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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2020/01/10

2020 初春号 vol.16 白浜法律事務所報

土地境界紛争処理

弁護士 白浜徹朗

さて、当事務所が乙訓地域の弁護士事務所不在に対応するべく長岡京市に支所を開設して10年という節目を迎えることとなりました。今後も、地域の皆様のお役に立てるようがんばる所存ですので、よろしくお願い申し上げます。
所長である私は、この数年、不動産の値動きが激しかったせいか、不動産の賃料の増額の問題とか、土地境界に関わる相談を受けることが増えたように感じています。今回は、このうち、土地の境界に関する紛争処理のことについてお話させていただきます。
土地の境界に関する紛争処理としては、筆界特定手続と境界確定訴訟というものがあります。
筆界特定手続は、法務局による行政処理ですが、境界確定訴訟というものは裁判手続です。筆界特定手続は土地家屋調査士も代理ができます。土地境界に関する行政資料などが比較的簡単に集まる点が便利と言えます。ただ、行政判断ですから、主張を戦わせてどちらが正しいか判断してもらうというよりも、法務局に判断をお任せすることになります。
経験上、思いもかけないところでおかしな判断をされてしまうということが多いように感じています。なお、不服申立の制度がないので、法務局の判断に納得できない場合には、裁判所に境界確定訴訟を提起しなければならないことになります。
これに対し、境界確定訴訟は、訴訟という性格上、裁判所は自分で資料を集めるようなことはしてくれませんから、自分で資料を集めて証拠として提出しなければならず、資料が不足していると立証が不足しているとして不利な判断につながることがあります。ただ、どちらが正しいのか主張の競い合いができることと、判断に不服がある場合に高等裁判所に控訴できるなどの利点があります。
私の経験上は、あまり争いがないけれども隣地が境界確認書に同意してくれないというときには筆界特定制度が適していると思います。境界に関する意見の相違が激しいときには境界確定訴訟を使った方が納得がいく処理が可能と思います。
弁護士は、両制度について代理人として就くことができますが、いずれにしても測量図面がないと話にならないので、土地家屋調査士と協働して対応することになります。当事務所も、協働して対応しています。
土地境界について紛争になってしまったということでしたら、お気軽にご相談いただければと思います。

 

渋沢栄一と論語

弁護士 拝野厚志

1.1万円札の新たな顔が渋沢栄一に決まりました。30年以上前から注目しておりましたのでようやく脚光を浴びたかという感じであります。日本資本主義の父と言われておりますが、渋沢の真に偉大な所以は、論語を指針としてその思想を実践した経営を行ったことにあると思います。
渋沢は明治6年に官を辞して身を実業に委ねることになりました。実業をもって国を支えるにあたり事業上また一身上従うべき行動基準がなければならないと考え、幼い頃より親しんできた論語をその基準として決めて、経営にあたりました。渋沢が興した多くの会社が現在も日本経済を支える企業として残っております。渋沢の関わった会社の経営はまさに正道を行くものであり、自社もしくは自分の履歴のみを考える現代の経営とは全く異なるものでした。
2.論語には役立つ言葉が多く書かれておりますが、人間観察の方法として「子曰、視其所以、観其所由、察其所安、人焉捜哉、人焉捜哉」(為政第二之十)と書かれています。
この個所について渋沢は以下のとおり、解説しております。
「そもそも人物を観察するに、まず第一にその人の外面に顕はれたる行為の善悪正邪を視、第二にその人のこの行為は何を動機にしているものなるやをとくと観極め、第三に更に一歩を進めてその人の安心はいずれにあるや、その人は何辺に満足して暮らしているやを察知すれば、必ずやその人の真正の性質が明瞭になるもので、いかにその人が隠しても、隠し得られるものではない。」
「外面に顕はれたる行為が正しく見えても、その行為の動機たる心意が正しくなければ、その人は決して正しい人物とはいえぬ。とき会って悪事を敢てすることなしとせずである。また、外面に顕はれた行為も正しく、これが動機となる精神もまた正しいからとして、もしその安んずる所が飽食・暖衣・逸居するに
ありというようでは、その人はある誘惑によっては意外の悪をなすこともあるものである。」(「論語講義」より抜粋)。
3.「察其所安」の部分は行動のどこに満足しているかを察ると解釈するのが一般ですが、渋沢は上記のとおり解説しております。人物は日々の暮らし様にこそ現れるとのことなのでしょう。
皆さんも、生涯の伴侶を決めるとか、一緒に事業を行うとか、人を見極めなければならない必要が出てきたときはこの3点をご確認いだたくと、その人物を外れることなく見極められるものと思います。ご参考になさてっください。

 

労働法分野での弁護士の活用

弁護士 青野理俊

弁護士が関わる法分野は多岐に亘りますが、その中でも裁判例の積み重ねや法改正により変革が著しいのが労働法分野です。
最近の変革としては、やはり昨年に「働き方改革関連法」が成立し、本年4月1日から順次施行されていることが挙げられるでしょう。
改正点を簡単にまとめると、①残業時間の上限規制、②有給休暇の取得の義務化、③フレックスタイム制の見直し、④インターバル制の普及促進、⑤高度プロフェッショナル制度の新設、⑥中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ、⑦産業医の権限強化、⑧同一労働・同一賃金の実現となります。このうち中小企業にとって無視できない影響を受けるのは、やはり⑧同一労働・同一賃金の実現です。
同一労働・同一賃金に関する法規制には、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情、の相違を総合考慮して不合理な待遇差を禁止する【均衡待遇規定】と、前記①と②が同じであったら差別的取扱の一切を禁止する【均等待遇規定】があります。今回の改正により、有期雇用労働者についても、【均衡待遇規定】にとどまらず【均等待遇規定】が定められました。その結果、例えば、継続雇用制度において正社員時代の職務内容や職務内容・配置の変更範囲を変えずに賃金のみを下げて有期雇用とする企業は少なくないと思われますが、このような賃金差が全て違法になることになります。これを回避するには、厚生労働省が公表しているガイドラインを参照しながら前記①と②に関する正社員と有期雇用労働者の区別をしっかり行うことが必要です。
働き方改革のほか、平成25年4月1日から施行されている無期転換ルールなど、きちんと対処しておかなければ思わぬ事態となるのが労働法分野です。自社の労働環境を見直すにあたり、紛争解決と紛争予防のプロである弁護士の視点を取り入れることも重要ですので、お気軽にご相談いただけると幸いです。

 

専門性を高める

弁護士 大杉光城

昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、お陰様で昨年も様々な事件を経験させていただきました。
ありがとうございました。弁護士登録した当初は刑事事件、少年事件を比較的多く受任していましたが、近年は、交通事故、相続事件、不動産事件などを受任する割合が増えてきました。
私は、今年で弁護士登録7年目になります。上記のような事件に加え、離婚事件、貸金請求事件、債務整理・破産事件、労働事件、近隣トラブル、後見事件、障害者支援、犯罪被害者支援など、様々な事件を受任し、その解決のお手伝いをさせていただきました。このように、弁護士として関わる様々な事件を一通り経験させていただきましたが、今年の目標として、そのような様々な事件の中で注力分野を定め、専門性を更に磨くことでより質の高い解決を目指したいと考えています。
そこで、今年私が特に注力したい分野が「交通事故」です。
交通事故の事件処理は、損害賠償請求としての法的知識のほか、医学的知識、工学的知識、損害保険の知識、さらには、加害者側の場合、刑事手続や行政手続の知識など、非常に多くの分野の知識が必要となってきます。一つ一つの事件の特性を踏まえ、それらの周辺的な知識の習得等も含めて日々研鑽を重ね、専門性を高めていきたいと思います。
交通事故に関しましては、被害者の方からご依頼頂くことが多いのですが、私の場合、これまで刑事事件に注力していたことから、加害者の方からのご依頼も比較的多いように思います。事故や自身の過失を依頼者(加害者)と一緒に振り返り、このような事故が起こらないように助言するとともに、適切な賠償を提案していくことは、当事者双方に意義のあることだと考えています。
交通事故は、誰にでも起こり得ることです。もしもの時に、どのような立場であっても、お気軽にご相談下さい。一緒により良い解決を検討していきましょう。

 

民事執行法の改正にあたって

弁護士 津田一史

裁判所で勝訴判決を得た場合、裁判所がみなさまのために相手方から現金を取り立ててくれるのでしょうか。
答えは、「いいえ」です。相手方が裁判所の判決にしたがい任意に支払ってくれる場合は良いのですが、判決にしたがわない場合、みなさまが勝訴判決をもとにして、裁判所への強制執行手続の申立てや取立てをおこなわなければ、お金は手に入りません。
このように「得た勝訴判決を現実にお金に変える手続」が、強制執行手続であり、民事執行法という法律が規律しています。新聞でも報道されましたとおり、改正民事執行法が本年、施行されます。
この改正作業については、裁判所における最後の奉公が不動産競売係の主任書記官であった私も、大阪弁護士会の民事執行法改正バックアップチームの一員として関わりました。
改正作業では、相手方(債務者)の財産の開示制度、不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、子の引渡しの強制執行、差押えにより債務者の生活が困窮することを防止するための見直し、などなど多岐にわたるもので、ベテラン弁護士から若手弁護士、著名な大学教授も集まり、我が国の憲法論から、ドイツ、台湾など諸外国の法律制度との比較に至るまで、夜遅くまで何回も議論をしていました。私自身は裁判所での経験を踏まえて関わり、社会一般の流れを確認して、どのように手続きに反映させるかを議論させていただく良い機会でした。特に、全国の暴力団事務所が約1700か所あるうち、約200の物件が不動産競売の経歴を有していることが判明している事実には驚きました。
ところで、実際の弁護士業務においても、暴力団員といった反社会的勢力を相手方として、事件のご依頼をいただくことが多々ありますし、幸いにも複数の事件を解決することができました。特に、交渉において、相手方(暴力団員)から暴力団事務所に出向くよう促された際、交渉する際の留意点などを踏まえて、できるかぎり安全かつ確実に紛争解決に導くか、弁護士業務としても工夫が必要です。みなさまだけでは解決に導くことが難しいと思われる案件につき、早期にご相談いただければと存じます。
「この問題って、弁護士に相談するものなの?」と、弁護士に依頼する案件なのか否かを判断することも、弁護士の役割です。お気軽にご相談いただき、みなさまとご一緒に、二人三脚で解決できればと考えております。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

 

弁護士業務を1年経験してみて感じたこと

弁護士 加藤真章

昨年は弁護士登録1年目の年であり、多様な事件に関わらせて頂き、日々勉強の毎日でありました。特に不動産の明渡しや賃料増額請求等不動産分野でのご依頼や残業代請求事件や就業規則の作成等労働分野でのご依頼が多かったように思いますが、それら以外にも交通事故事件や遺産分割・離婚等の家事事件のご依頼など、幅広い分野で経験をさせていただきました。その中で感じたことは、弁護士業務は単に法律を知っているだけでは不十分で、社会全般の知識も備えていなければ、最善の解決策を提案することが出来ないということです。たとえば、不動産分野でのご相談では、不動産鑑定士による鑑定書が重要な資料となることが多いのです
が、この結果がこちら側に不利な結果なのであれば、鑑定方法について精査し、説得力のある反論をする必要がありますので、不動産鑑定に関する知識が要求されます。また、交通事故分野でのご相談では、医師のカルテ等診療記録を精査する必要がありますので、医療に関する知識が必要となります。もちろん、その他の分野でのご相談では、その分野における知識が必要となります。そして、これら他の専門家の意見に対して反論するのですから、付け焼き刃な
知識では到底説得力のある反論は出来ないのは自明ですので、踏み込んだ理解が要求されることも痛感しました。そのため、私もご相談頂いたことについては徹底的に勉強し、最善の弁護活動が出来るよう勉強を積んでいく所存です。そして、弊事務所は、多様な案件を取り扱っており、経験豊富な弁護士も多数在籍しておりますので、そのような環境で、先輩弁護士とともにこれからも多様な経験を積んで成長していきたいと考えております。
私もこれまで以上に日々研鑽し、最善の解決策を提案できるよう精進してまいります。少しでもお困りのことがございましたら、一緒に最善の解決策を見つけ出せるよう、全力で取り組む所存ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

手段のために目的を忘れる

事務長 田村彰吾

選挙された国会議員は、様々な立法、政策を通じて国民生活を誘導します。求められるライフスタイルに合致する行動には助成金を拠出するなどインセンティブを与えたり、そうでない行動に税や罰則などを課して抑制し、国民の行動を望ましいスタイル(目的)へと導こうとします。政策はこの目的のための手段にすぎません。
ところが近時、手段を重視するあまり目的が見失われているように感じることがあります。例えば、政府は男性にも育休を取らせるため助成金を用意していますが、その助成金を受けるには、実は通常の育休よりも、厳格な休暇を取らなければなりません。通常、育児休暇はその休暇中、何度か出勤して業務に従事することが可能です。
例えば月に一回程度、短時間出勤して業務の引継ぎなどをしたとしても、その休暇性を否定されることはありません。しかし男性の育児休暇助成金は、連続して休暇を取得しなければ支給されません。
1回でも出勤すると連続性がなくなり、助成金が減額されたり不支給になったりすることがあります。男性の育休取得率、取得日数をともに高めるという目的の助成金だと推測されますが、これでは反って取得の難しさを意識させることになりかねません。
また、女性労働者についても、体調が不安定な産休の直前期、本人の申出で始業時間を遅くしたり勤務時間を短縮するなど配慮したところ、労基署から労働条件の不利益変更を疑われたこともありました。労働者のために体調を慮った対応についてペナルティを課すというのです。この件は産休中の従業員に何度も上申書を出してもらって、疑いを晴らすことができましたが、これでは自由な働き方など推進されようはずがありません。国が求める「望ましいスタイル」に合わせたことでペナルティを受けるとは、まさに目的を見失った例ではないでしょうか。
事業活動を続ける中、良かれと思ってしたことが、取引先、お客様、時には行政から謂れのない疑惑をかけられることがあります。その手段が、たとえ目的を果たすためだとしても、高を括っていると思わぬ不利益を受けることがあります。こんな時、ご相談頂ければ、お力になれることがあるかも知れません。

2018/01/01

2018 初春号 vol.14 白浜法律事務所報

平成30年の年頭にあたり

弁護士 白浜徹朗

2017年は、大変お世話になりました。2018年の初頭にあたりまして、事務所所長として、ご挨拶申し上げます。さて、2015年に京都弁護士会会長に就任した関係で、弁護士会関係の業務の残務処理のようなことがありましたが、2016年にはその区切りもできて、業務に集中しやすくなりました。他方で、そこそこの年齢になったこともあってか、京都府の行政委員の仕事などが増えて、行政手続に関して勉強する機会が増えました。また、2017年4月より、京都弁護士協同組合の理事長に就任したことで、弁護士の業務に関連した福利厚生関係の援助の業務に関わるようになっています。この協同組合なるものは、弁護士会とは別の組織ですが、弁護士のほとんどが加入しています。裁判所での事件記録の謄写など、弁護士会としては直接にはやりにくい業務に携わることで、弁護士の業務のお手伝いをしているような団体です。この組合では、特約店ということで、企業の方々とのつきあいがあります。弁護士業務の拡大に伴って、特約店となっていただくような業種の方も増えてきておりまして、今年は、私とのおつきあいで新たに特約店になっていただいた方もおられますので、感謝しております。ところで、2017年は、長年当事務所を支えてくれていた遠山弁護士が独立したこともあって、少し寂しくなりましたが、幸いなことに、裁判所書記官としての十分なキャリアのある津田弁護士に新たに加入してもらうことになりましたので、年末から少しにぎやかになってきております。
最近気になっていることは、弁護士事務所のホームページに問題のあるものが増えてきているということです。弁護士の広告は、かなり厳しく制限されていましたが、利用者の方々にわかりやすくなるよう、少し緩和されました。この緩和に伴って、テレビCMを流したり、電車の吊り広告をしたりする過払金を多く扱う事務所などがでてきたわけですが、過払金を多く扱っている事務所でないところでも、ホームページで実績を大きくみせかけたりする事務所がでてきているようです。弁護士も医師や病院と同じように専門表示があるとわかりやすいのですが、この専門家の認定をどこがどのような基準で行うかというような難しい問題があるため、弁護士の広告では専門家の表示は認めないことがルールになっています。ですから、専門家などと表示しているところは、弁護士としての広告のルールを守っていないことになるので、ご注意いただければと思います。私の感覚では、弁護士の中で実績のある事務所として評価が高いところほどホームページは質素なところが多いように思うぐらいですが、他方で、ホームページだけみるとすごい事務所と皆が思うだろうなという事務所も増えてきているので、弁護士事務所の選択を間違ったと思うような人も増えてきているのではないかなと心配なところがあります。とはいえ、わかりやすいホームページがあった方が依頼者の皆様には安心なところもあるかと思いまして、当事務所でも、ホームページを新しくすることに致しました。過大な広告にはなっていないものとは思いますが、ご笑覧いただければ幸いです。ご意見等いただけましたら、改善等務めて参りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
今後も、当事務所としてはさらなる業務拡大に努める所存です。今後もこれまで同様のご指導ご鞭撻をいただきますよう、
よろしくお願い申し上げます。

 

 

落語の芸談

弁護士 拝野厚志

1.今回は柔らかめの話題の年となりますので、好きな落語のお話で一題。
落語を聞くのも好きですが、芸談も好きであれこれと読んでおります。
私の好きな噺に「お直し」という廓噺があります。
話は、簡単に言えば、廓の花魁と店の若い衆がいい仲になってしまい、最終的には二人で女郎屋をし、苦労しながらも二人健気に生きていくというものです。
この噺に関し、志ん生師匠は「廓噺の中で一番、好きな出し物です。あゝいう社会の裏面をよく画いた噺で、店の者どうしで結ばれた一組の夫婦が互いに持ちつ持たれつで生きていく、そこにこの噺の魅力がある筈です。たしかに最低の生活でみじめな商売ではあります。然しそんな生活の中にも美しい夫婦愛という精神的に支えがある。この噺を演る時はそれが一番大切なところで、いつもその夫婦愛を強調する様につとめております。」(立川志らく著、「落語名人芸「ネタ」の裏側より」)と言っています。
スタンダードナンバーと同じように古典落語も色々と解釈し演じることができると思いますが、噺の本質を一言でぼんと示しているところはさすがと思います。

2.私たちの法曹の仕事も職人仕事の性格を大きく持っており、落語家が芸を極めようとするところと共通する部分があります。芸談に現れる、師匠たちの噺の演じ方の工夫や落語を極めようとする姿勢は、仕事のうえでも大いに参考になります。
先の志ん生師匠について言えば、飲む・打つ・買うといった破茶目茶な行動ばかりが目を引くためか、そのようなエピソードばかりがとり上げられています。
しかし、実際には真剣に稽古し、また、いつも落語のことを考えていたことが、その芸談からわかります。
贔屓ついでに、師匠の生真面目さを彷彿させる話を引用しますと、息子である志ん朝師匠が山藤章二氏との対談で「ところがね、山藤さん、意外に思われるかも知れませんが、昔の親父はかなり地味だったらしいんです。早めに上がって『中村仲蔵』をやったり、まっちかくな芸だったらしいんです。」と言っています。志ん生夫人・りん氏も、こんなに稽古している人が目が出ないわけないと思っていたと語っておられます。

3.落語を聞いてあれこれ難しいことや仕事のことを考えてしまうのは、それこそ野暮とういうものなのでしょうが、根が真面目なのか、テレビ番組を見ていても、コメンテーターや解説者の発言からいつの間にか案件の切り口を考えていたりと、ついつい仕事に引きつけて考えてしまいます。
私の師匠の白浜所長もいつも仕事のことが頭から離れずいつも仕事のことを考えているタイプですので、師匠から叩き込まれた芸の一つなのだろうと観念しております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

ついに民法が改正されました

弁護士 青野理俊

平成29年5月26日に、民法の一部を改正する法律が国会で成立しました。平成29年6月2日に公布され、遅くとも3年後には施行されることになります。
一部といっても、民法のうち債権に関わるところが広範囲に亘って改正されています。中でも消滅時効、法定利率、保証、債務不履行、定型約款、契約不適合などは、中小企業の皆様にも非常に関わりの深い分野であり、ご注意いただく必要があります。
例えば、債務不履行に基づく損害賠償責任に関して言えば、帰責事由の判断基準として「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断されるという定めが置かれました。
そのため、今後は契約書の文面などで契約の目的や契約に至った動機などを明らかにしておくことが重要になります。メールや交渉時の会議の議事録なども契約の目的や動機の裏付けとなり、判断に関わってくる可能性がありますのでこのような資料をきちんと残しておくことも大事になります。
他にも、債権保全上もっとも基本となる消滅時効に関し、これまで存在していた職業別の短期消滅時効が廃止され、原則として「権利行使できることを知った時から5年、権利行使できる時から10年」という定めに統一されることになりました。領収書など債権の存否に関わる資料は少なくとも5年は保管するのが望ましいということになります。
また、今回の民法改正では定型約款という全く新たな定めが置かれました。以前から保険約款や運送約款などいわゆる「約款」が契約実務において用いられていますが、これまで約款について法律上の定めがないまま解釈に委ねられていました。それが今回の民法改正により「定型約款」という定めが置かれ、どのような場合に定型約款が有効となり、どのような場合に内容の変更が認められるかが具体的に規定されました。中小企業の皆様には自社ホームページにてインターネットショップをされている方もいらっしゃるかと思いますが、今回の民法改正における定型約款の定めを参照し、「〇〇利用規約に同意する」とのボタンをしっかり設けておくべきかと思われます。また、利用規約中に内容を変更できる旨の条項を定め、変更できる場合の例を列挙し、利用規約の開示請求に対する対処方法や変更時の周知方法を定めておく必要があります。当職は、改正民法にも対応できるよう研鑽に努めておりますので、お気軽にご相談いただけると幸いです。

 

 

司法修習での思い出

弁護士 大杉光城

1.昨年も大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年12月、津田一史弁護士が加入することになりました津田弁護士と私とは、年齢も弁護士になるまでの経歴も全く違いますが、「司法修習」が同期でした。また、その配属も同じ京都でして、私にとって津田弁護士は、まさに「同じ釜の飯を食った仲間」といった存在です。
月日早いもので、私も弁護士になってから5年目を迎えました。少し仕事にも慣れが生じてきた頃ですので、今回は、初心に戻り、修習時代を少し振り返ってみたいと思います。

2.司法試験の合格後、すぐに弁護士や裁判官、検察官になれるわけではありません。試験の合格者達は、一定期間(私のときは約1年)、全国各地に散らばり、「司法修習」という実務に就くための研修を受けることになります。司法修習生は、その配属地の裁判所、検察庁及び法律事務所にそれぞれ数ヶ月通うことになり、実務の第一線で活躍する法曹(裁判官、検察官及び弁護士のことを指します。)の指導を受けます。そのような指導を受けつつ、司法修習生達は、修習終了後の進路を定めるとともに、実務に就くための知識とノウハウを習得していくのです。

3.司法修習は、大変ではありますが、刑務所等の施設見学や司法解剖の立会いなど普通では経験出来ないことも多く経験できますし、先輩法曹の仕事を間近でみることができ、毎日が大変楽しく、刺激的な日々でした。特に、進路として選ばなかった裁判官や検察官から直接指導を受け、その考え方を教えていただいたのは、弁護士として執務する上で極めて貴重な経験であり、現在でも至るところでその経験が生きています。
また、そのような司法修習を切磋琢磨しながら一緒に過ごした修習同期は、同じ業界内でのライバルの中でも、困ったことがあれば気軽に相談でき、また、つらいときがあれば一緒に飲みに行ける、生涯の財産です。

4.司法修習中、津田弁護士は年長者でしたし、元々裁判所書記官として長く法曹界にいたこともあり、司法修習生の中でも、ひときわ目立つ存在でした。そんな津田弁護士ですが、京都修習での同じ班であったこともあり、その面倒見の良いお人柄から、私も一緒に卒業試験対策の勉強させていただいたり、よく飲みに連れて行っていただきました。司法修習終了後4年を経て、今回、本当に気心の知れた津田弁護士と一緒に執務することとなり、大変頼もしく感じるとともに、「津田弁護士に恥ずかしい姿は見せられない」と気の引き締まる思いでもあります。
今後も津田弁護士と切磋琢磨し、皆様に満足していただける仕事が出来るよう努力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

はじめまして。

弁護士 津田一史

昨年12月1日付けで大阪弁護士会から京都弁護士会に登録換えし,弁護士法人白浜 法律事務所の一員として迎えていただくこととなりました。
私は京都市伏見区の大手筋商店街近くの産婦人科で生まれた久御山町民です(おそらく久御山 町では唯一の弁護士でしょう)。生まれ育った京都府南部地域の発展に、微力ながらお力添えできれ ばと考えております。
立命館中学・高校を卒業後,早稲田大学に進学し,また同志社大学大学院にも在籍して司法試験の 勉強を続けたのですが、法曹になる夢叶わず、縁あって裁判所に奉職いたしました。裁判所では名古 屋勤務が中心で、裁判所書記官として民事、刑事、不動産競売はもとより、年間3000件以上、総計1万 件を超える破産申立書を拝見し、倒産実務に深く携わる機会も得るなど、18年以上もの長きにわたりお 世話になりました。
裁判所書記官としての勤務の傍ら勉強を続け、幸いにも司法試験に合格し、5年前、裁判所を退職
した10日後に、修習生として京都に戻りました。その際、京都弁護士会の司法修習委員長であった白 浜所長と出会い、年代の離れた若手修習生との付き合い方などの相談にも快くご対応いただきました
し、同じ修習生であった大杉光城弁護士とも切磋琢磨しながら、充実した修習生活を過ごしました。
修習終了後は、愛知県弁護士会に登録し、倒産事件や債権回収業務はもとより、主として損害保険 会社側で交通事故案件を数多く経験させていただきました。その後、地元に戻るにあたり大阪弁護士 会に登録換えし、中小企業支援センター協力弁護士に登録して、地元の宇城久地域(宇治・城陽・久 御山)の中小企業のみなさまの顧問弁護士をお引き受けするほか、「法人破産申立て実践マニュア ル」の執筆に関わるなど、企業再生や倒産の第一人者といえるような諸先輩方のご指導を受ける機会
も得て、京都、大阪、名古屋のみならず、企業再生に関わる全国の弁護士や裁判官に一定の情報発 信をすることができました。
このような経験を経て、そろそろ一つの所に根を下ろそうと、また地元である京都でのサービスをさら に拡充するべく、よりみなさまに近い場所において、新たな一歩を踏み出すことにいたしました。白浜所 長の下、弊事務所の一員としてさらなる研鑽を積むことが肝要とも考え、ご縁もあって今回の移籍に 至った次第です。
趣味はハワイ旅行でして、趣味を通じて国内外の不動産投資案件に関する紛争も経験いたしまし た。またドライブが気分転換であり、交通事故案件の際には現場を5回以上走行してみるなど、事故当 時の当事者の気持ちをトレースすることで紛争解決につなげたりもしています。
改めて弁護士としての初心に戻り、18年間の裁判所勤務時代の経験を踏まえ、弊事務所において
も引き続き、裁判所の内側に詳しい専門家として、より的確なリーガルサービスを提供できるよう努力す る所存です。
今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

株式会社の存在

事務長 田村彰吾

日本にはじめて株式会社が誕生したのは1873年(明治6年)で第一国立銀行(現在のみずほ銀行)だったそうです。その後、証券取引所が開設されるも、戦時中には、証券取引所での取引が中止されていた時期もあったと言うことですから、一般的な制度ではなかったと思います。
戦後、1949年(昭和24年)になって証券取引所が再開され、好景気も伴って、各企業が次々と株式会社化し、バブル期のピーク時には1年で15万社以上が誕生し、中小企業にも株式会社化が進みました。
最近の法改正で、グループ会社に対する規制緩和が進んだことで、グループ再編が容易になり税法上も様々なメリットが享受できるようになりました。
このような法環境の変化につき、立法者が何を意図しているのかを考えてみると、ひとつの方向性として、例えば、親から子へと事業を引き継ぐ事業承継を円滑にすることがあるのではないかと思います。
経済成長期に株式会社化した大多数の創業者一族は、自社株を大量に保有しておりますところ、近時の景気回復傾向により、会社保有の、あるいは創業者一族が保有する事業用不動産の価値は上昇しており、それに伴って、保有株式やこれら不動産の、親から子への承継が思うように進まなくなってきました。加えてバブル崩壊期まで法定されていた最低発起人制により、本来、家業に専念していない親族も株主となっていることが散見され、相続などによって、株式の売買に制限のある会社でありながら、株主のコントロールが利かなくなっている中小企業も多々見受けられます。
このような中小企業において、親から子への事業承継を行うには、大変な困難が予想されます。相続発生時に相続税が払えず、会社資産を売却したため事業が継続できない、などという悲劇もあり得ない話ではありません。しかし、立法者はこれを予測していたのではないでしょうか。
もちろんケースバイケースではありますが、近年改正された自由度の高い設計で複数の株式会社を設立し、代々の本業事業を守っていく会社に加えて、不動産を保有する会社、本業会社の株式を管理する会社などに分割し、グループ化(持株会社<ホールディングス>化)することによって、高くなりすぎた現在の本業事業会社の株式や、事業用不動産の価値を細分化して次世代へ承継させることも可能となります。実際に昨年、関与した事業承継では、見込相続税が数億円減少することもありそうです。もちろん今すぐに税務メリットが発生するものではありませんし、一時的な納税などの費用も掛かります。全ての会社における解決法ではありませんが、事業承継にお悩みになった際は、一度弊所にご相談ください。解決法を見つけることが出来るかも知れません。

2017/12/28

ホームページをリニューアルしました

白浜法律事務所のホームページにアクセスいただき、誠にありがとうございます。

この度、当所のホームページをリニューアルいたしました。

引き続きご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2017/12/26

あなたの会社大丈夫ですか?

倒産事例に学ぶ企業危機予防法

あなたの会社は、元気ですか?(弁護士からみた企業倒産の防止法)
1.はじめに
弁護士は、いわば社会的な病理現象に対処し解決するという意味で、社会的な医者という側面を持っていますが、これまでの弁護士は、訴訟などで、発生した事件についての解決を図るという外科医的な対処が多かったように思います。でも、弁護士が問題事例を取り扱った経験を生かせば、問題発生の予防ないし最悪な事態の回避につながることも、アドバイスできるのではないかと思います。
特に、最近では、倒産に絡んだ相談を受けることも多いのですが、私は、倒産処理に関連した仕事をすればするほど、企業倒産が及ぼす悪影響がいかに重大なものかということを痛感させられます。ですから、言うまでもなく、倒産に至らないようにすることが最も大事なことなのですが、弁護士のところに相談に来られるときには、時既に遅しというものが多いのが現実です。
ですから、元気な企業に対して倒産に至らないようにしてもらうためのアドバイスをしておくことが大事ではないかなと思います。そこで、この機会に、倒産事例から学ぶ企業倒産予防法というものについて、私が思いついたことをご紹介しようと思います。

2.予防法
(1) 体力の増強(無駄遣いをしない、使うべきところに金を使う)
病気の一番の予防法は、体力をつけることです。倒産に至らないためにも、企業としての体力をつけることが一番重要です。この点、倒産の主たる原因は、やはり、放漫経営であり、無駄な出費をしていることが倒産の遠因となっていますから、無駄な出費を抑えることは重要です。
例えば、豪華な本社屋の建設とか、社長室や会議室など生産や営業に直接の関係を有しないところに金をかけているなどの事例は、倒産会社によくみられる例です。
逆に、工場などの生産設備への投資を怠って、競争力が弱まったというのも、倒産会社によくみられることですが、最近では、コンピューターシステムなどの整備が遅れて、日々の売上や経費の管理ができず、手作業で棚卸をしないと決算ができない企業など、情報関連のインフラの構築ができていないことで倒産に至ったという事例もでてきています。つまり、企業としての足腰、神経組織には充分な投資を行うことも大事です。
また、当然ながら、基礎体力をつけるという意味で、資産の備蓄も重要です。最近では、不動産などへの投資で失敗した事例が多いとは思いますが、いざというときに、あてになる資産がないと、資金繰りが息切れして、倒産に至るということになりかねません。逆に、債務超過状態なのに、株主対策などで無理な配当を行ったり、早期退職などで無理な退職勧誘を行ったりすると、資産が流失して、体力がそがれることとなります。高利な借入に走ったりすることも、金利として資産が流失しますから、同じ事です。

(2) 病気の早期発見(取引先等とのつきあい方)
いわゆる「ごとび」という商慣習がありますが、これは、お取引先に足繁く通うことで、その状況をよく理解しておくということで、取引上痛手を負うことを避けるという意義があると聞いたことがあります。ここで、重要なことは、兆しをつかむということです。「おかしいなと思って取引を中止しようと思ったのだが遅かった」という話はよく耳にすることです。また、取引先がどこにどのような資産があり、どこがメインバンクなのか、主要な売掛先がどこで、どのような売掛金があるのか、社長の資産状態はどうなっているのか、などということがわかっておりますと、もしものときの対策上も役に立ちますし、交渉の際も有利な立場に立つことができます(敵を知り、己を知れば、百戦危うからずです。)。

(3) 病気の見分け方(どんな企業が危ないか)
飛び込みで突然仕事を発注してくる企業には、従前の取引先からの仕入れが困難になっているような企業が多いように思います。最近では、インターネットで、企業情報を入手したりすることもできますから、そのような企業情報が得られる企業かどうかが、重要なポイントとなるように思います。そのような情報を確認することなしに、取引を行ったとすれば、それによって失敗しても自己責任ということになります。
また、支払の遅れなどは、当然のことですが、急激な仕入の拡大も、何らかの問題が背景にあることがあります。大抵は、あまり合理的な説明ができないことが多いので、理由を確認する必要があります。手形での支払が増加することも同様ですし、期日を先に延ばすということも同じです。事務所に何となく荒んだ雰囲気があるというときも、企業内部に問題があることがあります。給料の遅配などは問題外です。

(4) 病気にならないおつきあい(堅い取引の勧め)
大企業ともなると、取引先に保証金を要求したりしている事例があります。伝票の記載方法にも注意している企業があります。伝票の記載がしっかりしている場合には、倒産の場合でも先取特権という権利を行使したりすることができることがあるのです。もちろん、現金取引が一番強いのですが、手形をもらうことの方が手形をもらわないよりはましです。高額な取引の際には契約書を作成した方がいいでしょう。商品の継続的な取引がある場合には、基本約定書を締結して、債権の保全策をまとめておくこと、包括的な保証をもらうことなどが有用です。このような形で、債権の保全を図っているところは、不良債権をつかまされることも少ないように思います。

(5) かかりつけの医者を(顧問弁護士の勧め)
もし、取引先が倒産したとしても、影響を最大限に抑える必要があります。予防策がうまくとれていても、法的な手続をせねばならなかったすることがありますが、その際に、すばやく動ける弁護士が近くにいるということが大事ではないかと思います。また、弁護士に依頼しなくとも、弁護士のアドバイスを受けて動くことで、かなりの解決が図れることがあります。その意味で、いざというときに頼りになるような顧問弁護士を確保しておくことは重要です


(6) 早期治療の勧め
倒産処理は、自己破産だけではありません。最近話題となっている民事再生法という処理では、経営権を保持しながら、再建を図ることができます。ただ、これも、ある程度の資金的余裕があって、再建の可能性がないと申立することすらできませんし、申立には、相当な費用がかかります。ですから、再建しようと思ったら、早期に相談されることが肝要です。

3.再建の方法
(1) 早期着手
もし、会社再建ということに取り組まねばならないという事態に陥ったら、すぐに、弁護士に相談して下さい。早ければ早い程、選択の幅も広がり、再建の可能性が高くなります。

(2) 各種方法
会社再建という方法は、法的な手続と法律に依らない手続があります。後者は、任意整理と言います。法的な手続としては、民事再生、会社更生、特定調停の申立があります。なお、再建ではなく、清算を行う手続として、特別清算、自己破産があります。

(3) 民事再生
和議手続を改正した手続ですが、基本的には経営権の交代がないということと、簡易迅速な手続であるというところに特徴があります。この手続は、申立会社が主体的に行う手続ですから、企業として、最も重視しなければならないのは、申立を代理する弁護士の選定です。申立を担当した弁護士が、申立から最終的な再生計画の履行までずっと関与することになりますから、この手続で最も重要な立場にあるのが、申立代理人の弁護士だからです。具体的には、法人の破産管財人とか、和議の申立などの経験のある弁護士に依頼することが肝要です。
この手続については、何でも再建が可能かのごとき幻想が広がっているような感触がありますが、前にも述べましたように、再建の可能性がなければ、破産に移行するということになるので、注意を要します。裁判所は、中立な立場の存在であって、再建を支援する機関ではないのです。また、相当な費用もかかりますから、その点の資金確保と、申立後の資金繰りの目処がないと利用できないということにも、注意が必要です。

(4) 会社更生
会社更生は、大規模な企業の再建に適した手続です。担保権者の担保実行や租税債権の行使についても、ある程度の対応ができることに特徴があります。ただ、経営者の経営権は失われること、申立に必要な予納金が莫大なものとなること、手続が厳格なため、時間も多少かかる傾向にあることが、民事再生と比較して、利用がしにくい点です。この手続も、申立代理人の選定が重要になりますが、民事再生と比較すると、申立代理人に、あまり経験がなくても、心配は要りません(会社更生を申し立てたことのある弁護士を探すことの方が難しいぐらいに、申立経験のある弁護士は少ないのです。)。

(5) 特定調停
特定調停というものは、負債の減免と分割払についての話合の機会を設けてもらうという手続です。まさに、不良債権処理のための手続として新たに新設された手続です。中小企業を念頭において新設されたのかも知れませんが、大企業が利用してはならないということにはなっておりませんので、企業の再建にも、有益な手続です。金融機関としても、合理的な調停ができれば、不良債権償却がやりやすいという点で、この手続の利用価値があります。ただ、調停ということで非公開となっていることで、具体的な事例報告が少ない点で、あまり知られていない手続となっているのではないかと思います。

(6) 最後に
以上、色々な手続についてご説明いたしましたが、何度も繰り返しましたように、再建のための手続は、やりたくてもできないことがあります。早期の相談が大事ですし、日常注意して、そのような相談をしなくてもすむように、心がけて、体力を蓄え、病気にかからないように精進すること、これが倒産防止につながるように思います。

著 白浜徹朗