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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2010/07/03

大阪弁護士会主催の就職説明会を見学して

7月3日午後1時より大阪弁護士会館にて、新63期と現行64期修習生向の就職説明会が開かれました。修習委員として、現状を正確に把握しておく必要があると考えて、部外者ですが、無理にお願いして、見学させていただきました。
 新63期を採用する予定のある事務所が9つ参加されていましたが(そのうち一つは、企業によるインハウスローヤーの募集でした。)、集まった新63期修習生は80名程でした。なお、現行64期だけを募集しているところもありましたが、参加者は少なかったようです。全国でも100名ぐらいしかいないわけですから、現行64期の就職戦線は、新63期よりは、かなりいい状況にあるようです。
 新63期は、上記のとおり、極めて厳しい状況ですが、我々のような地方都市の弁護士からすれば、今の就職難の中、これだけの数を集めることができるということについては、さすがは大阪弁護士会という印象を受けました。このように就職情報を提供する場を作ることは、地道なことですが、修習生の窮状を考えれば、人道的で大事な活動だと思います。
 ただ、実務修習第4クールの中盤という状況で(つまり、もうすぐ実務修習は終わり、来月には司法研修所での研修が始まるのです。)、京都同様、大阪の新63期の修習生も半数弱しか就職先が決まっていないということのようでしたから、残念ながら、新63期では、弁護士事務所に就職できなくなる人がかなりの数になることは必至だと思います。
 京都でも、就職問題WTを設置して、修習生の就職問題に取り組んでいますが、弁護士会としてできることは極めて限られているというのが現実です。ただ、やれるだけのことはやらねばなりませんので、本日の就職説明会のことも情報提供して、WTの活動の参考にしてもらおうと思います。
 追伸:先日、新64期修習予定の方と話をする機会がありましたが、厳しい状況を説明せねばなりませんでした。ただ、現実を知ってもらうことは、大事なことだと思います。少なくともロースクールに進学するかどうかを考えるにあたっては、現在の就職難の現状は知っておいた方がいいと思います。その意味では、既に2年間を勉強に費やしているロースクール卒業生の方に、上記のような話をするのは、心情的につらいところがありました。

2010/07/01

中国の弁護士過疎事情など

青島で、現地の弁護士とお話しする機会があったので、中国の弁護士事情について、色々と聞かせていただきました。通訳を介しての話なので、不正確なところがあるかも知れませんが、日本と比較するとおもしろいことが多かったので、紹介させていただきます。
 まず、中国も弁護士が増えていて、事務所も大型化する傾向にあるようです。ただ、大きな事務所でも、新人をとるというよりは、経験を積んだ弁護士を中途採用して拡大してゆく傾向があるということでした。
 弁護士は、大量に増やされているようですが、まだまだ不足しているらしく、北京や上海、青島などの沿岸部、すなわち、経済が発展している地域に集中していて、内陸部ではあまり増えていないそうです。弁護士が1人もいないような弁護士過疎地域もあるそうです。さすがに問題となっているらしく、政府が、資金援助をして、内陸部などに弁護士を誘導しようとしているらしいのですが、成果はでていないそうです。
 中国と比較すると、日本は、政府の援助は、法テラス事務所の設置程度ぐらいしかありませんから、弁護士過疎問題への取組が大きく違っています。日本では、政府に頼ることなく、弁護士が自らひまわり基金を拠出して過疎地への弁護士誘導をほぼ成功させているわけですから、日本の弁護士会がやっていることは、評価されてしかるべきではないかとの思いを強くしました。
 ただ、何よりも、中国では、弁護士全体への需要が大きく伸びていますから、需要がほとんど増えていない日本とは全然違います。中国でも弁護士を増やそうとしているようですが、日本のように弁護士がワーキングプアに陥ることがあるというようなことはなく、需要を考えることなく爆発的に増やしているようなことはないように思います。お話ししている中でも、中国の弁護士(律師と言います。)には、どんどん仕事を拡張してゆこうという活気を感じました。日本と中国の法曹人口に関する政策の違いを痛感したような次第です。

2010/06/30

青島へ仕事にゆく

某会社の監査役として、青島に工場部門の監査にでかけることとなった。日曜日を使っての出発だった関係で、直行便ではなく仁川空港を経由してのフライトである。外国で1人で乗継をしたのは初めての経験だった。さすがに、仁川から青島への便には、日本人も少なく、日本語の説明もなかったので多少不安になった。
 青島は山東半島の東に位置している港町である。山東半島は、周が殷を滅ぼしたときに、功績のあった太公望が封じられた斉の国があったところである。色々と見物できるところもあるのかも知れないが、今回も、工場の視察や関係者との面談などのための2泊3日の強行軍だったため、ホテルからの風景と空港の行き帰りの車中からの眺めを見物しただけである。
 山東半島は、北京にも近く、青島のような良港もあるので、開発が進んでいて、高速道路も整備されている。道路からみる景色は、看板が漢字で書かれていることを除けば、アメリカの西海岸と変わらないような雰囲気になっていた。また、至る所に高層マンションが建築されていて、今も大きく発展しつつあるように感じた。
 監査役の仕事は、昔は名目上のものだったりした時代もあったのかも知れないが、今では毎月の取締役会への出席状況が株主総会で報告されたりするし、社会全体としてもコンプライアンスが重視されていることもあるので、日々重要性が増している。それでも、なかなか海外施設の監査までするのは難しいところがあるが、遠いところほど監査の必要は増すと考えて、なるべく意識して監査にでかけるように心がけている。これで海外往査は、4回目となった。
 私は、毎月の取締役会の出席なども含めて、企業経営の現場に触れることができるという意味では、社外監査役の仕事は弁護士にとっても重要な業務の一つであると感じている。なお、監査の内容はブログに書くべきことではないので省略するが、今回の往査も非常に有意義なものであり、監査役としても安心できるものであったということだけは、書きとどめておくこととする。

2010/06/20

宇都宮会長と高木元連合会長との論争について思うこと

毎日新聞が、弁護士の就職難をめぐって、前連合会長・高木剛氏と宇都宮日弁連会長との論争を取り上げている。
http://mainichi.jp/select/opinion/souron/news/20100620org00m070003000c.html
宇都宮会長は、実際に就職難が生じていることを訴えつつ、他方で、裁判官や検察官は増えていない状況を指摘しているのに対して、高木氏は、就職難の状況を全く知ろうともせずに、「経済活動のテンポの速さに対応するには、司法の容量が小さすぎ、訴訟に時間がかかりすぎた。具体性を持った改革を進めていくため、合格者の目標人数を決めた。」と、弁護士人口爆発政策が、抽象的な議論の下に策定されたことを言うだけになってしまっている。失業保険の受給資格もない何百人もの失業者が出現するかも知れない現状に対して、労働組合出身者が発する言葉とは私には思えない。
さらに、高木氏は、「資格を取った人が高いレベルで所得を得るのに越したことはない。だが、どんな職業の人でも、自分たちの領域や需要の拡大に努力している。今の就職難や借金の話は、苦労して法曹資格を取ったのだから、せめて食いぶち保障をしろ、というようにも聞こえてしまう。」と言う。しかし、そもそも宇都宮会長は、実際に修習生の就職先がない現状にある、つまり、資格を持った失業者が沢山出現する可能性があるということを訴えているのであって、高い給与を保障せよというような話はしていない。また、実際に私がみている限り、修習生は、就職活動に懸命に努力している。修習専念義務のある修習生は営業活動などもできないのだから、修習生に就職先確保に努力せよと言うのは筋違いであるし、かわいそうでもある。高木氏は、弁護士会が就職先を確保せよというのかも知れないが、実際に、弁護士会としてはかなり無理をして就職先を探して、修習生に情報提供をしてきたが、もはや限界に達したというのが実情である。そのことは、この数年のうちに修習を終えた人たちに聞けばよくわかることである。ひょっとして、高木氏は、司法修習は研修所だけがやっていると誤解されているのではないか、また、司法修習のほとんどは、実務修習が担っていて、各指導担当弁護士が無給で修習生の実務指導をしていて、就職先の面倒などの相談にも乗ってきているという実情をご存じないのではないか。
立会人(伊藤正志論説委員なのか伊藤一郎氏なのかは不明だが)は、「弁護士全体の収入は一般の目から見ても高い。パイを奪われないよう、先輩弁護士が若手の参入を阻んでいる印象も受けるが」というが、この論理でいえば、今事務所を経営している弁護士は、自分の事務所の経営は無視してでも若い人を雇えということになろうが、なぜ、弁護士だけがそのようなことを言われねばならないのか理解しがたいところがある。弁護士は、一人で仕事をしているわけではなく、事務員も抱えている経営者でもあるのである。今の経営状態に合わせて、新人を雇い入れるかどうかを決めるのは当然のことであって、経営を無視して雇い入れろなどと言われる立場にはない。若者の就職難があるから、黒字を赤字にしてでも若者を雇い入れろなどとは企業ですら言われていないはずである。なぜ、弁護士だけは赤字になっても人を雇い入れろと言わんばかりの非難を受けなければならないのだろうか。ただ、実際には、自分の事務所の経営は人を雇うほどではないけれども、若い人がかわいそうだから何とか雇ってあげようかということで無理して雇い入れている弁護士事務所がかなりの数になっているのである。決して努力していないわけではないのである。また、そもそも、マスコミも修習生を爆発的に増やして社会の隅々にまで進出させたらいいと提案し賛同していたはずである。そうであれば、新聞社も弁護士を大量に雇えばいいのである。自分のことは棚に上げて、他人事のような話をされても困る。また、弁護士が若手の参入を阻んでいる事実などない。むしろ、即独支援とか、ノキ弁の紹介など、劣悪な労働環境での就労についても問題にすることすらできず、むしろこれを奨励しているのが実情である。立会人は、取材をされた上で話をされているのか大いに疑問である。そろそろ、弁護士の就職難という問題が、社会需要をろくに調査もせずに、しかも、途中の増加に伴う労働環境の変化も検証することもないままに、合格者の爆発的増加を続けたことに原因があるということに気づいてほしいと思う。
最後に、伊藤正志氏は、「『社会正義の実現』など法律上も特別の使命が要求される弁護士に、競争至上主義がそぐわないのは分かる。ただ、今でも頭打ち状態の合格者数をさらに減らすのはどうだろうか。活動領域を広げるため、弁護士も頭を切り替える必要があると思う。」と締めくくっているが、問題は、今年12月に大量の失業者が発生するという事態にどう対応するかということであることをまるで理解できていないように思う。これまで、即独やノキ弁で何とか取り繕ってきた隠れ法曹失業者が、公然と何百人と出現したときに、どう対処するのかということが社会的に求められているのであって、机上で非現実的な理想論を話している場合ではないのである。繰り返すが、修習生は1年間修習に専念してきているが、職がみつからなければ、失業保険すらもらえない立場にあるのである。生活に直結する問題なのである。また、そもそも弁護士が頭を切り換えたぐらいのことで、今年の12月に大量の雇用を確保できるというような魔法があるのなら、教えていただきたいものである。弁護士は、実際に事件を抱えてその処理に追われつつ、仕事をし、その中で経営改善に努力している弱小企業がほとんどである。マスコミのような大企業ではないので、広告宣伝にも資金を割く余裕はないし、自ら営業をする余裕もほとんどないのである。また、そのような努力をしたところで、即効性はないというのは社会常識のように思える。
最後に一言。法曹人口論について議論するにあたっては、実際に懸命に努力している若者の人生に関わる問題であるということを踏まえて発言していただきたい。修習生やロースクール生は社会実験の実験体ではないのである。少なくとも、マスコミ人であれば、実際に修習生の声を聞く取材をしてから議論していただきたいと思う。