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弁護士法人 白浜法律事務所

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白浜の思いつき
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2021/09/16

司法試験の受験者や合格者の推移と弁護士人口増加率の推移

弁護士白書に示された弁護士総数の推移と司法試験の受験者や合格者を整理してみました。添付のPDFファイルをご覧ください。弁護士白書の最新版は2020年版ということで、2021年3月末当時の弁護士人口が、私には確認できませんからで、入っていません。合格者500人時代との比較をするため、1989年からの整理としています。なお、PDFファイルには1988年3月末の弁護士人口が入っていませんが、弁護士白書では13,288人となっています。

司法試験の受験者が最も多かったのは、2003年で50,166人で、この年の合格者が1,170人なので、合格率は2.3%となっています。法科大学院関係者からは、合格率が低いことが、法科大学院志願者が減っている原因かのような説明をされることがありますが、合格率は志願者と合格者の数から導き出される数字なので、法科大学院関係者の説明には論理のすり替えがあります。合格者が増えずに志願者が増えれば合格率は低くなりますが、合格者が増えなくても志願者が減れば合格率は高くなり、志願者があまり変動がない中で合格者を増やせば合格率は高くなります。合格者が499人しかなかった1990年は受験者が22,900人だったので合格率は2.1%と極めて低くなっています。合格率が低くても、受験者が増えている年の方が多いぐらいですし、予備試験の受験者は合格率が低くても増えていますので、合格率が低いのは、受験者が減る理由にはなりません。簡単に言うと、受験者が変わらないか増えているときに合格率が低いというのは、合格者を増やせということを言っているだけのことになります。今は、受験者が減っているため、合格率が高くなっていることから、法科大学院側からは合格率のことを問題にするような話は聞こえてきません。

2003年からは受験者が減っているのは、法科大学院に入学する人が増えたためと思われます。このことを考慮すると、司法試験の人気が最も高まったのは、2004年から2005年頃と思われます。

合格者が600名程度とされた1991年でも合格率は2%台でしたが、700名程度とされた1993年には合格率が3%を上回ります。それでも1996年には合格率は3%を下回ることとなり、合格者が1000名となった1999年でも3%には届きませんでした。合格率が3%を上回るのは、翌年から新司法試験が始まる2005年のことです。この年は旧試験の受験を諦めて、法科大学院に入学した人が多く存在し、在学中受験者はあまりいなかったことを指摘しておきます。

新司法試験が始まった2006年の新司法試験の合格率は47.4%と極めて高く、これが合格率としては最も高かった年となります。ちなみに、この年は既修者しか受験していないということで、合格者も1009人です。この年の旧試験は合格率が1.5%に下がっています。その後は、旧試験は合格者数が減ったため、合格率が1%に満たないことになります。新司法試験の合格率は、旧試験の最後の年である2010年でも19%という高い合格率でした。

新司法試験の受験者数は旧試験が終わってしまった翌年の2011年にピークを迎え、11,686人となりますが、その後は減少の一途をたどります。この年の合格者数は、2,063人です。新司法試験は、受験者数の減少が始まっても2013年までは合格者数を2000人程度にしていましたが、2014年には合格者を1,810人に減らし、以後は合格者数を漸減させていったため、2016年までは合格率は20%程度で推移していましたが、2017年より受験者の減少が顕著となって、合格率が23.2%となり、2019年には合格率が30.6%と30%を超えました。2021年の合格率は38.0%となり、新司法試験発足当時の合格率に近づきつつあります。

新司法試験の受験者の減少は、法科大学院の卒業生が減ったことが最大の要因ですが、予備試験受験者が増えたことで、新司法試験の受験者の減少は多少和らいだことになっているものと思われます。予備試験の合格者は翌年の新司法試験を受験できることになっていますから、予備試験の受験者を翌年の新司法試験の受験者数に加えた仮想的な合格率を考えてみると、旧試験の廃止の翌年である2011年は、予備試験合格者が新試験を受けていないため、仮想的な合格率は17.6%と高くなっていますが、 2012年から仮想合格率は10.4%となり、その後も、8%程度を保っていました。2021年は7.4%という高い倍率となっています。予備試験の受験者と法科大学院の学生が競争することによって、合格率を低く保っていたものが、予備試験の受験者の増加で仮想的な合格率がさらに低くなってきている、逆に言えば、司法試験の人気はもはや予備試験が支えていることになっているということなのかも知れません。

ちなみに、弁護士の増加率は合格者700人時代まで2%を下回っていました。最初に増加率が急増したのは、2001年の6.1%ですが(前年は2.3%)、これは、修習期間の短縮で2つの期の就職が1年のうちに行われたことが原因しているものと思われます。最大値は2008年の7.6%(前年は4.7%)ですが、これも修習期間の短縮が影響しているのではないかと思われます。しかし、以後は、増加率は、年々減少し、2020年には2.4%となり、合格者800人時代と同じような比率になってきています。これは、弁護士人口そのもの、つまり母数が増えたためと思われますが、増加率だけを取り上げれば、合格者が急増する前の水準に達するのはそう遠くないことのように思われます。2021年3月31日時点の弁護士総数は、既にわかっていることではありますが、弁護士白書には掲載されていません。ひょっとすると、2021年の弁護士の増員は1000人を切っている可能性もないとは言えないように思います。

司法試験受験者数と弁護士人口増加率の推移

2021/09/10

昨年は弁護士のまま亡くなる方が減った?

弁護士が自主的に廃業するという事例に関する整理をしているのは、私だけのようですが、昨年度は、例年に比較すると、廃業者の数が減っていました。

弁護士数の増減という点では、死亡により退会された方の数も調査せねばなりません。このため、死亡されたことにより弁護士会を退会された方の数を自由と正義という月刊誌の掲載から調べてみたところ、2017年は215人、2018人は214人、2019年は219人が死亡ということで退会されたと掲載されていました。2020年になると、172人ということで、大きく減っています。体調を悪くしたということで、弁護士の登録をやめた方が増えたということも考えられないではないのですが、請求退会者の数も、2020年には減っているので、どうもそのような理由で死亡退会者が減ったということではなさそうです。皆さんが、健康に留意した生活を送ったということが原因なのかも知れませんが、正確な理由はわかりません。

ただ、この死亡退会は、母数が増えることに比例して増えることが予想されます。弁護士の業界は、近年急増したこともあって、若年者の占める比率が増えているということがあって、全体の人口増に比例して死亡する人が増えているという現象はまだ生じてはいませんが、もうしばらくすれば、この傾向はでてくるものと思います。

請求して自主的にやめる人が約300人、死亡して退会する方が220人、合計で約500人以上は弁護士数は減るということですから、昔のように合格者500人の時代に戻ったりすると、弁護士人口は大きく減っていくという時代になってしまったということになります。私の試算では、合格者600人でも弁護士の人口は減ることになります。弁護士人口の将来予測にあたっては、廃業者や死亡者の数を考慮に入れる必要があると考える次第です。

2021/04/20

弁護士の自主廃業は大きく減ってきている

 2018年頃までは、請求退会者、つまり、自主的に弁護士を廃業する人が増えている傾向があったが、2019年から大きく減少に転じている。

 すなわち、自由と正義に掲載された請求退会者の数は、2018年をピークとして、以下のように毎年大きく減ってきている。
 2018年 382名
 2019年 339名
 2020年 250名

 このうち、登録番号2万未満の人の請求退会につき、2019年と2020年を比較すると、以下のとおり、若干増えてはいる。ただ、以下に示すように、この区分以外では、請求退会者は大きく減少している。なお、2018年までは、登録番号を1万と3万で区切っていたので、2018年のデータは2万と4万での区切りでは集計できていないため、示すことができない。以下は、同じ理由で、2018年のデータは示せない。
 2019年  55名
 2020年  64名

 登録番号2万から4万未満の人の請求退会は、以下のとおりであり、大きく減少している。
 2019年  84名
 2020年  54名

 登録番号4万以上の人の請求退会は、以下のとおりであり、その減少は顕著である。
 2019年 200名
 2020年 132名

 ちなみに、1月から4月までの集計を比較すると、以下のとおりとなる。なお、2020年は、コロナ禍における日弁連業務の縮小のため、自由と正義が5月と6月が発行されていないので、4月までの数値でしか比較はできない。4月までの2020年の請求退会者総数が99名だったものが、2021年は82名に留まっていることからすると、2021年は、年間200名程度(2020年の年間総数は250名)に留まる可能性も生じている。

 登録番号2万未満の人
 2019年  13名
 2020年  34名
 2021年  23名

 登録番号2万から4万未満の人
 2019年  29名
 2020年  21名
 2021年  21名

 登録番号4万以上の人
 2019年  55名
 2020年  44名
 2021年  38名

 登録番号4万以上の人は、母数が毎年増えているので、ここで減少傾向があることは、大きく減少しているということを示していることになる。全体としての母数も増えているので、全体としての請求退会者が減少しているのであれば、減少傾向があることは間違いないということになる。登録番号4万以上の人は若い人が多いことは間違いないので、就職難という時代が過ぎ去ろうとしていることを示すデータということになるように思われる。

2021/04/19

日弁連副会長退任のご報告

本年3月末をもちまして、日弁連の副会長の任期を終えて、事務所の職務に復帰しております。副会長在職中は、様々な人からご支援、ご助力をいただきました。大変ありがたく思っております。

この1年は、コロナ感染症対策に追われました。先例などもない中、各地から情報を集め、逆に情報として他の地域に提供するなどして、裁判業務が何とか動くように、手分けして動きましたし、国会議員の方々とも意見交換するなどして、国民の皆様の権利擁護のために尽力したつもりです。その他にも、様々な法律問題や人権問題がでてきたこともあって、日弁連の意見が世間に取り上げられたことも多かったように思います。そんなことで、仕事に追われ、あっという間に1年経ってしまったという感じです。

民事訴訟のIT化も大変な作業でしたが、意見の取りまとめやそれに先立つ弁護士業界への情報提供など、やれるだけのことはやれたのではと思っております。

1年間、副会長という立場で過ごしますと、それまでみえていなかったこともわかることもあり、大変勉強になりました。今後は、このような経験を活かして、弁護士業界のためにさらに微力を尽くして参りたいと考えております。

なお、しばらくは、日弁連のお仕事を手伝う機会も増えるようですが、今後は、本来業務にも全力を尽くす所存ですので、これまでと変わりなく、ご指導ご助力を賜りますよう、お願い申し上げます。