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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2017/12/26

不良債権再考論

~ 不良債権処理を再考すべきでは ~

最近、不良債権処理が必要であるとの声をよく耳にする。しかしながら、企業の再建や法的清算に取り組むことのある弁護士としては、不良債権処理の加速化に疑問を感じることがある。特に、一体「不良債権」とは何かという点、すなわち、「不良債権」とそうでない債権が、一体どのような基準で線引きされるのかということを再検討しない限り、健全な企業やまじめに再建に取り組んでいるような企業も、「淘汰」されてしまうことにならないかということを危惧するのである。

そもそも企業活動に伴って利益が発生したとして、それをそっくりそのまま利益として計上するような企業は、ほとんどない。企業は、利益を再投資したり、新たな融資を加えて、施設や設備に投資したりするわけである。そうしないと、納税額が増えるだけのことである。結果として、ほとんどの企業は、金融機関からの借入を抱えていることになる。そして、これに対応する資産として、最も重要な価値を有していたのが不動産であった。つまり、大抵の企業は、不動産と金融負債を抱えていたわけである。ところが、バブル経済の崩壊と不動産価格の急落の結果(特に後者は、総量規制や土地保有税制という国策によって人為的に作出されたものであるが)、ほとんどの企業が、その資産価値以上の金融負債を抱えるようになっている。しかも、不動産価値の下落は、今も続いている。この結果、資産の実質的価値よりも金融負債額が大きくなっている企業がどんどん増えていることになる。

このため、「不良債権」というものを、不動産等で担保されている価値よりも債権額が大きなものという単純な基準で判定するということとなると、日本のほとんどの企業が不良債権を抱えていることになる可能性がでてくるわけである。中小企業の経営者が、不良債権処理という言葉に怯えに近い感情を持つのも、このためである。

また、施設の購入や建設などの不動産投資は、設備投資の中でも投資額が大きく、即効性もあるものである。ところが、不動産価値が下落し続けている限り、不動産への投資に企業は慎重にならざるを得ない。結果的に、不動産投資は、低調なままであり、需要は伸びないこととなる。他方、不良債権処理が進むにつれて、「処理」すなわち売却される不動産は増えるから、供給は増える。ますます不動産価値は下がってゆくこととなる。

したがって、デフレスパイラルから抜け出すためには、不良債権処理というお題目によって、不動産の処分だけが急がれるようなことを抑制する必要がある。特に、「不良債権」の判定として、不動産の価値と債権額との比較だけを重視するようなことはしてはならないのである。

この点、弁護士として、企業再建を検討するに際して、最も重視することは、本業が回転し、利益がでているかどうかということである。つまり、いわゆるキャッシュフローの重視である。なぜなら、法的な再建手続によって不動産等が処分されないということになれば、収益がでている限り、企業は存続することができ、再建が可能となってくるからである。

ところが、国策によって作出されたRCC(株式会社整理回収機構)では、国民の二次負担を回避するという命題の下、5年以内の回収が基本とされている。このため、中小企業の経営者としては、一度RCCに送られたら、5年以内に返済できない限り、企業としては清算されるという不安感に追われることとなっている。いかに企業努力をしようとも、不動産価値が下落し続け、設備投資も伸びない不況下において、5年以内の返済などは不可能である。民事再生法ですら10年という期限設定をしている中、5年内の再建という原則は、あまりに厳しいものと言わざるを得ない。ところが、回収を急ぐ姿勢は、RCCだけではなく、不良債権処理競争に追われている大多数の金融機関も同様の状況となっている。金融機関は融資よりも回収に力点を置いていると思われるほどである。このため、企業努力をしつつも、清算に追い込まれる企業が増えているように思えてならない。なお、最近では、RCCも企業再建ということを重視しているようであるし、過酷な取立は行わないということを明言して、企業の再建に努力しているということであるが、私としては、なおいっそうの努力を期待したいと思っている。

不健全な企業は清算すべきであるなどという声もよく耳にするが、倒産処理は、連鎖倒産とか失業者も増やすという側面があることが見過ごされているように思える。中小企業の経営者はそのほとんどが企業の連帯保証人であるから、企業の倒産に伴って、一家離散に追い込まれることも少なくない。清算こそが唯一の解決ではないということを忘れてはならない。

先日、私が所属している京都弁護士会では、RCCに対して、5年以内の回収というテーゼにこだわらず、過酷な回収とならないようにしてほしいとの要望を行った。全国で初めての提案であるが、私は、個人的には、日本経済の再建にとっても、示唆に富んだ提案であると考えている。5年では返済できないが、10年、あるいは、20年というスパンであれば、返済可能な企業は沢山あるように思う。そういう企業が再建できるようにしてもらいたい。また、そうすることが、現在の日本経済には、必要なことであると思う。私としては、行政当局が不良債権処理について政策立案されるに際して、京都弁護士会の提案をぜひご一考いただきたく、会員の一人として、ご提案する次第である。

著 白浜徹朗

2017/12/26

医療過誤訴訟について

1.はじめに
当事務所では、医療過誤訴訟も数多く手がけています。医療過誤訴訟は、患者側から病院側に事故の責任を追及する訴訟ですが、当事務所では、患者側に立った訴訟だけを取り扱っています。

2.医療過誤訴訟の特徴
通常の訴訟は、原告つまり訴えた側が勝訴する確率が高いと言われています。それは、訴訟の費用などを考えると、勝訴の可能性を検討してから訴訟を提起することが多いためであって、負けるのがわかっている訴訟を提起する人は少ないということによるものと思われます。ところが、医療過誤訴訟では、原告、つまり患者側が勝訴する確率は3割に満たないと言われています。これは、医療訴訟が専門的な知識が必要な訴訟であることに加えて、カルテなど重要な証拠が医者側だけにあること、患者側に立って問題点を指摘する医師は少ないこと、医師の過失としても、結果責任ではなくて、やるだけのことをやったかどうかということが問われるに止まるということによります。また、医療過誤訴訟は、経費も相当かかります。これは、そもそも死亡事故などが多く訴額が高くなりがちであるということに加えて、レントゲン写真など証拠作成に相当な経費がかかる上、鑑定など専門家の意見を求めることが多く、その経費も別途かかること、必然的に時間がかかることから、弁護士費用も一般訴訟事件と比較すると高くなることによります。従って、医療過誤訴訟を提起するかどうかは、患者側にも慎重な判断が要求されるということに留意して下さい

3.医療過誤訴訟の流れ
通常、医療過誤訴訟では、カルテの確保を行うことから開始されます。カルテは、最も重要な証拠ですが、これが病院側によって改ざんされたりすることを防ぐことと、患者側に立った医師に医療上の問題点を検討してもらうためには、カルテが確保されていることが必要不可欠になるためです。
このカルテを確保する手続は、法的には証拠保全手続と言われます。これは、一種の証拠調手続なのですが、訴訟を提起していなくても、行うことができるのです。通常、証拠が改ざんされるおそれがある場合に認められるのですが、ほとんどの裁判所は、改ざんのおそれについて厳しい立証を要求することはなく、患者側が医療事故のおそれがあることを証拠などである程度明らかにすれば、保全命令を出してくれます。
その後は、カルテ等の分析と患者側に立った医師による検討などを経て、訴訟を提起するか、あるいは、示談交渉等を行うかという手続の選定となります。場合によっては、医師や病院に責任を問うことは難しいということで、証拠保全だけで終わることもあります。
訴訟を提起する前に調停を行うこともあります。調停は、話し合いの制度であり、白黒をつけるような制度ではありません。病院側の意見も検討した上でないと、訴訟を提起するかどうかの判断が難しいような場合には、調停を経てから訴訟を提起するということもあるのです。
訴訟となった場合には、各種証拠を提出した上で、書面のやりとりで問題点を明らかにした上で、証人や鑑定人を調べてもらって、判決をいただくということとなります。その間に和解の試みがあったりすることもありますから、解決までは通常3年ぐらいかかると思われた方がよろしいでしょう。
なお、訴訟に至った場合、病院側は、最近では保険会社の顧問弁護士が代理人となることが多いようです。

著 白浜徹朗

2017/12/26

競売物件購入のチェックポイント

最近のデフレ経済は、政策として実施された不動産価格の下落に主な原因があります。バブル経済を意図的に急崩壊させた結果として、大半の企業のバランスシートが厳しくなり、設備投資なども消極的にならざるを得なくなり、不況が長期化してしまいました。この結果、担保割れ物件が急増し、不況の長期化が追い打ちとなって、返済に窮した債務者が、競売によって不動産を手放すということが多くなっているわけです。バブル経済到来前と比較しても、競売事件数は飛躍的に増加しており、競売は市民にとって身近なものとなってきているようです(但し、これは、社会自身が病んでいるということであって、あまり好ましい状況ではありません。)。でも、いくら身近になったとはいえ、競売物件には素人が手をだしてこなかったというのは事実です。今でもそうなのでしょうか。私たちが、競売物件を購入するにあたっては、どんなことを注意しなければならないのでしょうか。以下、簡単に、チェックポイントをまとめてみました。

1.競売の流れ
① どんな物件が競売となるのか
競売をわかりやすく言えば、お金を支払わない人に対して、国が強制的に物を売却してその代金をもって、債務の弁済に充てる制度であると言えます。
競売には、大まかに言って3種類のものがあります。一つは、抵当権などの担保権が設定された物について担保権に基づいて行われる場合であり、競売事例のほとんどはこれです。もう一つは、判決などお金を支払えとの裁判に従わない人に対して行われる場合ですが、これは一般債権に基づく差押と言われます。担保権が設定されている場合、剰余がないと配当を受けることができないので(担保債権額を上回るほどの不動産価格がなければ、配当にはなりません。)、最近のように担保割れ物件がほとんどという状況の下では、競落ということまで行き着く事例は少なくなっています。もう一つは、共有物件の競売など、売主側が任意に合意して売却することができないような場合に行われる競売です。このような事例はほとんどみかけることはありません。従って、素人の方が競売を考える場合には、担保権に基づいての競売を念頭におけば足りることとなります。
このように、競売はお金を払わない人に対して行われるものですから、逆に言えば、順調にお金が支払われているような場合には、競売になることはありません。また、お金が払えなくなった人も、通常は、物を売却して返済に充てようとします。結局のところ、競売に至る事例は、担保権者との話ができないまま、任意に売却することもできずに、競売にまで行き着いてしまったという事例がほとんどということになります。事件物と言われるゆえんであり、ここに競売の難しさがあります。

② 競売に至る通常の流れ
競売・競落に至る事例のほとんどは、以下のような経緯をたどります。

  1. 支払の遅れ
  2. 金融機関からの督促
  3. 返済交渉
  4. 任意売却交渉
  5. 交渉の決裂
  6. 抵当権実行通知の発送
  7. 裁判所への競売申立
  8. 競売開始決定
  9. 裁判所による現況調査
  10. 評価額の決定
  11. 最低価格の決定
  12. 入札期日の決定と公示
  13. 入札
  14. 開札
  15. 競落許可決定

このうち、1から7までの間には、相当な期間が費やされるのが普通です。また、8に至った後にも、任意売却交渉は続けられます。開札直前に任意売却が成立することもあります。従って、15まで至る事例は、例外的な事例であるということがわかります。

③ 問題事例
競売は、債務者の意思に反して物を取り上げるという性質を有しているために、債務者側が抵抗することがよくあります。このため、占有屋などの第三者の介入とか、場合によっては、自殺や放火など不動産の棄損行為などもありますし、競落しても、任意に退去しないで、最終的に強制執行をせねばならなくなる事例も少なくありません。逆に、債権者へのいやがらせや他人名義での競落をねらって建物の価値を下げようとして、内容虚偽の賃貸借契約書を作成するということもあります。競売への参加のポイントは、これらのリスクを正しく認識しておくことに尽きるということになります。

2.競売物件チェックのポイント
① 情報の入手
まずは、どのような物件があるのか、情報を入手する作業から始めることになります。
最近では、インターネットで情報が開示されています。
公式なサイトは、BIT(http://bit.sikkou.jp/)ですが、一部の裁判所にしか導入できていません。京都は対象外となっています。この他にも、私的なサイトがあります。例えば、at home web(http://www.athome.co.jp/)などです。
これらの情報から、興味のある物件を探すことがまず第一歩ということになります。

3.落とし穴
① 情報不足
競売は、任意売却の場合と異なり、基本的には、物件を内覧できないために、詳細が確認できないことが最大のネックです(⇔任意売却の場合は、業者が所有者と詳細について確認し、重要事項として説明が行われる。)。この点については、新しい制度ができているので、活用するべきでしょうが、実際どこまでできるのかは、まだまだ未知数です。また、内覧ができたとしても、所有者は、競売に非協力的であるということに注意を要します。
時期的にみても、他者よりも早期に情報が入手できないという点も、競売参加者の不利な点です。任意売却交渉等が行われている場合には、任意売却交渉に関わった人々よりも、情報入手の点で遅れているということは自覚しておく必要があります。要するに、なぜ競売に至ったのかを推理しておくべきだということです。また、幸運にも、一般公示前に競売情報を入手できたような場合には、登記簿謄本ぐらいは入手してチェックすることも必要でしょう。

② 裁判所評価の限界
裁判所の評価は、不動産鑑定を前提としたものですが、これは、机上の計算という側面があることは否めません。競売に参加しようとする物件については、自分の目で確かめ、正常な取引事例との比較対照がどうしても必要です。

③ 妨害の可能性
第三者が介入しているような物件は、手をつけない方が安心です。特に、テナント物件は、慎重にも慎重な対応が必要となります。家主たる債務者と店子である賃借人が通謀してることすらあり得ます。

④ 問題事例

  • 別会社が賃借しているとして、債務者側が執行停止をとってきた事例
  • 内容虚偽の賃貸借契約書を作成し裁判所に提出し、法外な敷金を要求してきた事例
  • 債務者の自殺
  • 膨大な残置物
  • 車庫を第三者名義で建物として登記

⑤ 瑕疵担保責任
通常の売買であれば、建物にシロアリがいたとか、土壌が汚染されていたとか、見た目ではわからない欠陥があった場合には、瑕疵担保責任として、売主に責任追及することが可能ですが、競売は、この点が期待できません。裁判所による現況調査に問題があった場合には、国家賠償請求が認められる場合もありますが、事例としては例外的な場合に限られています。この点でも、競売物件はリスクの大きな物件であるということが言えます。

⑥ 転ばぬ先のつえ
弁護士などの専門家(競売のことはあまり知らないという弁護士の方が多いので、競売にある程度の知識を有している弁護士が望ましい)、不動産仲介業者などに相談しながら、参加した方が無難です。また、情報を入手しようとした場合には逆に自分の情報が流れることもあるということには注意された方がよろしいでしょう。この観点からは、第三者に依頼して調査するという処理も一考に値します。

⑦ 任意売却
どうしても入手したいという物件については、任意売却による買取を試みるという方法もあります。これは、買受人が現れるまでに取下をする必要があります。つまり、開札期日までに関係者の間で話をまとめて決済を行い、なおかつ、競売を取り下げてもらう必要があります。

⑧ 私見
全くの個人的な見解ですが、競売物件は、余剰資産としてなら競売だけをねらってということでもいいかも知れませんが、自宅など一生に関わる買い物ということであれば、物件供給先の一つとしてみるぐらいの余裕をもって臨まれた方がよろしいかと思います。

著 白浜徹朗

2017/12/26

架空請求Q&A

:携帯電話に身に覚えのない料金を請求するメールが届いたのですが、どうしたらいいでしょうか。
:最近、話題となっている架空請求だと思います。怖いことはありませんから、無視してください。

:気をつけた方がいいことはありませんか。
:相手の言うとおりに返答をすると、丸め込まれたり、脅されたりして、払う必要のないお金を支払うことになることがありますから、無視することが一番です。特に危険なことは、生年月日や住所、電話番号、メールのアドレスなどを回答してしまうことです。携帯電話への架空請求は、ほとんどがあてずっぽうな請求ですが、このようなメールに不用意に回答してしまうと、悪質業者にあなたの情報が流れてしまうことになるので、注意が必要です。また、アンケートなどを仮装して、あなたから情報を引き出そうとする業者もいますから、携帯メールによるアンケートには特に注意が必要です。これは、携帯のメールだけでなく、パソコンのメールなども同様です。

:文書で架空請求が来た場合などは、どうですか。
:文書での架空請求が届いたということは、悪質な業者にあなたの住所氏名の情報が流れているということになりますから、今後も、同じような請求が届くかも知れません。一切無視することです。回答して、生年月日や電話番号などを教えることは、絶対にさけてください。

:裁判所や弁護士事務所から書類が来たような場合はどうですか。
:裁判所や弁護士事務所の名前をかたる架空請求もでてきていますから、注意が必要です。身に覚えのない請求が裁判所や弁護士事務所から届いたら、まず、電話帳などで、電話番号を確認して書類に書かれている電話番号と同じかどうか、確認してください。携帯電話の番号が記載されているものとか、該当する弁護士事務所がないというような場合には、間違いなく架空請求です。ただ、本当に裁判所に訴訟を提起するという事例もでてきているようですから、裁判所からの正式な書面ではないかと思った場合には、必ず、裁判所に問い合わせてください。後は、裁判所などの指示に従ってください。

:間違えて、住所とかを教えてしまった場合は、どうしたらいいですか。
:しつこく請求がくるようでしたら、弁護士に相談した方がいいでしょう。また、小額だから面倒だからということで支払ってしまうと、請求したら支払ってくれる人だという情報が悪質業者に流れることとなりますから、絶対に請求に応じてはいけません。

著 白浜徹朗