可能な場合には、成年後見に付される場合もあります。原告となられている方は新聞を読んだり、ニュースを見たりして、政治のことにも強い関心をもっておられます。この国に住み、この国の統治を受けている以上、選挙を通じて自分の意見や考えを反映することが認められなければなりません。
諸外国の例を見ても、成年後見に該当する制度に付されていても、選挙権を一律に奪うことはしていない例もあり、成年後見制度と選挙権の停止が関連するものでないことを示しています。
私は、原告の方に会って話をし、なぜこの方に選挙権が認められていないのか、不思議に思うとともに、人が区別されてはならず、正当な理由もないのに権利が制約されたり差別されたりしてはならないと強く感じました。
訴訟は始まったばかりで、今後、本格的な法律論が展開されていくことになると思いますが、原告の方の思いを出発点に法律論を主張していくのが、私たち弁護士の役割だと思っています。

2.成年後見制度支援信託
平成24年2月より、「成年後見制度支援信託」が導入されます。
簡単に言えば、成年後見に付された方の財産を信託銀行に全て預けて、生活費等の必要なものだけが交付されるというものです。導入の背景には、親族後見人が本人の財産を使い込むなどの事例が急増していることがあります。
しかし、この制度には、本人の意向を無視し、本人の状況に応じた資産運用ができなくなる、家裁による監督が不十分になるなど、多くの問題点も含んでおります。今後、家裁との協議が予定されており、私も協議に参加いたしますが、ふさわしい事例にのみ適用されるように求めていかねばなりません。

3.長岡京支店への赴任
昨年、12月1日より、長岡京支店に赴任しております。入所してから4年の間、京都事務所では色々な方々にお世話になり、本当にありがとうございました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。今後は、本所での経験を活かして、長岡京事務所の業務を通じて、基本的人権の擁護と社会正義の実現のために力を尽くしていきたいと決意しております。

夫婦間のトラブル

弁護士 里内 友貴子(旧姓 細川)

弁護士になって4年目となりました。日々、多種多様な案件を担当しております。昨年は女性の支援施設で法律相談を担当したこともあり、夫婦・男女間のトラブルに関する相談を多くお受けしました。その中で、離婚に関することは、広く知られているように見えて、実際は誤解を持たれていることもあるように思いました。
そこで、離婚の手続などについてご説明させていただきます。
離婚は、離婚届の提出で成立します。夫婦間で話し合いをして、協議がまとまればよいのです(協議離婚)。しかし、協議がまとまらない場合は、一方が家庭裁判所に調停を申し立てることになります。調停では、調停委員を交えて話し合い、合意に至れば離婚が成立することになります(調停離婚)。さらに、調停も成立しない場合は、改めて一方が家庭裁判所に訴訟を申し立てる必要があります。審理の結果、離婚を認める判決が出されて確定すれば、離婚が成立することになります(裁判離婚)。
上記の協議や審理の中では、離婚原因の有無、財産分与の方法、慰謝料、離婚時年金分割、そして夫婦間に未成年の子がいる場合は親権者の指定や養育費及び面接交渉の内容等が争点となります。
このような離婚手続は、裁判も含めて、弁護士に依頼することなく、全て当事者本人で行うことが可能です。しかし、各争点について、ご自身の主張に関して、長い夫婦生活の出来事のうちどれが有利な事情となり得、どのような資料が必要となるのか、相手方からの提示条件は果たして合理的なものなのか等、判断に迷われる場合が必ず出て来ます。
また、日々の生活と並行して、相手方と交渉したり裁判手続を行ったりすることは、精神的な負担やストレスとなり、時には体調を崩されたりすることもあります。したがって、ご自身の具体的な事情に沿って随時法的アドバイスを得たり、手続の代理を依頼できたりすることが、弁護士に相談・委任するメリットとなります。
私は、これまで離婚事件を多数担当させていただきましたが、好むと好まざるとに拘らず、ご夫婦の間で離婚問題が発生した場合、ご夫婦にとってそれは大きな節目の一つとなります。ご相談いただく方にとってよりよい解決となるよう、これからも弁護士として全面的にサポートさせていただければと思います。

 

長岡京ガラシャ祭に参加しました!

弁護士 青野 理俊

当事務所の長岡京事務所は、昨年の12月で設立してから2年が経ちました。身近な法律サービスの提供を理念として支所を設立し、長岡京市で弁護士として頑張って参りましたが、当事務所をご利用頂いた多くの方々から、「どうもありがとうございました」と言って頂けました。長岡京市に支所を出して本当に良かったと思う二年間でした。
特に、二年目であった昨年、私は、長岡京市の地域社会を支える者の一人として長岡京市商工会の会員となり、11月に行われた長岡京ガラシャ祭のお手伝いをさせて頂きました。
長岡京ガラシャ祭は、細川氏に嫁ぐことになった明智光秀の娘「玉」の輿入れの様子を再現するお祭りです。「玉」は、父の明智光秀の謀反など中世の戦乱の歴史の渦に巻き込まれながらも、キリスト教に心の平安を求め、洗礼を受けて「細川ガラシャ」と呼ばれるようになります。その細川ガラシャの婚礼の儀が行われたのが勝竜寺城であり、長岡京市は、平成4年に城跡を勝竜寺城公園として復興し、その年から勝竜寺城公園をメインステージとして長岡京ガラシャ祭は始まりました。
このように地域の歴史と社会に深く関わる長岡京ガラシャ祭ですが、私は、長岡京市商工会青年部の皆さんと一緒に、鳴子踊りを踊って祭りを盛り上げました。全国区の踊りである「よっちょれ」の他、長岡京市商工会青年部独自の「長岡京リミックス」をみんなで披露いたしました。祭り当日も大変楽しかったですが、青年部のみならず地元の小中学生と一緒に鳴子踊りの練習をした準備期間がとても楽しかったです。

長岡京ガラシャ祭 長岡京商工会青年部は、様々な職種の方が所属しておられ、大変勉強になりますし、とても居心地のよい団体です。
来年から私は長岡京商工会青年部の常任委員となる予定ですので、これからも長岡京市の地域社会を支える者の一人として頑張りたいと思います。

 

土曜なんでも相談にて

事務長 田村 彰吾

昨年6月より、長岡京事務所に於いて、乙訓地区にお住まい又はお勤めの方を対象に「土曜なんでも相談」と題して無料相談を行っております。ホームページ上でのみで告知しており、導入して半年が経過しましたが、意外と盛況で驚いています。
ところで、先日相談のお申込のあった方は、ビルのオーナーで、破産管財人とのトラブルを抱えている、との相談内容でした。お名前とメールアドレスから思い当たる節があって、調べてみると、当所が破産申立をした会社が入居していたビルのオーナーでした。
この方は、以前に当所が破産管財人に選任された事件でも対応していただいたビルのオーナーで、今回申立前に退去のご連絡とご挨拶に行ったときも私どもの顔を覚えていてくださった方でした。
当所が代理人として破産申立をした会社は、既に破産決定が裁判所から下付され、既になんらの権限も有していないので、この方と当所とは、厳密に言えば直接の関係はないのですが、破産会社の代理人である当所とその会社が入居していたビルのオーナーとの関係は、利害が対立する可能性のある(又は、対立関係にあるように見られる)関係となりますので申立担当の遠山弁護士から丁重にお断りをさせていただきました。ですがそのとき「白浜先生のところではいつも良く対応していただいていたので、何かあったときはご相談しようと思って」申し込んだとおっしゃっていたそうです。
これまでのお付き合いとしては、破産管財人と破産債権者として、つまり対立当事者としてしかなかった方からこのようなお話をいただけるとは、ありがたい話です。