2023/07/21
交通事故被害者のための相談室を開設しました。
昨今の交通事故のご相談増加をうけて、特別サイト「交通事故被害者のための相談室」を開設しました。
こちらのサイトから、交通事故に関する無料相談のご予約を受け付けております。
交通事故被害にお悩みの方は、特別サイトをご覧のうえ、一度ご相談ください。
「交通事故被害者のための相談室」
https://shirahama-lo.jp/kotsujiko/
2023/07/21
昨今の交通事故のご相談増加をうけて、特別サイト「交通事故被害者のための相談室」を開設しました。
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「交通事故被害者のための相談室」
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2023/01/06
弁護士 白浜徹朗
定期借家制度は、世紀末の平成11年(1999年)12月に法改正によって創設され、平成12年3月に施行されました。今年で法律ができてから24年ということになります。この創設にあたっては、弱者である借家人の保護に欠けていて、追い出される借家人が増えるとか、乱開発を誘発して貸しビルや貸し室が供給過剰になって、貸主によっても深刻な事態をもたらすというような強い反対意見もありました。しかしながら、少なくとも社会的な問題となっているようなことはありませんし、利用される比率も、従来の賃貸借契約と比較して圧倒的に定期借家が多数を占めるということにもなっていないようです。家賃の急激な上昇などの問題も発生しておらず、地方都市では空家率も問題になっているのが実情のようです。裁判事例としても、定期借家契約に基づく明渡請求が信義則や公序良俗に違反しているなどとして、裁判所がこの契約に基づく明渡請求を認めなかった事例は、見当たらないようです。
裁判上問題になったものとしては、契約書とは別に定期借家であることを説明する文書が必要とされているのに、その取り交わしを怠っていた場合にどうするかということや、期間満了前に契約終了の通知をすることを忘れていて満了後に通知をした場合にどうなるかということがあります。前者は、最高裁判所が、別文書を取り交わしていないから定期借家としては認められないとしたわけですが、このような形式不備が決定的な問題とされて、定期借家契約という契約書に署名捺印があるのに定期借家としての効力を認めないということにしてしまうのは、「法律家の常識は世間の非常識」の典型のような気がします。借家関係の相談で期間を定めたのにでてもらえないのでしょうかという質問に対して、契約で決めてもなかなかでてもらえないのですということを説明するのには苦労することがありましたが、定期借家の制度は契約を整えればきちんと返してもらえるということで、貸す側としても安心できるという点は、もっと評価されていいでしょうし、むしろ誤解を招かないように法律を改正するべきではないかと個人的には思っています。ただ、まだ法律は改正されていませんので、この判例に従って、契約書とは別に説明をしたことを示す書類を整える必要があるという点を注意しなければなりません。他方で、期間満了の際の通知を忘れていたことに対しては、裁判所は救済的な扱いをしています。つまり、期間満了後に通知した場合であっても、通知の日から6か月を経過すれば契約の終了を賃借人に対抗でき、明渡請求は権利濫用ではないという高等裁判所の判例があるのです。交渉をしていたりして、期間が過ぎてしまうことなどもあるわけですから、この判例の方が社会常識に合致しているように思います。ただ、いずれにしても、契約とおり、通知を忘れないようにするということは大事なことです。
この定期借家をめぐって判例を調べましたが、沢山の判例が出現しているようなことではありませんので、あまりトラブルもなく、制度としては既に社会的に定着したと言ってもよいと思いました。ただ、上記のような問題もありますので、契約にあたっては、我々弁護士に相談していただいた方がいいでしょうし、トラブルとなった場合には、すぐにご相談いただくことが肝要と思います。
弁護士 拝野厚志
1.他士業の方との連携の必要性
今回は、「○○士」と言われる士業の方々との連携について、お話しします。弁護士は「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行う」ことを職務としており、法律には精通しています。
しかし、事件の解決にあたり、税金、不動産の評価、事実の専門的分析など、法律以外の分野の知識・判断が必要となることがあります。そのような場合、その分野の専門家である「士業」の方の意見を求めたり、士業の方と連携しながら、事件を進めていくことになります。
2.税理士との連携
税理士の方々と連携し事件を進めさせていただくことは、必須と思われます。例えば、遺言作成の依頼を受けたときに、御依頼は遺言の作成ですが、作成に至る過程で財産の全て教えていだたくことになります。
財産の規模によっては、税理士の方にもチームに加わっていだたき、相続税対策を含め、検討させていただくことがあります。また、遺産分割においても、分割方法によって税金が異なることがありますので、遺産分割協議書の内容や表現について、意見も求めます。さらに、民事の事件でも、和解条項の文言により、課税のリスクがありますので、相談させていただいて、課税リスクを回避することになります。
3.不動産鑑定士との連携
不動産が絡む事件の場合、不動産鑑定士に土地の評価の算定をお願いしたり、賃料鑑定をお願いすることになります。例えば、遺産分割において、土地が遺産に含まれている場合、土地を特定の相続人が相続し、その代償として金銭での清算を求めることがよくあります。この場合、土地を相続する側としては、土地の価格を少しでも低くしたいでしょうし、他方、清算を受ける側は少しでも土地の価格を高くしたくなります。
そのため、確度の高い土地の価格評価が不可欠となり、専門家である不動産鑑定士の方の意見や鑑定を求めることになります。また、賃貸をめぐる事件においても、賃料の鑑定を求め、適正な賃料をもとに、増額等の主張していくことになります。相手方から提出され鑑定書や意見書に対しても、意見を伺うこともあります。
4.建築士との連携
建築工事がからむ事件の場合、建築士と連携して事件を進めることになります。例えば、工事に不具合があった場合、その不具合が工事に起因するものなのか、それ以外の要因によるのか、建築士の方とともに現地を確認し、意見を求めます。その結果をふまえ、対応を検討することになります。
5.医師との連携
士業ではありませんが、医師と連携し事件を進める場合があります。例えば、交通事故事件で、後遺症が争点となる場合には、整形外科の医師の意見を求めることになります。また、医療過誤事件においては、事故が生じた思われる機序や過失の有無について、医師の意見を求めることになります。
6.社会保険労務士・社会福祉士との連携
例えば、交通事故で働けなくなられた方について、社会保険制度による保障が使えないか、また、申請の手続を相談することがあります。
7.世の中が複雑・多様化しており、よりよく事件を解決するには、様々な士業の方々と連携して事件を進める必要があります。専門家との連携ができているかにより、解決の内容、スピードが格段に異なる可能性があります。当事務所では、必要と判断した場合には、公的機関からも依頼を受けておられる信頼できる士業の方々と連携させていただきながら、事件を進めます。それが当事務所の強みの一つであると思っています。
弁護士 青野理俊
約5年前の事務所報において、私は、事業承継について書かせていただきました。日本企業の多くは中小企業・小規模事業者であり、雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として重要な役割を果たしていますが、いわゆる事業承継が日本社会の喫緊の課題の一つと言われるようになって久しいものの、今なお解決されずに残っています。
事業承継が進まない原因としては、後継者の不在、多額の税務リスク、株式の分散など個々の企業によって様々ですが、そもそも誰に相談したら良いか分からず放置しているということがあるのは否めないと思います。
事業承継の類型としては①親族内承継、②従業員承継、③M&Aの3つに分類され、一般的に内外の関係者からの理解が得られやすい①が多くを占めていましたが、近年、将来性への不安や価値観の多様化などから後継者が不在ということも多くなっています。また、一見、代表者が交替して①や②の承継が行われたかに見えても、前代表者が株式の大半を保有して実権を握ったまま実態は何も承継されていないというケースも良く見かけます。相続税対策のみならず他の相続人の遺留分への配慮が必要であることや経営者保証の承継の問題などもありますが、前代表者と後継者の間で経営理念など根本的な部分が受け継がれなければ真の承継とは言えません。
③のM&Aについても、買い手・売り手の双方において法務・財務・事業の各側面から譲渡対象企業を検証し、もっともリスクの少ない手法を策定することまでは良く行われています。しかし、譲渡実行後の、例えば従業員や取引先に対するサポート体制など、いわゆるPMI(M&A成立後の統合プロセス)こそが重要であり、譲渡実行後も対象企業が存続できなければ真の承継とは言えません。
このように、事業承継を進めるためには、一時的・表面的な手法だけではなく、継続的・根本的なサポートが何よりも大事であり、法律に基づく紛争解決のプロである弁護士が力を発揮できる分野ですので、お気軽にご相談いただけると幸いです。
弁護士 大杉光城
昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
近年、私が特に力を入れている分野が交通事故事案ですが、そこでは弁護士費用特約を使って受任することがとても多いです。弁護士費用特約とは、保険の契約者が事故被害に遭い、弁護士に法律相談や交渉等の依頼をした場合、その費用が保険金として支払われる特約でして、自動車保険に付いているものが代表的です。今回は、この弁護士費用特約について、知っておいていただきたいことを書いていきます。なお、私の経験上一般的と思われる内容で書きますので、詳細な内容はご加入されている損害保険会社にご確認下さい。
警察庁の統計によれば、交通事故発生数は、平成15年には年間90万件を超えていましたが、令和2年では年間30万件程度と大幅に減少しています。他方で、日弁連の統計によれば、この間の裁判所での訴訟の数は大きく減少していますが、交通事故訴訟の数は、実に3倍以上と大きく増加しています。なぜだと思いますか。
交通事故で怪我を負った事案では、弁護士に依頼する場合、そうでない場合と比較すると、慰謝料の支払額の増加が見込める事案が大半です。また、過失割合が問題となる事案では、専門家でなければ交渉が困難です。さらに、事故の相手が任意保険に加入していなければ、更に交渉や実際の損害の回収は難しくなります。
そこで、交通事故事案では、弁護士が果たす役割がとても大きいのですが、弁護士費用特約に入っていれば、気軽に弁護士に依頼することができます。すなわち、この弁護士費用特約は、使用しても基本的には保険料は上がりませんし、また、弁護士も自由に選ぶことが出来るのが一般的だと思います。もちろん、相談だけでもその費用が支払われます。これは、普通に弁護士に依頼すれば費用倒れになるような被害額が僅かな事故でも同様に使えます。
そのため、完全な加害者側でない限り、弁護士費用特約が付いているのであれば、これを使わないのはもったいないといえます。このように、弁護士費用特約は交通事故の被害者にとって非常に使いやすいものとなっているため、上記のとおり、交通事故訴訟が増加していると考えられています。
ある損害保険会社の調べでは、弁護士費用特約の加入率は60%を超えているとされています。事故に遭った後、調べてみたら入っていたという方もとても多いです。さらには、家族の方の保険でカバーできる場合もあります。
ご自身や周りの方が不幸にも交通事故に遭わせた場合、少しでもその被害回復のお手伝いをさせていただきたいと思いますので、私の方までお気軽にご相談下さい。
弁護士 津田一史
昨年10月、調停制度は発足100周年を迎えました。みなさまが「調停」と耳にされて、最初に思い浮かべられるのは、離婚調停、遺産分割調停といった家庭裁判所における家事調停だと予想します。しかしながら、100年前に、訴訟を好まないという当時の日本人の意識も強いことなどから、借地借家調停法が施行されたのが、調停制度の始まりです。当時は、資本主義の発展とともに借地借家、小作、商事といった紛争が増加し、社会不安も高まったことが背景にあったようです。また、借地借家調停は、施行された翌年(1923年)に関東大震災が発生したことを契機に利用者が殺到し、調停に対する評価が高まるとともに、当時の人々の間に定着したとの分析もされています。
その後、小作調停法、商事調停法などが次々と施行され、戦後になって家庭裁判所が新設され、みなさまに馴染みのある家事調停の制度もできました。このように調停制度は1922年に始まり、100年という年月を経て現在の制度に至っているといえます。
ところで、みなさまからは、訴訟(裁判)における判決と、調停とはどのように異なるのかとの質問を、よく伺います。教科書的には、裁判は白黒をつける手続であるため、時間や費用の問題、公開でやり取りをする心理的抵抗感、勝敗を決することにより悪い感情が残り得る点が指摘されています。他方、調停は、非公開のやり取りであり、七分三分の解決案もあり得ますし、相対的に短期間で解決され、費用も抑えられることが多いです。また、調停の利点として、利用者の話を丁寧に聴く手続であること、手続が簡易であることなども挙げられます。さらに、判決が過去の事実に法律を適用して結論を出すものであるのに対し、調停は、利用者らが未来に実行することを合意により約束するものであり「未来を創る」ものだとの指摘さえもございます。
みなさまにおかれましても、過去の事実を強権的に解決するよりは、「未来を創る」ためにお話し合いで解決することがのぞましい事案で,法律事務所にご相談いただく場面もあろうかと思います。裁判だけではなく、調停を申し立てることも視野に入れてご検討いただき、また、適切な解決手段を選ぶにあたって、手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。
弁護士 中川由宇
成人年齢が20歳から18歳になりました。
高校3年生や高校を卒業して間もない18歳、19歳の若者が、親権者の同意なく自由に契約をしたりカードを作ったりできるようになった反面、未成年であることを理由にした契約の取り消しができなくなりました。
成人になっても、特定商取引法や消費者契約法による保護はなされます。しかし、たとえばクーリング・オフに関して言えば、キャッチセールスなどの場合、契約書面を受け取った日を含む8日間以内に書面・メールで契約を取り消す必要がありますので、直ちに対応をする必要があります。最近は、SNSによる怪しい儲け話の勧誘もあり、外に出ず家にいれば安全というわけでもありません。平成30年の消費者契約法改正により、消費者が社会生活上の経験が乏しいことから就職等の願望の実現に過大な不安を抱いていることについて、事業者が知りながら、その不安をあおり契約が必要と告げた場合などにも、消費者は契約を取り消せることになりました。ただ、消費者が、訴訟で取消を認めさせるためには、事業者の認識を立証しなければならないというハードルがあります。
昨年、京都市立日吉ヶ丘高等学校に出向いて、「消費者の権利、知っていますか」をテーマにした出前授業をさせていただきました。これから社会に出ていく若者に、「騙されないように」という話をするだけでなく、「安心して相談できる場所があることを忘れないで」とのメッセージを伝えてきました。
思わぬ失敗をしたとき、恥ずかしい気持ちになったり自己嫌悪に陥ったりし、誰にも相談できないまま時間が過ぎてしまうことがあります。誰しも上手くいかないことはありますが、早めに専門家に相談することで、損害の回復や、速やかな再出発をしやすくなります。これまで以上に、新成人となる18歳頃の若者に、「ひとりで悩まないで」と伝えていくことが大切ではないかと思います。
事務長 田村彰吾
前回、インボイス制度の実施は、たくさん労力を掛けても、増加が見込める税金の額が、無駄遣いした税金よりも少ない、という話を書きました。いよいよ今年10月から実施ですので準備に追われている方も少なくないと思います。ただ、もう一つ会計事務を悩ませる大きな制度実施が目前に迫っています。それが電子帳簿保存法、いわゆる電帳法の改正です。
本来は2022年1月から実施される予定だったのですが、あまりにもアナウンスが少なかったためか、完全実施が2年先延ばしになっていましたが、いよいよ2024年1月に本格実施されます。今後は、電子商取引の請求書や領収書などは、プリントアウトした紙の保存ではなく、①データを、②タイムスタンプを付加し改変を出来ないようにした上で、③検索できる形で、保存しなければなりません。
「電子商取引なんて大企業の話でしょ」と言うことは全くなく、むしろ社長が一人で事業を営んでいるような小規模事業者こそ対応を真剣に検討しなければなりません。たとえば、Amazonや楽天市場などインターネット通販で事業用の備品を購入した。あるいは請求書をメールやFAXで送付した。このような場合もすべて先ほど述べた方式でデータを保管する必要があります。しかも受領あるいは交付日から「2ヶ月と概ね7日以内」にデータ化して備えなければなりません。つまり「本業が忙しくて、ついつい年度末に領収書を整理するんだよね」は、もう通用しない局面が出てきました。
また、そもそも、どのように保存するのでしょうか。自社でデータサーバーを持っている、という事業者ならまだしも、そんな設備もない小規模事業者は、どういう方法で、検索可能な状態のデータを、どこに保管すればいいのでしょう。俄に巷に溢れだしたデータサービスを利用するにしても費用が掛かります。小規模事業者は、インボイス制度で消費税そのものの負担や、会計事務の複雑化による事務負担が大きくなったうえに、これらの設備費用も負担しなければならなくなるのです。
本来、税というのは、持っている(稼いだ)人から徴収する、担税能力に応じた徴税が基本です。最近の税制改正は、経済的自由主義の名の下に、担税能力を考慮しない、むしろ担税能力の低い方からの徴税にシフトしているように感じてしまいます。
2022/12/20
2022/01/05
弁護士 白浜徹朗
民事訴訟では、IT化の動きが進んでいます。昨年度は日弁連の副会長として議論に関わりましたので、将来予想ということで紹介させていただきます。
日本の民事訴訟は、FAXを導入した時点では、世界でもトップを走っていると評価されたほど先進的なところがありましたが、今ではIT化が最も遅れた国になってしまっています。FAXの導入は、所詮は紙ベースでの通信ということで、裁判記録の扱いなどの面では、従前の扱いを大きく変化させることではなかったところがありましたが、IT化が進展しますと、最終的には紙を綴った裁判記録というものがなくなり、電子情報だけで記録を管理するということにまで行き着くこととなりますので、裁判所の事務も大きく変化することになりますし、我々弁護士業界も大きな変化を求められることになります。要は、書面第一だった世界が、電子情報だけで仕事することができるようになります。大きな分厚い記録をもって裁判所参りをするということではなく、ノートPCとかタブレットがあれば、事足りるということになるでしょう。
提出された書面をもらいに裁判所にゆくとか、裁判記録をコピーするような事務作業も不要となることになるはずです。もっとも、重要な証拠とか委任状などの管理は弁護士事務所には求められることになりますから、書面が全く不要となるということではありません。また、裁判費用を納めるための印紙の制度も変わり、ネット納付が基本にならねばならないので、新たなシステムが開発されていくことになるものと思われます。
刑事訴訟でもIT化が検討されていますので、分厚い記録を抱えて、拘置所などで打ち合わせをするというのではなく、ノートPCやタブレットがあれば大丈夫ということになるものと思います。かなり難しいことだろうとは思いますが、将来的には弁護士事務所からネット面会ができるようになれば、裁判は大いに迅速化し、誤判も減ることになるものと思います。
弁護士事務所は、裁判所との書面のやりとりが減ることで、裁判所のそばにある必要がなくなりますから、利用者の方々にとって便利な場所にある弁護士事務所が増えることになるものと思われます。
以上のことは、相当な期間を経て次第に実現することで、今日明日に変わるということではありませんが、裁判所や弁護士事務所は大きく変わる岐路に来つつあります。当事務所としても、時代の波に乗り遅れることのないよう対応してゆく所存です。
弁護士 拝野厚志
1.今回は、事件で大切になるお金の流れについて、書いてみましょう。
お金は色がなく、出入りはごまかせません。弁護士のみならず、裁判官、検察官も、事実を把握したり、事件の見通しを立てるうえで、お金の動きは非常に重視します。
借用などしていないとの主張がなされても、お金の一部を受け取っていたりすると、何もないのにお金を受け取ることはありませんので、借りたものと強く推測されます。
犯罪捜査でも、記録をみると、お金の流れについては細かいところまで非常に丁寧に追っています。私たち弁護士も、事件によっては通帳からの入出金を全て拾いだして、表をつくるなどして、いつ資金繰りに行き詰まったのか、財産の不当な流出はないか、確認することがあります。財務諸表の読み解きとは別のもので、それらの元となる帳簿、通帳等で実際のお金の流れを丹念に追うことになります。
2.このお金の流れを追うという職業的な癖は、様々なところで役にも立ちます。
例えば、政治の場面で、ある政策がどうもうさんくさいというときは、お金の流れを追うと真の目的がはっきりします。誰が得しているのか、お金は嘘はつかないため、真の目的がはっきりわかります。色々な改革が叫ばれておりますが、その真の意図を知るには、その改革に伴うお金の動きをしっかり分析することが不可欠だと思います。野党にはしっかりと裏付けのある調査を行って国会論争をしてほしいところです。また、マスコミもヨイショ番組や提灯記事のみでなく、しっかりとした調査に基づいて監視をしていただきたい。
また、身近なところでは、お金の支払先を記録しておくと、どういうものを好んで食べているかもよくわかります。忙しい中、手軽にすませられることからファストフードを使うことも多く、データをグラフにすると、ファストフードへの支払が突出しています。健康のためにはこれはよろしくないなあということが可視化されます。
3.我々が、ご相談の際に通帳や帳簿をご持参くださいとか、支払の日時、金額を詳しくをお教えていただき、それを裏付ける資料をお願いするのは、事案をしっかり把握するため、お願いしております。
通帳や帳簿をお持ちいただいたら、その整理・分析は我々で行ないますので、お願いしたときには、通帳や帳簿については、こんな古いのは不要だろうと省かれることなく、保管されていものについては、どんなに古いものでも全てお持ちいただけますと大変、有り難いです。
(追記)
Big Bossこと新庄監督が戻ってきました。何をしても絵になり、見ているだけでこちらも元気になります。嬉しい限りです。
弁護士 青野理俊
近年、土地の所有者が死亡しても相続登記がされないことなどを原因として不動産登記簿により所有者が判明しない「所有者不明土地」の問題が増加していることを契機に、令和3年の通常国会において、民法・不動産登記法等が改正されました。
法改正の全体像としては、「所有者不明土地」を生まないための①相続登記、住所等の変更登記の義務化等、②相続土地国庫帰属制度の創設、③具体的相続分の期間制限等が定められ、また、不明化してしまった後の方策として④共有制度の見直し、⑤財産管理制度の見直し、⑥相隣関係の規律の見直しがされたということになります。
なお、法改正の対象とされた「所有者不明土地」は、あくまで所有者(共有者の一部を含む)が判明しないものということであり、相続登記がされないまま数次相続が発生して権利者の数が膨大になっただけの土地(「メガ共有地」とも呼ばれます)については何も法制上の措置は講じられておりません。
法改正の実務への影響としてまず考えられるのが、遺産分割についてです。改正法では、相続開始から10年を経過する前に遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所に遺産分割の請求を行わなければ、原則として特別受益や寄与分などを踏まえた分割ができなくなります。この規制は、改正法施行日以前に発生した相続についても適用されるため注意が必要です。
また、他にも影響があると考えられるのが、共有物の利用についてです。改正法では、各共有者の持分価格の過半数で決するという基本的な考え方を維持した上で、①共有物を事実上使用する共有者がいる場合に他の共有者に共有物を使用させること、②既に決定された利用方法を変更することのいずれについても各共有者の持分価格の過半数により行うことができるという趣旨の規律が設けられました。この規制は、遺産分割前における居住用建物の利用や、共有私道の管理の場面において注意が必要となります。
このような民法・不動産登記法等の改正により、「所有者不明土地」の問題に限らず、遺産分割や共有問題についても解決手段が整理または新設されたと言えます。ご興味がある方はお気軽にご相談いただけると幸いです。
弁護士 大杉光城
昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
近年、私は、相続関係、不動産関係および交通事故関係の3分野に特に力を入れておりますが、相続関係の事件では、遺言に関わることも多いです。
遺言は、一般的には、「ゆいごん」と発音し、故人が遺族らに伝えたいことを書く手紙という意味で使われていると思います。他方で、私達法律家が扱う遺言といえば、「いごん」と発音し、自身が遺した財産を誰に渡すか、それをどのように分けるかなどを記載した文書を意味し、これは法律に定められた厳格な要件に従って作成することになります。日本の民法は故人の意思を尊重していますので、遺言があればそれに従い、それがない場合、法定相続分により遺産分割が行われることになります。
しかし、遺言が存在する相続でも、相続人らの間で争いとなることも多々あります。遺言の存在する事案では、その多くが特定の相続人に有利ないし不利になっているため、不利に扱われた人が不満を持つことも多いのですが、特に、自筆証書遺言といわれるご自身で作成する遺言に関して争いになることが多いです。自筆証書遺言は、証人も必要ではありませんので、他人が本人をまねて作る可能性も否定できませんし、法律の定める要件を守らず、無効になってしまうこともあります。また、それらの問題をクリアしても、内容が不明確だと、不利に扱われる相続人から争われることもあり得ます。平成30年の民法改正により、自筆証書遺言の要件が多少緩和されましたが、まだまだその要件は厳格ですので(例えば、メール等の電子データでは作成できませんし、財産目録以外は全文自書しなければなりません。)、遺言を作る際は、そのような争いをできるだけ減らせるよう、必ず法律家に相談するようにしてください。
私事ではありますが、去年10月に次男が誕生しました。その頃は急な予定変更等をお願いした方もおり、ご迷惑をおかけしました。
私も死後に残された家族が争いにならないような相続を考えなければなりません。皆様も一度、一緒に考えてみませんか。
弁護士 津田一史
以前からご近所付き合いの大切さが唱えられていますが、今日においても、円満な日常生活を営むにあたって、ご近所付き合いの大切さに何ら変わりはありません。もっとも、残念ながら一昔前と比べて近接した居住環境や集合型住宅の増加、みなさまの権利意識の高揚など、さまざまな要因から、ご近所からの生活妨害に関するトラブルが多くなっています。事実、ご近所からの騒音や悪臭、迷惑行為などに関する裁判例のほか、日照、景観、眺望などに関する裁判例も多く出されています。
ところで、ご近所トラブルの特色は、弁護士が介入する時点では法的なトラブルとして表面化しますが、その根底には、日ごろの生活での人間関係から生じる相互不信に根本原因が存在します。そのため、感情的な対立から当事者間でのみでは話合いができない事例も数多く見られます。しかしながら、ご近所との関係は、居住地や生活空間が近接する者同士の関係ですから、無事にトラブルが解決した後も、好むと好まざるとにかかわらず、互いに接する機会が将来にわたって続きます。したがいまして、裁判において国家機関が一刀両断に裁くのではなく、できる限り円満にトラブルを解決することがのぞましいこととなります。
当事者間で話合いができない場合に活用されるのが、話合いよってトラブルを円満に解決することを目指す「調停」という手続です。調停では、調停委員会という客観的かつ公平な第三者が仲介して、丁寧に双方の言い分を聴き、冷静に話合いをする環境を作ることにより、相互に、相手方に対する感情的なわだかまりを捨て、トラブルの内容を客観的に見直し、柔軟な解決を図ることを目指します。
昨年も1年間、弁護士を続けながら、週1回、裁判官と同等の権限をもって裁判所にて勤務する非常勤裁判官として、民事調停事件の解決を取り扱いました。最初は、このようなご近所トラブルを果たして円満に解決できるのか疑問も感じつつ取り組みましたが、当事者の代理人に就任した弁護士ら、そして民間から選ばれた調停委員の工夫や努力などもあり、幸いにも複数のご近所トラブルを解決に導くことができました。みなさまにおかれましても、お話し合いで解決することがのぞましい事案に関しまして、裁判だけではなく、調停を申し立てることも視野に入れてご検討いただき、また、適切な解決手段を選ぶにあたって、手続に精通した弊事務所に、お気軽にご相談いただければと存じます。
弁護士 中川由宇
依頼者の皆様が真に求めているものは何か。依頼者が解決方法を選択できるだけの適切な情報提供を、適時にできているだろうか。このようなことを、日頃から考えて仕事をするよう心掛けています。
認知症などで会話が困難な方を後見人等として支援する際には、特に、意識して支援方法を考える必要があります。その方(被後見人)の抱えている法的・福祉的課題について、その方が自らの置かれている状況を踏まえた意思決定・意思表示ができたとしたら、どのような意思表示をしたであろうか。必要に応じ、相談可能なご親族や介護医療関係者とも協議し、ご本人の意思を推定しながら、支援するよう努めています。
この数年間に、障害者、認知症の方や被後見人の意思決定支援のための各種ガイドラインが国などにより策定されました。「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」には、ご本人が自らの価値観や選好に基づく意思決定ができるように、支援チームを編成し、ご本人を交えたミーティングを開催すること、意思決定支援を尽くしても意思決定・意思確認がどうしても困難な場合、意思推定に基づく代行決定を行うこと等が記載されています。
これは、判断能力が不十分な方を支援するためのガイドラインですが、通常の判断能力はお持ちでも専門的な法的知識は持ち合わせていない方、独力では対応困難な紛争の渦中にいらっしゃる方を支援する場合全般にも、参考にできる考え方であると思っています。
依頼者の皆様が、人生を左右し得る重大な問題の解決方法について、自ら納得して選択できるようにするためには、どうしたらよいのか。問題となっている事案の把握のみならず、その方の価値観や人生観の理解にも努めながら、判断するのに必要十分な情報提供を適時にできるようにしていきたい。初回のご相談から少し時間をかけてお話をお聞きすることがあるのは、そのためであることをご理解ください。
事務長 田村彰吾
消費税が10%に増税されて2年余りが経過し、昨年の終わり頃から聞こえ始めたのがインボイス制度(適格請求書等保存方式)の実施です。この制度は消費税増税と同時に、あまり議論もないままに導入が決定され、令和5年10月から開始されますが、その前段階として適格請求書発行事業者の登録申請が始まったことから、ようやく話題となり始めました。
テレビ番組などでは、零細事業者とはいえ益税は許さない、等としてインボイス制度の実施に前向きな意見も目立ちます。これらの言説の正否は他所へ譲るとしても、事業者の方は、インボイス制度開始までに行わなければならない手続と、免税事業者の方は税負担の増大について備えなければなりません。
この制度が開始されますと、ただでさえ大きく下げられた免税ライン(消費税導入当初売上高3000万円から1000万円に変更)が、事実上なくなることになります。適格請求書発行事業者登録をしなければ、取引先の仕入税額控除の対象から除外されるからです。
また、これにより、元々消費税の申告納税をしていた事業者も影響を受けることになるでしょう。各事業者の会計記帳の際、仕入先が適格請求書発行事業者か否かによって記帳方法を変えなければいけなくなるためです。
このように日本中の事業者がたくさん手間暇を掛け、回収できる税額は、財務省の試算によると2000億円程度で、これは日本の税収の0.3%相当し、会計検査院が算出した2020年度の税金の無駄遣い2,108億7,000万円よりも少ない額です。しかも、この額は消費増税時の試算と同様に「消費の量が変わらないこと」を想定していると考えられますが、零細事業者の中にはインボイス制度開始とともに廃業を決めている、あるいは廃業に追いやられる事業者も少なくないと聞きます。また経理業務のように企業にとって直接利益を生まない「作業」に多くの時間を費やすことは、近年、政府が声高に叫ぶ生産性を低下させます。
生産性を下げ、零細事業者を廃業に追いやってまで集める税収が、年間の税金の無駄遣いより少ない、というのは、なんとも皮肉なものです。