京都で弁護士・法律相談ならお任せください。

弁護士法人 白浜法律事務所

0752233444
0752233444
白浜の思いつき
白浜の思いつき

2013/11/27

ブラック企業ビジネス

久しぶりのブログです。最近、忙しいところに怪我もしたりして書く余裕がありませんでした。
さて、標記の表題の書籍を今野晴貴という人が執筆されていて(朝日新書)、この本の中に、私のブログが引用されているということで、書籍を送っていただきました。
参考になる本だと思います。主には、現在社会問題となっているブラック企業のことが紹介されていますが、その中で、ブラック士業ということでブラック企業の手助けをするような弁護士が増えてきていることが紹介されています。つまり、「司法改革」という名の下での弁護士急増政策が失敗している、というか、社会的な問題を発生させているということが紹介されているわけです。私のブログの引用は、若手の弁護士の廃業が増えているというデータの紹介でしたが、この本に紹介されているブラック士業と評価されて当然のような弁護士は、私自身も最近よく目にするようになってきていますから、この本に書かれていることは、誇張でもなんでもなく、むしろ、この本に書かれている以上に、弁護士業界の劣化は進んでいます。これは、極めて由々しき事態です。ブラック士業と評価されるような弁護士が就職難につけ込んで更に弁護士を雇い入れたり、即独などでOJTの機会に恵まれなかった弁護士がブラックな弁護士のやり方に接してそれが当たり前かのように思ってしまうなどして、ブラック弁護士の再生産が始まりつつあるように思うからです。
しかしながら、弁護士という仕事は、正義も重んじなければなりません。依頼者の言うことが間違っていたり、違法なことがあれば正す必要もあります。言うのは簡単ですが、結構大変な仕事です。従業員の研修をすることを進言したり、問題がある従業員の言動をみつけた場合には経営者に対応を求めたりなどもせねばなりません。そのことによって、経営者から暴言を受けたりすることもあります。それでもなかなか暴走を阻止することができなかったりもします。場合によっては、顧問自体を自主的に辞退することもせねばなりません。それでも、結果的に顧問先が暴走すれば、言われのない非難を同業者から受けたりすることもあります。
このように、弁護士たるものは、貧してでも正義を守らなければならないということは、まさにOJTとして先輩弁護士から引き継がれていたわけで、それによって日本社会のモラルの維持にも貢献できていたはずなのですが、過剰な弁護士人口の増加によって、その貴重なOJTの機会が失われつつあるわけです。この本に紹介されているように、その悪影響は既に発生してきているということになります。一部のマスコミは、そのことを無視して、未だに急増政策を支持するような論調を維持していますが、修習生や若手弁護士の現状の取材ができていないように思います。
なお、この本に引用されている弁護士の自主廃業のデータですが、残念ながら、更に悪化しています。具体的に言いますと、今年の1月から11月までの自由と正義に掲載された弁護士の廃業数は309名となり、昨年1年間での数字である294名を超えています。このうち3万番を超える人の廃業数は206名ですから、若手の弁護士の廃業が増えているのは統計的に裏付けられています。但し、私の独自調査によると、実際に大きく人数が落ち込んでいるのは、60期と61期ぐらいで(私がチェックした最高数が60期が2094名で61期は2121名でしたが、現状では60期は2059名と35名の減少、61期は2084名と37名の減少に留まっています。)、若い期の弁護士数が数百名減っているということにはなっていませんので、現実には、登録してしばらくしてから退会し、また登録するということを繰り返している人がかなりの数となっているようです。弁護士としての登録には登録料も必要ですから、登録の繰り返しは生活に直結する問題だと思います。このようにして、かなり厳しい経済環境に置かれた弁護士が増えているのではないかということが危惧されます。
いい本だと思いますので、皆さん、お読みいただきたいと思います。

2013/08/09

就職に対する修習生の意識の変化について思うこと

 4月からは修習委員長を外れたので、3月までよりは細かな情報は入りにくくはなっているが、就職支援の委員会に入ったりもしている関係で、修習生の就職問題に絡んだ情報については、まだまだ触れる機会が多い。
 ざっくりとした感想だが、数年前だと、「こんなに就職が大変だとは思ってもみなかった」ということを述べる修習生がかなりいたような印象があったが、最近では、そんな修習生はまずいないので、司法試験に合格したという資格を持ったということだけでは弁護士事務所にまともに就職できるのは奇跡に近いことなのだということを理解している修習生が多くなっているように思う。しかし、数年前までなら、地方にも積極的にでかけて就職を確保するような人がかなりいたのに、最近では、履歴書の送付すらあまりやっていないような消極的姿勢の修習生も目立つようになってきたようにも感じる。一種のあきらめムードがあるような気がするのである。つい最近耳にした話では、人口過疎地域で募集があっても応募する修習生がほとんどいなかったり、企業からの募集があっても応募する修習生が少ないとか、当該地域での評価が低い事務所(ブラック事務所などと言われているようである。)には、たとえ給与水準が高くても応募する修習生すらいない(つまり、危ない事務所であってもとりあえず働いてみて弁護士経験積んだら独立したらいいんやというような冒険心のある人はいない。)というような状況になっているようである(誤解されると困るので、申し添えておきますが、私としてはブラック事務所にはいかない方がいいとは思っているので、ブラック事務所への就職を推奨しているわけではありません。)。
 このような消極的な姿勢の修習生が増えてきた背景にはロースクール入学者の変質があるのではないかという仮説を私は立てている。就職氷河期が続いていた中でもかなり大学生の就職環境は改善してきている今のご時世に、就職もできないようなロースクールにわざわざ入学するのは、自分の希望に添うような就職先がみつからなかったので、就職時期を少し先延ばしにしようとしてとりあえずロースクールでも籍を置いておこうかなということで入学した人がかなりいるのではないかという懸念である。実際、有名私学のロースクールで実務家教員として指導した経験のある弁護士からはこのような動機であまり目的意識もないままに入学してきている学生が増えているということを聞いたことがある。このような消極的な意識でロースクールに入って司法試験に合格したとしても、絶対に弁護士になろうというような意識になることもなく、漫然と時間が流れるのを待つというような人がでてくるのは自然なことであろう。ただ、そうなると、法曹界の変質は更に進行することになるのだろう。それは、利用者のためにはあまりよくない方向に流れてゆくことになるのではないかと懸念するところがある。
 ところで、今年は、サマクラはやらないことにした。代わりにロースクール卒業生向けにアルバイトを募集してみたが、1人も応募者がいない。サマクラではないけれども、アルバイトとして弁護士事務所の仕事に触れるだけでも、いいきっかけになるのではないかと思うのだが、就職に関係ないのならやめておこうということなのかも知れない。しかし、これも、今の修習生にみられる消極的姿勢の現れのように思えてならない。判例の検索と分析などロースクール卒業生にならば期待できる仕事もあるのだが、自分でやらねばならないとなると、今年の夏は、あまりゆっくりできそうもない。この暑い夏を土日も事務所で仕事しながらやり過ごすことになりそうである。

2013/06/24

請求退会者の増加傾向を示すデータ

 弁護士として登録できる時期に登録しない人が増えているということについては、日弁連でも統計データを確認して公表するようになっておりますが、請求退会者の増加傾向などについてまとめているのは私だけということのようですから、順次情報提供してゆこうと思っております。
 さて、毎年、自由と正義の6月号には、その年の3月中(要するに3月末まで)に退会された方が掲載されます。このため、私が統計を取り始めてからのデータによると、6月号は最も請求退会者が多い自由と正義ということになっています。平成20年6月号では合計47名、21年が38名、22年が36名、23年が41名、24年が46名、今年の25年は59名となっておりますので、この数年で6月号に掲載される請求退会者は急増しています。ちなみに、6月号までの累計では、平成20年が114名、21年が114名、22年が116名、23年が118名、24年が151名、今年の25年は163名となっています。なお、急増政策が実施されるまでは、年間の請求退会者は50名程度でしたから、1月で昔の1年間分の人以上が退会していることになりますし、その増加傾向は、この2年ほどで加速しているように思います。
 ちなみに、今年の年初の60期の弁護士人口は、現行と新を合わせて2,072名だったのが、平成25年6月22日現在で2,068名と4名の減少で、61期は2,108名が2,098名と10名の減少、62期だけは2,093名のまま増減なし、63期は1,918名が1,902名と16名の減少、64期は1,921名が1,917名と4名の減少です。
 また、65期はまだ登録可能日から半年程度なわけなので、年初の人口が1,371名だったものが1,841名と470名増えていますが、たまたま平成24年6月14日に私が確認していた64期の人口は1,893名でしたから、昨年と比較すると弁護士人口が減ってきていることがわかります。
 なお、二回試験の合格者数から裁判官や検察官への任官者を除いた数字は、60期が2,145名、61期が2,148名、62期が2,162名、63期が1,972名、64期が1,983名、65期は1,916名です。この数字と比較した現在の弁護士人口の比率は、60期は96.41%、61期は97.67%、62期は96.81%、63期は96.45%、64期は96.67%、65期は96.09%となっています。
 なお、私のチェックでは、64期のピークは平成25年2月中旬の1,924名で、その後は次第に減少していっています。ちなみに、60期のピークは、平成24年5月下旬の2,094名で、61期は平成24年6月中旬の2,122名、62期は平成24年3月中旬の2,109名、63期は平成24年4月下旬の1,925名です。私の独自調査ですから、私が調査を開始する前の平成24年3月より前にピークが来ていることや、私がチェックをしていない日にピークが来ている可能性もあるということには、ご注意ください。
二回試験合格者数から  ピーク数とその時期 25年6月22日の弁護士数
任官者数を引いた人数
60期   2,145名    2,094名(24年5月下旬) 2,068名
61期   2,148名    2,122名(24年6月中旬) 2,098名
62期   2,162名    2,109名(24年3月中旬) 2,093名
63期   1,972名    1,925名(24年4月下旬) 1,902名
64期   1,983名    1,924名(25年2月中旬) 1,917名
65期   1,916名    ピーク時期は未だ不明     1,841名

2013/06/11

「司法崩壊の危機」という本を共同執筆しました

 最近、ブログの更新ができておりませんでした。その理由の主なところは、仕事が忙しかったということですが、標記の本の共同執筆を依頼されて、その執筆作業にも追われていたからでもあります。仕事に穴を空けることなく、執筆作業をするのは大変でした。準備書面などがぎりぎりになって裁判所や関係者の方々にご迷惑をおかけしたことは心苦しく思っております。
  http://kadensha.net/books/2013/201306shihouhoukainokiki.html
 このような共同執筆には躊躇するところもありましたが、法曹養成制度検討会議というものが一定の意見をとりまとめるという重大な時期でもありますし、私の個人的な思いとしても、この10年ぐらいは法曹人口問題に注力してきましたので、その集大成としての文書をとりまとめておくことも大事なことかなと思って、がんばってみたような次第です。
 私の担当した分野は、法曹人口全般ではなく、司法修習ということで、あまり世間に実態が知られていないところですし、弁護士であっても、司法修習に関わった経験がなかったら、現状がよくわからないと思います。特に、法科大学院を卒業していない人には、今の司法修習のことはよくわからないほど大きく変容しているところがあります。このため、法曹三者にあまり縁のない人にもできるだけわかりやすいようにするとともに、司法修習を実際に受けた人にも、他の期の人との違いなどがわかるようにしてみました。法曹三者の方々にも、自分達が受けてきた修習の持つ意味を見直す機会になるかも知れません。
 執筆作業をしながら思ったのですが、法科大学院という制度を考えた人は、実際の法曹養成課程を経験していないか、あるいは、この制度を利用しようとする学生などの志望者が実際にどういう生活をすることになるのかとか、卒業生を受け入れる側がどんなことになるのかなど、制度を実施したときの影響などを全く想像することができないような欠陥的思考の人物だったのではないかと思います。最初の卒業生が司法試験に合格したときぐらいから、弁護士事務所に就職できない人が増えてきて、今や就職できたら奇跡という時代になってしまい、就職もできない資格を苦労して費用もかけても無駄ということで、志望者すら激減してしまったわけですから、根本的に制度そのものが欠陥であることは既に実証されてしまいました。
 このような事態を改善するべく設置された法曹養成制度検討会議の中間的とりまとめは、この本の中で詳細に批判的検討をさせていただいたとおり、現場を無視した無責任極まりない提言ですから、国会などで改善案を議論するに際しての検討素材すら提供できていないと思います。それどころか、パブリックコメントすら真摯に公表もしないということで、民主的な手続すら無視して暴走しているように思います。このような事態を放置していたのでは、司法界に優秀な人材を確保することなど期待できなくなるということで、まさに「司法崩壊の危機」にあると思います。
 共同執筆者の方々の論稿も、どれも説得力のあるものばかりです。現状の問題点は、この本があれば、おわかりいただけると思います。また、同時期に発刊された和田吉弘先生の「法曹養成制度の問題点と解決策」をご覧いただければ、法曹養成制度検討会議の問題点がよくわかることになるものと思います。
 ご笑覧いただければ幸いです。